<SummerSonic2003>サマソニとFUJIを比較しつつ夏フェスを振り返る【コラム2】

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そんな中での最初に東京に登場したのはBlur。しかし、大きな期待をしただけに、その演奏はその期待とのギャップがあまりにも大きすぎた。スーツに黒いサングラスをかけて登場したデーモンの落ち着き放った姿を観て、なんとなく違うかも...と感じてしまったのは、ブリットポップのデーモンが大好きだった私だけか…。確かに今作『THINK TANK』で放ったように“脱ブリットポップ”を掲げたバンドの方向性はわかるのだが、どうもそれが定まらないように感じた。彼らのサウンドのよさはその昔のメロディや曲センスにあったことは確かだし、あの時の陽気さが産んだヴァイブスが全く感じられなかった。ビッグバンドのように総勢6人のサポートを引き連れての演奏だったが、なんともあのスタジアム規模での演奏はかなり抜けた音に聴こえてしまったのは否めない。そして「GIRLS & BOYS」こそやらなかったが、『Modern Life Is Rubbish 』「For Tomorrow」をやった時も、楽曲こそ素晴らしさはかわないのだが、その演奏がどうしても納得のいくライヴの快感が得られなかったのが残念だ。

それに比べRadioheadは、この大きなフェスで改めてRadioheadというバンドの単位の大きさををあのスタジアムの観客ひとりひとりに見せつけたのは間違いない。音のひとつひとつをバンド5人で鳴らしている姿は「There There」のオープニングから肌で感じた。実験的で機械的なエレクトロ音的なアルバムでのサウンドも、全て生身のバンドが放つ人の音によってできていることを再確認。それこそが機材のボタンを押して生まれた音ではないRadioheadのバンド・マジックだ。そしてトム・ヨークは、あの独特な声質と歌い方にどんなに遠くからみてもやられてしまうカリスマ的光を放っている。アコギとヴォーカルだけの「Exit Music」は鳥肌ものだった。そして東京では誰もがやらないものと思っていた「Creep」を演奏。昔、テレビでみた「Creep」とはやはり違う感じに聴こえたが、バンドが歩んだ功績が伝わってくるような濃厚な演奏だったし、この曲が“名曲”であることを再認識させられた。

Radioheadは他のバンドにはないあの大きなスタジアムを覆うようなそんな不思議な力が印象的だった。

そしてもう2組、興味深かったのがTHE JON SPENCER BLUESThe Strokesだ。両バンドともサウンドがもちろん全く違った形のUS発2組だが、共通点はその“シンプルさ”にあった。ジョンスペはなんといっても大ステージにシンプルなセット。3人がまとまって、インプロビゼーションのように自由に弾きながらも、そのまとまったグルーヴとリズムはさすがとしか言いようのないベテランの貫禄をみせつけながら、あの大観衆へ音を直球に叩きつけた。そしてThe Strokesも決して飾りのないシンプルなサウンドと、誰もが歌ってしまいたくなる素晴らしいメロディ。純粋にフェスらしい楽しさで盛り上げ、スタジアム全体を大きく揺らしたのは確かだ。この2組はある意味、純粋なバンドらしさで、サマソニで大スタジアムの観客を大いに湧かせた。

……というように想い出せばきりがない夏フェスの想い出も、とりあえずグッと胸にしまいながら、いろんな音楽を聴いて、また来年の夏を待つとしよう。。。

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