トム・ヨーク、ハットン・リポートを受けブレア首相を非難

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『The Guardian』紙は1月31日(土)、レディオヘッドのフロントマン、トム・ヨークが書いたブレア英国首相を辛らつに非難する手紙を掲載した。ヨークは、「This Theatre Of The Absurd(茶番劇)」とタイトルが付けられた手紙の中で、先週、発表されたハットン・リポートに対し怒りを露わにしている。

ハットン・リポートとは、英政府の情報操作疑惑を解明するために発足された独立調査委員会が発表した最終報告書のこと。英政府は'02年9月、イラク開戦の理由として「イラクは45分間で大量破壊兵器を配備できる」との報告書を発表した。しかしその後、BBCがこの情報に誇張があることをスクープ、自局のラジオ番組『Today』で「政府が情報当局に圧力をかけ、脅威を煽るような文言を挿入させた」と報道した。慌てた政府はマスコミに情報を漏らした犯人探しを開始。国防省顧問のケリー博士がその情報源であると確信し、彼の名前を公表することに決めた直後、博士が自殺した。

博士を自殺に追い込んだ経緯を明らかにするため、昨年8月、最高裁判事のハットン卿を委員長とする、政府、議会から独立した調査委員会が発足。委員会の調査では、ケリー博士の名前を公表することに決めた会議を主宰したのはブレア首相だとの証言も出ており、首相は「私がウソをついていることが明らかになれば、辞任する」と話していた。

しかしハットン委員会は、最終的に首相や政府に責任はないとする報告書を発表。それに怒りを露わにしたヨークが、『The Guardian』紙に以下のような手紙を掲載した。「ハットン・リポートが発表されたとき、俺はジェフ・フーン(国防相)が辞任するものだと思っていた。少なくとも、ブレアが卑屈な謝罪をするだろうと期待していた。この何ヶ月もそれを楽しみにしていたんだ」

「ハットン・リポートは、ごまかしだ。過去に何度も繰り返されたように、アンタッチャブルなストーリーというものがあるんだ。事実に背を向け、証拠を闇に葬る。これは茶番劇だ。こんなやらせを見せられたら、英国の未来に対し真剣に懸念しなくてはならない。ブレアは、危険な政治的間違いを犯した。それは世界の安定を脅かしただけでなく、何千人もの人々を死に追いやったのだ」

同紙にヨークの手紙が掲載されたのは、これが初めてのことではない。昨年は、<Jubilee 2000>チャリティ(途上国への債務帳消しを求める運動)を奨励した手紙が掲載されている。

Ako Suzuki, London
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