【BARKS編集部レビュー】ローランド、自宅練習に最適な2.1chスピーカー搭載ギターアンプ「CUBE Lite」はiPhoneアプリでお気に入りの曲とセッション&録音が可能

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ローランドのギターアンプ「CUBEシリーズ」には、ライヴにも対応するパワフルな大型モデルから、乾電池駆動も可能なコンパクトなモデルまで様々なタイプがラインナップされている。多彩な音作りができるモデルや練習や録音に便利な機能が備えられたモデルなどがあるが、今回登場したCUBEシリーズの新製品「CUBE Lite」は、自宅練習に最適な小型モデル。乾電池駆動こそできないが、出力10Wの本体は片手で持ち運べるほど軽量でコンパクト、置き場所を選ばない。そしてCOSM(アンプの物理的特性をモデリングするローランド独自の技術)による3タイプのアンプにコーラスとリバーブのエフェクトを内蔵、さらにサブウーファーを搭載した2.1チャンネルのスピーカー構成など機能も豊富だ。便利な点はそれだけではなく、iPhone/iPadアプリと連携できることも大きな特徴だ。お気に入りの曲とセッションしたり、それを録音したりすることも可能になっている。ヘッドフォン端子もあるから、自宅で練習するにはもってこいの小型アンプと言えるだろう。


■COSMアンプ内蔵、3タイプのアンプを選択可能

幅25cm、コンパクトな横長のスタイルのCUBE Lite。デザインもスタイリッシュだが、この中には3インチ(7.5cm)のスピーカーが3発搭載され、2.1ch仕様のギターアンプになっている。10Wのアンプというと、一昔前のミニアンプを想像する人もいるかもしれないが、アレとはまったく違って、パワフルでちゃんと“使える”ギターアンプなのがうれしいところ。コントロールはVOLUME、BASS、TREBLEというシンプルな1ボリューム2トーンの構成。それだけなら本当に昔のミニアンプみたいだが、このCUBE Liteが一味違うのは、COSM(楽器の素材や回路、さらに電気的、電子的な影響、そして空間特性も含め、考えられる様々な要素をDSP処理し再現するローランド独自の技術)によるギターアンプ・モデリングが内蔵されていることだ。だからこんなに小さくても、パワフルで多彩な音色を生み出すことができるのだ。使い方はいたって簡単で、COSMと書かれたアンプ・タイプの切り替えスイッチを押してCOSMアンプを選び、DRIVEつまみで歪み量を調整するだけ。これで様々なタイプのサウンドを作ることができる。


■JC CLEANはJC-120をモデリングしたクリーンサウンド


▲JC CLEANはLEDが緑、CRUNCHはオレンジ、EXTREMEは赤が点灯する。
COSMのアンプ・タイプはJC CLEANとCRUNCH、それにEXTREMEの3つが用意されていて、スイッチを押すたびに切り替えられる。JC CLEANが選択されているときはすぐそばのLEDが緑、CRUNCHのときはオレンジ、EXTREMEのときは赤で点灯して知らせてくれる。まずはJC CLEANで弾いてみよう。10W程度のミニアンプの場合、クリーンサウンドを出そうと思っても、どうしても歪んでしまうことが多いのだが、これは本当にすっきりとしたクリーンサウンドだ。一音一音の粒立ちがくっきりしていてサスティーンもある。ジャキーンというアタックも心地よい。かなり使えるクリーンサウンドと言っていいだろう。それもそのはずで、このJC CLEANはローランドの定番ギターアンプJC-120をモデリングしたものなのだ。ちなみにこのアンプ・タイプでは、DRIVEつまみを上げていってもあまり歪まない感じで常にクリーンなサウンドのままだが、つまみを上げるに従って音が太く、力強くなってくる。あくまでクリーンサウンドの中で微妙にニュアンスの違う音を作りたい、そういうときにはDRIVEつまみを調整してみるといいだろう。


