【BARKS編集部レビュー】何じゃこの細さ!estronのイヤホンケーブルが素敵すぎる件
estron(エストロン)製の極細ケーブルを初めて見たのは、2013年の春、イベントに出店されていたカナルワークスのブース上だった。ステルスケーブルと名付けられたそれは、まるで釣り糸のような細さで、見た目だけで強烈なインパクトを放っていた。手に持つととにかくしなやかで軽く、存在感がほとんどない。にもかかわらず、アラミド繊維を芯材に7本撚り線×6束:計42本の撚り線構造により高い強度を有しており、手で引っ張った程度ではびくともしない。その上で素線には銀コート処理が施され高いサウンド分解能を持つという、出来すぎのスペックを誇る。私は、遂にケーブル界のファイナルアンサーが登場したと思った。
◆estronケーブル画像
今回estronブランドから発売されたのを機に、「linum 2pin Music S000055」と「linum 2pin BaX S000057」という2モデルを手に入れた。どちらもカスタムIEMの汎用コネクタとして広く使用されている2ピンプラグタイプの交換用ケーブルだ。
最もestronらしさにあふれる標準モデルと言えそうなのが「Music」で、127cmのストレートケーブルながら重さがなんと2.8gしかない。一方の「BaX」はLRの2本ケーブルがそのまま撚り線となってプラグまでつながっている。太さは「Music」の2倍になるわけだが、それでも煩わしさはほとんどなく重さも3.4gと驚きの軽さをキープする。
サウンド自体も無色透明で、これといったクセを感じない素晴らしい使い心地だ。私自身はリケーブル行為に興味はあるものの、音色への注目と共に、ケーブルのタッチノイズや取り回しやすさといった総合的な使いやすさで愛用ケーブルを決めることにしている。ケーブルを交換する最終的な目的が「音楽をより楽しむこと」にあるためだ。私はケーブルのタッチノイズが大嫌いだし、重さで耳ごと引っ張られるような装着感も不快なので、普通のイヤホンでもできるだけSHURE掛けをしたりする。音楽鑑賞を妨げるような煩わしさを少しでも解消したいので、究極の理想はワイヤレスになるのだけれど、現時点では音質を考えればケーブル使用は避けられないわけで、トーンと使用感とお財布の中身の具合で真剣な相談が繰り広げられるのが常だ。
そういう嗜好にある私としては、使い勝手のポイントがぶち抜けて高く、音色も通常のデフォルト・ケーブルと全く遜色のない自然さが確保されているとなれば、estronを使用しない理由がない。個人的な感覚で言えば、世界中の全てのカスタムIEMのデフォルトケーブルは、いっそ「Music」に統一して欲しいと思うくらいだ。
なお、「Music」に対し「BaX」はボトムに太さが加わり、中低域の充実をもって重心がクッと低くなる。このあたりは、<ヘッドホン祭>にて用意されていたケーブルの聴き比べ専用デモ機で確認した部分なので、間違いのないところなのだけど、その差異は非常に微細なものだ。実際「Music」と「BaX」を手にし、自宅環境で何度も聴き比べを行ってはみたものの、いそいそとケーブルを交換している間に直前の音を見失ってしまい、聴き比べたところでその違いは掴み取れない。私にとってはその間にやってくるノイズの方がよほど大きく、それらにかき消されてしまうからだ。
聴き比べ専用デモ機のように一瞬でケーブルが交換できれば単純比較は容易だが、一度耳から外しケーブルを付け替えるような作業と時間を挟んだ時点で、触覚や視覚情報が聴覚にどう影響を与えてしまうものか、素人の自分には測りようもない。目を開けているか閉じているかで聴覚の脳の働きが変わってしまう現実を考えると、ケーブルの物理的差異よりも音色知覚に対してもっと大きな影響を与えてしまう心理的影響を排除してケーブル交換による聴き比べを行うのは、事実上困難だ。「Music」と「BaX」の特徴を元にその違いを声高に語るのは容易だし、そのほうがイケてる原稿になることは分かっているけれど、心理的バイアスを排除して語ることはどう考えても不可能なので、ここでは両者には(知覚上浮き彫りになるほどの)違いは無いに等しいというのが正直な感想だ。そしてそれが多くの使用者の現実的な認識に近いのではないか。このあたりに、聴覚が物理現象を正確に捉える機能ではなく、五感との相互影響をもった脳による知覚行為であることの難しさを痛感するところ…。
私はカスタムIEMの普段使いに「Music」や「BaX」を使おうと思っているが、同時にMMCXプラグタイプも発売されているので、カスタムIEMに限らず多くのイヤホンでestronケーブルの魅力を確かめることができるだろう。ケーブルの存在感が薄まることがこれ程に使用感を向上させてくれるなんて、実際手にしてみないとピンとこないかもしれない。是非とも一度手にしてみていただきたい。一本11,000円となかなかのお値段だけど、超高級ケーブルからするとむしろ安価な部類でもある。
必要にして十分なサウンドクオリティで使い勝手を最高レベルまで向上してくれるestron、こういう独自性をもった志の高いアイテム、リスペクトっす!
