よみがえった歌姫の圧倒的パフォーマンスに酔いしれた日本公演

ポスト
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困難を乗り越えて大きくなったマライアの姿を待っていた

2002年11月、ニューアルバム『チャームブレスレット』のプロモーション来日から8ヶ月。
日本のファンが待ちに待ったマライア・キャリーの日本公演がやっと実現した。
レコード会社移籍などのいろいろな困難を乗り越えてここまできたマライアの姿。
ジャム&ルイスなどと制作したアルバムが好調なだけに、どういうパフォーマンスを見せてくれるのか、
来日公演の中盤を折り返した
7月8日の公演での模様を曲順を追ってリポートしよう。

素敵なマライア、日本のファンは君の魅力にシビレてるんだ

セットリスト

2003年7月8日(火)
@九段・日本武道館

1) Heartbreaker
2) Dreamlover
3) Through the Rain
4) My All
5) Clown
6) Honey
7) I Know What You Want
8) Subtle Invitation
9) My Saving Grace
10) I'll Be There
11) Friend of Mine
12) Bringing On The Heartbreak
13) Fanrasy
14) Always Be My Baby
15) Make it Happen
encore
16) Hero/Butterfly
17) All I Want for Christmas

最新アルバム


『チャームブレスレット・ツアー・エディション』

Universal International
2003年06月30日発売 来日記念盤
UICL-9011~2 3,360(tax in)


 マライアの衣装あれこれ


この公演でのマライアの衣装換えはなんと8回。見られなかったファンのために、どんな衣装があったのかをお教えしよう。もちろん、どれもが素敵だったことはいうまでもない。

●1~5曲目 ピンクのミニ

●6曲目 ブルーのチャイナドレス
7曲目 ホットパンツ&サンバイザー
8~11曲目 白のミニ
12曲目 赤のキャミソールとミニ
13~15曲目 ピンクのホットパンツ
16曲目 白い羽のドレス
17曲目 真っ赤なミニ

客電が落とされファンの声が次第に高まるが、ステージ前には巨大なカーテンが降ろされたまま。その前に和服の踊り子が登場し踊り始める。オープニング曲「Heartbreaker」のリズムが入り、客席の叫びがホールを埋め尽くす。その時、客席の一部にスポットライトが落とされた。マライアだ。ピンクのミニを身に纏ったマライアが客席から登場した。いきなりの登場に総立ちになった観客の目は、カメラマンのフラッシュを浴びながら歌うマライアに釘付けになる。

3年半ぶりのマライア・キャリーのコンサートは、観客の絶叫とともに幕を開けた。2曲目の「Dreamlover」が始まると同時に幕が開き、ステージバックにはロートレックの絵が大写しになる。ステージ上は、世紀末のモンマルトルかサーカスかという奇抜な色彩のセットで構成されており、ダンサーたちが各々自由なパフォーマンスを行なっている。何が始まるのか大いに期待を持たせるステージにワクワク感がいやがおうにも高まる。コンサートでの一番ドキドキする瞬間だ。それらをバックにアップテンポのリズムに合わせてマライアの歌が続くのだが、残念なことにコーラスの音量にかき消されるようにマライアの声が届いてこないのだ。テレビドラマ「逮捕しちゃうぞ」の主題歌にもなった「Through the Rain」でしっとりとしたヴォーカルを聞かせ「My All」と続くのだが、やはり調子が悪いのか動作がスローモーで声に張りがないように感じる。

いったんソデに引っ込んだ後はブルーのチャイナドレス。「Clown」そして大ヒットアルバム『Dreambox』からの「Honey」でダンサーと踊る。しきりに左手を耳に持っていく動作が目に付くが、モニターが悪いのか。しかし、こちらの心配もこのあたりから必要なくなってくる。百戦錬磨の歌姫、しっかりと持ち直してくるのがさすが。世界中のファンを魅了した声が本領を発揮し始め、マライア本来の高音のフェイクがビシビシ決まりだす。このフェイクが聴きたくてやってきたんだ。さすがのヴォーカルテクニックにしばし聴き惚れてしまった。

ニューアルバムからの「Subtle Invitation」では、白い布のブランコに乗ってマライアがステージの上から登場。そして「My Saving Grace」と続いていくが、もう大丈夫。超高音のフェイクがうなりを上げ、これぞマライアという声が武道館を満たしていく。オーディエンスは席を立つこともなくマライアの声に引き込まれている。

しかし、コンサートが後半に差し掛かるとそこは大ノリ大会がいやおうなく始まった。「I'll Be There」では観客と大合唱が始まり、観客は待ってましたとばかりに立ち上がり手拍子を打つ。ここまで溜めていたエネルギーをここぞとばかりに発散するのだ。「Friend of Mine」ではマライアが引き込み、コーラス隊が客をあおりまくる。そしてご存知ニューアルバムからの3rdシングルでデフ・レパードのカヴァー曲「Bringing On The Heartbreak」。8ビートのロックンロールに乗せてマライアの表情が柔らかくなり客をあおる。

「Fantasy」「Always Be My Baby」「Make It Happen」と続く頃にはマライアの調子も絶好調になり、ステージを歩き回って客席に手を振りながら歌いまくる。地声の艶とそれを際立たせるファルセットの伸びが素晴らしく、コブシを利かせた歌いまわしがシビレるほどかっこいい。これですよこれ、これこそがマライアに求めているもの。人間離れした高音と、実は相当低い地声でのシャウトが絶妙に混ざり合ってマライアの魅力になっているのだ。マライアが引き込み、これまでの興奮を反芻しているとすぐにアンコール。大ヒット曲の「All I Want for Christmas」で観客と一体となりコンサートは終わった。

3年半ぶりの日本公演は、全体的にはマライアの魅力を十分に堪能できたコンサートだった。しかし、何かが物足りない。オープニング直後に感じた違和感、それを頭の中に投射してみると、そこには覇気がなくアップテンポの曲に乗り切れないマライアの姿があった。音楽は楽しいものだ。そして楽しい音楽を表現できる彼女だからこそ世界的な成功を収めることができたはずである。この1年余りで彼女が経験したさまざまなこと。それを吹っ切って、また元気になって戻ってきて欲しい。そんな風に感じたコンサートだった。世界で一番光ってるシンガー、マライアを皆は待っている。

文●森本智
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