▲コーラスのつまみはリバーブも兼用となっていて、12時の位置から右に回すとリバーブがかかる。
JC-120といえば欠かせないのがコーラスとビブラートのエフェクトだが、CUBE Liteには利用価値の高いコーラスが装備されている。本家JC-120同様にちょっとウェットな感じのコーラスで、少しかけるだけで音の厚みが増してくる。こんな小さなアンプなのにスピーカーは2.1チャンネルのステレオ仕様なので、コーラスをかけたときの広がりも本家同様。弾いていて心地よいサウンドだ。コーラスのつまみはリバーブも兼用となっていて、12時の位置から右に回すとリバーブがかかる。ギターアンプで定番のスプリングタイプのリバーブで、深めにかけても音が埋もれてしまうことがなく、使いやすそうだ。

■歪ませてもきれいに鳴ってくれるCRUNCHとEXTREME


▲CRUNCHにすると、わずかな歪みから荒々しい音まで作ることができる。EXTREMEでは、歪みは荒々しく図太くパワフルになり音圧もかなりある。
アンプ・タイプをCRUNCHにすると、DRIVEの設定で歪み具合がかなり変わるようになり、ほとんどクリーンに近いわずかな歪みから、ザクザクに歪んだ荒々しい音まで作ることができる。どんどん歪ませていっても、音の輪郭やアタックの力強さは損なわれず、音圧が上がって力強くなるし、JC CLEANに比べて音量がかなり出るのもうれしい。わずか10Wとは思えない余裕すら感じられる。歪みは自然な感じで明るく、コンボアンプのようなあたたかみやまとまりが感じられる音だ。コードを弾いてもつぶれずに、それぞれの音程が明確に聴こえる。ロック全般に使える音だが、軽めの歪みならルーズな感じのロックンロールやブルースにぴったりだし、強めに歪ませれば70~80年代のハードロックにも似合うような音になる。極端に歪ませるのでないかぎり、歪み系サウンドはこのCRUNCHですべてOK、そう思えるくらい守備範囲は広そうだ。

EXTREMEにすると歪みはさらに増して、90年代以降のハイゲインアンプのような過激なサウンドも作り出せる。まとまりやあたたかみがあるのはCRUNCHと共通のキャラクターだが、歪みは荒々しく、音は図太くパワフルになる。音圧もかなりあって、パワーコードなどを弾いたときのドスンと来る塊のようなパンチのある音は、この小さなアンプから出ているとは思えないほどの迫力がある。そして音量もかなり出る。さすがにハードロックのライヴには物足りないかもしれないが、自宅練習には十分すぎる音量なのは間違いない。

CRUNCHもEXTREMEも、強く歪ませても音がつぶれてしまったりせず、音の輪郭は明瞭に聴こえる。DRIVEを最大にしてもきれいな音で鳴ってくれるから、ちょっとうまくなったように感じてしまうほど。しかし逆に、こんなはずでは、と自分の下手さを実感するところはもっとたくさんあった。不正確なピッキングでも音がつぶれてごまかせるというようなこともないからだ。ピッキングのニュアンスなど、自分の演奏を細部まで確認できるCUBE Liteのサウンドは、練習にかなり役立つに違いない。

■i-CUBE LINK端子でiPhoneと連携が可能

CUBE Liteの最大の特徴は、iPhoneとの連携が可能になっていること。専用のiPhoneアプリ「CUBE JAM」(App Storeで無償配布)を使って効率よく、そして楽しく練習できる点が新しい。CUBE Lite背面には、i-CUBE LINKという端子があり、ここに付属の4極のミニプラグのケーブルを接続することで、iPhoneやiPad、iPodと連携させることができるのだ。専用アプリのCUBE JAMでは、iPhoneのライブラリにある楽曲データを再生し、それに合わせてギターを弾いて録音することができる。再生速度やキーを変えたり、楽曲とギターの音量バランスを調整したりできるので、効率よく練習することができる。