text by BARKS編集長 烏丸哲也
◆estronオフィシャルサイト(海外)
◆フジヤエービック オンラインショップestronページ
◆BARKSヘッドホン・チャンネル
◆BARKS カスタムIEM専門チャンネル
BARKS編集長 烏丸レビュー(■イヤホン ●ヘッドホン ◆カスタムIEM ◇他)
●OSTRY KC06(2014-05-18)
◆VISION EARS VE6 Xcontrol(2014-05-25)
■Fidue A81(2014-05-17)
◆カナルワークスCW-L32(2014-05-04)
■アルティメットイヤーズUE900s(2014-04-26)
■Astrotec AX60&AX35(2014-04-20)
◆CUSTOM ART Pro 330v2(2014-04-13)
●MPC Headphones(2014-04-06)
●Klipsch STATUS(2014-03-30)
●SMS Audio STREET by 50 DJ Pro Performance Headphones(2014-03-23)
◆AK240×カスタムIEM(2014-03-16)
■RHA MA750(2014-03-09)
■Meze 11 Deco(2014-03-02)
◇Astell&Kern AK240(2014-02-22)
◆1964 EARS V6-Stage(2014-02-17)
◆カナルワークスCW-L32V(2014-02-09)
◇EarPeace HD(2014-02-02)
◆Noble Audio Kaiser 10(2014-01-19)
◆Clear Tune Monitors CT-300Pro(2014-01-04)
◇KLIPSCH KMC1(2014-01-01)
■DUNU DN-1000(2013-12-30)
◆Ultimate Ears Reference Monitors(2013-12-16)
◆Ultimate Ears 11 Pro(2013-12-08)
◆earmo Tune5(2013-12-03)
●オーディオテクニカATH-OX7AMP(2013-11-23)
■音茶楽Donguri-欅(KEYAKI)(2013-11-17)
■オーディオテクニカ ATH-IM01~04(2013-10-27)
◇Astell&Kern AK10(2013-10-25)
●フィリップス Fidelio M1(2013-10-22)
◆earmo Tune4(2013-10-12)
◆Ultimate Ears Personal Reference Monitors(2013-10-05)
◆Sensaphonics 2XS(2013-09-30)
■Earsonics SM64(2013-09-23)
◆LIVEZONER41 LZ12(2013-09-15)
◆Ultimate Ears カスタムIEM全7機種(2013-09-08)
◆null audio Elpis(2013-09-03)
■FitEar Parterre(2013-08-25)
◆カナルワークスCW-L12(2013-08-17)
◆Livezoner41 LZ 4(2013-08-06)
■SHURE SE846(2013-08-02)
■オーリソニックスASG-2 with BassPort(2013-07-28)
■Hippo ProOne(2013-07-21)
◆カナルワークス CW-L51a(2013-07-13)
■EXS X10(2013-06-24)
■音茶楽Flat4シリーズ粋、楓、玄(2013-06-17)
◆LEAR LCM-1F(2013-06-10)
◇Ultimate Ears UEブーム(2013-05-28)
◇Stage93 93PC(2013-05-20)
●Meze Headphones(2013-05-08)
●Fischer Audio Jubilate(2013-04-29)
◇ORB JADE casa(2013-04-21)
◆lime ears LE3(2013-04-14)
◇雑誌「DigiFi 第10号」付録(2013-04-06)
●Ultimate Ears UE 9000、UE 6000、UE 4000(2013-04-01)
■開放型インナーイヤーイヤホンおススメ5モデル(2013-03-19)
◆LEAR LCM-5(2013-03-16)
●フィリップスFidelio L1(2013-02-25)
○スマホが与えた音楽リスニングのモラル変革(2013-02-17)
■Klipsch Image X7i(2013-02-04)
◆LEAR(2013-01-27)
◆カナルワークスCW-L05QD(2013-01-13)
◆earmo(2013-01-02)
◆Westone AC2(2012-12-25)
◇Stage93 93SPEC(2012-12-16)
●California Headphone Silverado、Laredo(2012-12-09)
■音茶楽Flat4-楓(2012-12-03)
◆Stage93 Stage 6(2012-11-26)
●GRADO SR60i(2012-11-19)
◇Astell&Kern AK100-32GB-BLK(2012-11-15)
●オーディオテクニカ ATH-WS99(2012-11-10)
■アトミック フロイドPowerJax+Remote(2012-10-29)
◇VORZUGE VorzAMPduo(2012-10-26)
●ファイナルオーディオデザイン heaven VI(2012-10-16)
●beyerdynamic T 90(2012-10-08)
●GRADO GS1000i(2012-09-30)
●SENNHEISER HD 700(2012-09-16)
◆ACS T1 Live!(2012-09-11)
●オーディオテクニカ ATH-AD2000 ATH-AD1000(2012-09-03)
●GRADO RS1i、SR325is、PS500(2012-08-20)
◆FitEar MH335DW(2012-08-15)
●DIESEL VEKTR(2012-08-07)
◆カナルワークスCW-L51 PSTS(2012-07-30)
●Fischer Audio FA-002W(2012-07-25)
●Pioneer SE-MJ591(2012-07-16)