■専用アプリ「CUBE JAM」でライブラリの曲とセッション


▲専用アプリ「CUBE JAM」
CUBE JAMでは、まず初めにライブラリにある楽曲データをインポートする。SONG LISTの画面でLibraryボタンを押すと、iPhoneのライブラリが表示されるので、ここから曲を選択すればOK。弾きたい曲を片っ端からインポートしてしまおう。インポートが終わったらメイン画面に戻って再生ボタンを押せば、CUBE Liteから曲が流れてくる。このとき、再生される曲の音量は、CUBE Lite本体背面にあるi-CUBE LINKのVOLUMEつまみで調整できる(CUBE JAMのメイン画面右側にあるMASTER LEVELのフェーダーでも可能)。まずはそのまま曲を再生して聴いてみると、これがなかなかのいい音で少しびっくり。2.1chステレオだから広がりはあるし、スッキリとまとまった低音もパンチがある。普通の小型ギターアンプではこうはいかないだろう。リスニング用としてもかなり使えるのではという印象だ。


▲ギターの入力レベル調整は、REC LEVELを選択することで可能。
曲に合わせて弾く前に、まずはギターの入力レベル調整。これは画面左側のフェーダー上のボタンで、REC LEVELを選択すると、このフェーダーでギターの入力レベルを調整することができる。ここで注意しておきたいのは、ライブラリの楽曲の音量はどれも同じではないし、COSMのアンプ・タイプやDRIVEの設定によってギターの音量も違ってくることだ。したがって、選ぶ曲やギターの音色に応じて、ギターと楽曲それぞれの音量を調整しておくことが重要になる。まずはアンプ本体でギターの音色、音量を決め、次にCUBE JAMアプリでフェーダー横のインジケーターを見ながらギターの入力レベルを合わせ、最後に曲を再生しながらギターの音量に合うようにi-CUBE LINKのVOLUMEで曲の音量を決める、という手順がいいだろう。

■速度やピッチ変更、A/Bリピートなど練習に便利な機能がたくさん

さっそく曲に合わせて弾いてみると、やはりこれは楽しい。再生している曲と自分のギターが一体となり、CUBE Liteのスピーカーからうまくまとまって出てくるため、ちょっと大げさだが本当にセッションしているかのような気分のよさなのだ。ただ、うまく弾けないところが出てくると、楽しい気分にちょっと水を差されたようになってしまう。そんな場合は練習あるのみ、なのだが、CUBE JAMには効率的な練習を支援する機能がいくつもある。


▲速度変更機能。50%から150%まで10%刻みで再生速度を変更することができる。
そのひとつが速度変更機能だ。アプリ画面にあるSPEEDボタンを押すと、50%から150%まで10%刻みで再生速度を変更することができる。実際に80%に落としてみると、かなり遅く感じるので、もともと速いフレーズでもそれなりに弾けるようになった気がする。しかしまだ完璧とは言えないレベル。そこで70%まで落としてみると、少し遅すぎる気がするが、これなら弾ける。ちゃんと弾けるようになってから、徐々にスピードアップするのがこういう練習のキモなのだから、最初は遅すぎるくらいから始めるのがいいのだ。さらに、弾けないという以前に、速すぎてフレーズの中身がよくわからずコピーすらできない、ということだってあるだろう。そんな場合は、60%や50%の超低速で聴いてみればいい。50%まで落としても音質があまり劣化しないので、細かいフレーズの中身もよくわかる。

また、センターキャンセル機能もある。画面のCENTER CANCELボタンを押し、ONを選ぶだけで、ステレオのセンターに定位する音を消してくれる機能だ。ショートディレイなどで左右に振り分けられている場合はあまり消えないが、ほとんどの場合はヴォーカルやギターソロなど、センターのパートがきれいに消えてくれる。自分のソロだけをオリジナルの伴奏に乗せてセッションできるのは気分がいい。憧れのギタリストと一緒に、ではなくて、憧れのギタリストに代わってバンドメンバーとセッションできることになるわけで、これが楽しくないはずがない。


▲PITCHボタンで半音単位で再生する曲のキーを変更することができる。
このほか、オリジナルがダウンチューニングになっているときや、カポを使用しているときなどには、PITCHボタンで半音単位で再生する曲のキーを変えられるので、ギターのチューニングをいちいち変えなくてすむし、気になるところだけを徹底的に繰り返して練習できるA/Bリピート機能もある。だから練習をとても効率的に進めることができる。