■GRADO iGi(2012-07-12)
●HiFiMAN HM-400(2012-06-26)
●Klipsch Reference One(2012-06-17)
●GRADO PS1000(2012-06-09)
●ULTRASONE edition 8(2012-06-02)
●PHONON SMB-02(2012-05-28)
■音茶楽Flat4-粋(SUI)(2012-05-20)
●<春のヘッドフォン祭2012>、Fischer Audio FA-004(2012-05-13)
◇Hippo Cricri、Go Vibe Martini+、VestAmp+(2012-05-04)
■ファイナルオーディオデザインheaven IV(2012-04-28)
■フィッシャー・オーディオ Jazz (2012-04-22)
●SHURE SRH1840 & SRH1440(2012-04-16)
■FitEar TO GO! 334(2012-04-08)
◆Unique Melody Mage(2012-03-26)
●Takstar PRO 80、HI 2050、TS-671(2012-03-20)
●klipsch Mode M40(2012-03-15)
■Fischer Audio DBA-02 Mk2(2012-03-07)
◆AURISONICS AS-1b(2012-02-27)
■UBIQUO UBQ-ES503、UBQ-ES505、UBQ-ES703(2012-02-21)
◆Heir Audio Heir 3.A(2012-02-15)
■moshi audio Clarus(2012-02-12)
◆Thousand Sound TS842(2012-02-08)
◆Heir Audio Heir 8.A(2012-02-01)
■CRESYN(2012-01-17)
◆Unique Melody Merlin(2012-01-08)
◆カナルワークスCW-L01P(2012-01-03)
■ファイナルオーディオデザイン Adagio(2011-12-31)
◆LEAR LCM-2B(2011-12-26)
●SOUL by Ludacris SL100、150、300(2011-12-23)
●AKG K550(2011-12-20)
■SENNHEISER IE80 & IE60(2011-12-16)
■DUNU(2011-12-14)
◆カナルワークスCW-L10(2011-12-12)
■オーディオテクニカ ATH-CK90PROMK2(2011-12-09)
◆Ultimate Ears UE 5 Pro(2011-12-06)
■REALM IEM856(2011-12-02)
■ファイナルオーディオデザインAdagio III(2011-11-26)
◇Ultimate Ears用交換ケーブルFiiO RC-UE1&オヤイデ電気HPC-UE(2011-11-25)
●Reloop RHP-20(2011-11-22)
■オーディオテクニカ ATH-CK100PRO(2011-11-14)
■SOUL by Ludacris SL99(2011-11-04)
■Fischer Audio Ceramique(2011-10-25)
■SHURE SE535 Special Edition(2011-10-21)
■JVCケンウッドHA-FX40(2011-10-16)
■BauXar EarPhone M(2011-10-10)
■SONOCORE COA-803(2011-10-02)
◆TripleFi 10 ROOTHリモールド(2011-09-25)
■AKG K3003(2011-09-18)
■Atomic Floyd SuperDarts+Remote(2011-09-11)
■Bowers & Wilkins C5(2011-09-06)
■Westone3(2011-09-02)
◆カナルワークスCW-L31(2011-08-26)
◇ORB JADE to go(2011-08-22)
■YAMAHA EPH-100(2011-08-14)
■NW-STUDIO(2011-08-09)
■NW-STUDIO PRO(2011-08-02)
◆FitEar MH334(2011-07-29)
◆ROOTH SE530×8(2011-07-26)
■Westone ES5(2011-07-21)
●SHURE SRH940(2011-07-17)
◆Ultimate Ears 18 Pro(2011-07-15)
■クリエイティブAurvana In-Ear3(2011-07-06)
◆カナルワークス CW-L01(2011-07-01)
■GRADO GR10&GR8(2011-06-25)
◇SAEC(サエク)SHURE SE用ケーブル(2011-06-21)
■フィアトンPS 20&PS 210(2011-06-17)
■ZERO AUDIO ZH-BX500&ZH-BX300(2011-06-11)
■フィリップスSHE8000&SHE9000(2011-06-03)
■アトミック フロイド(2011-05-26)
■モンスター・マイルス・デイビス・トリビュート(2011-05-20)
■SHURE SE215(2011-05-13)
■ファイナルオーディオデザインPiano Forte IX(2011-05-06)
■ラディウス・ドブルベ/ドブルベ・ヌメロドゥ(2011-05-01)
■ローランドRH-PM5(2011-04-23)
■フィリップスSHE9900(2011-04-15)
■JAYS q-JAYS(2011-04-08)
◇フォステクスHP-P1(2011-03-29)
■Klipsch Image X10/X5(2011-03-23)
■ファイナルオーディオデザインheaven(2011-03-11)
■Ultimate Ears TripleFi 10(2011-03-04)
■Westone4(2011-02-24)
■Etymotic Research ER-4S(2011-02-17)
■KOTORI 101(2011-02-04)
■ゼンハイザーIE8(2011-01-31)
■ソニーMDR-EX1000(2011-01-17)
■SHURE SE535(2011-01-13)
■ビクターHA-FXC51(2011-01-12)