■セッションを録音してミックスダウン

セッションは、録音することも可能だ。録音の手順は、CUBE JAMでRECボタンを押すだけ。これで曲の再生がスタートし、自動的に録音が始まる。イントロの前にカウントインなどはないので、曲の最初を合わせるのはちょっと難しいが、ドラムのフィルなどから始まる曲を選ぶとうまくいく。画面上部のスライダーでポジションを移動すれば、サビからとか、ソロだけ、というように気に入った部分から始めることもできるし、もちろん好きなところで録音を止めることもできる。録音後、再生ボタンを押せば、オリジナルの曲と弾いたギターの両方が再生される。これを聴くのもまた気分がいいものだが、よく聴けばコピーの間違いやちょっとしたニュアンスの違いなども見つけられるから、以後の練習に活かすことができる。


▲インポートした曲、ミックスダウンしたセッションがここに並ぶ。Libraryボタンを押すと、SONG LISTにライブラリの曲をインポートでき、OPEN INボタンを押すとエクスポートすることができる。
うまく弾けたセッションは残しておきたいもの。そんなときは、録音したセッションをミックスダウンしてオーディオデータとして保存しておこう。

ミックスダウンは、MIX DOWNボタンを押すだけでよいのだが、その前にギターとオリジナルの曲との音量バランスを再度調整しておこう。セッションを再生しながら、画面左側のOUTPUT LEVELのフェーダーでギターの音量を調整すればOKだ。

ミックスダウンしたセッションは、CUBE JAMのSONG LISTに自動的に追加されるから、後からいつでも聴くことができる。さらに、SONG LIST画面でOPEN INボタンを押せば、WAVファイルとしてDROP BOXなどのクラウド・アプリにエクスポートすることができる。

こうすればPCで聴いたり、友達に聴かせたりすることができるようになる。もちろんこのファイルをSNSなどにアップロードすることも可能だが、オリジナルの楽曲の著作権を侵害しないよう、注意してもらいたい。

■とにかく楽しく練習できるCUBE Lite


▲キーボードやマイク入力対応の CUBE Lite MONITORも同時発売。CUBE JAMとも連携可能で、楽器練習はもちろん“ひとりカラオケ”も楽しめる。
CUBE Liteは、自宅練習に最適なアンプだ。その理由は、コンパクトで家の中のどこでも使えること、iPhoneアプリのCUBE JAMで効率的な練習ができることなどが挙げられるが、何より大きいのは、とにかく楽しく練習できるということだ。クリーンから歪み系まで幅広い音が作れ、このサイズとは思えないしっかりした音が出せるし、CUBE JAMでのセッションはとにかく気分がいい。単体でもアプリとの連携でも、CUBE Liteを使った練習は本当に楽しいのだ。どうせ練習するなら楽しい方がいいし、楽しければ自然に練習量も多くなる。楽しい練習をサポートしてくれるCUBE Liteは、上達への道標を教えてくれるアンプなのだ。

<CUBE Lite 主な仕様>
定格出力:10W(ステレオ・スピーカー3W×2+サブウーファー4W)
規定入力レベル(1kHz):INPUT=-10dBu、i-CUBE LINK/STEREO AUX IN=-10dBu
スピーカー:7.5cm(3インチ)×3
アンプ・タイプ:JC CLEAN、CRUNCH、EXTREME
コントロール:POWERスイッチ、アンプ・タイプ・スイッチ、DRIVEつまみ、VOLUMEつまみ、BASSつまみ、TREBLEつまみ、CHORUS/REVERBつまみ
コントロール(i-CUBE LINK/STEREO AUX IN):VOLUMEつまみ
インジケーター:アンプ・タイプ
接続端子:INPUT端子=標準タイプ、i-CUBE LINK/STEREO AUX IN端子=4極ミニ・タイプ、PHONES端子=ステレオ・ミニ・タイプ、DC IN端子
電源:ACアダプター(DC5.7V)
消費電流:1000mA
付属品:取扱説明書、ACアダプター、ミニ・ケーブル(4極)、保証書

text by BARKS編集部 森本

CUBE Lite
価格:オープン(予想実売価格 15,000円前後)
CUBE JAM(無償iPhoneアプリ) https://itunes.apple.com/jp/app/cube-jam/id585464498?mt=8
発売予定日:2013年2月16日

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