Barks Live-Rally International SPECIAL COLUMN 【第1回】BLR-I 04 ch Joni Mitchell 「Painting with Words & Music」 【第2回】BLR-I 05 ch The Who 「At the Isle of Wight」 【第3回】BLR-I 11ch Earth,Wind & Fire 「Earth,Wind & Fire-Story」 【第4回】BLR-I 14 ch ELO 「ELO-Live at Wembley and Discovery」
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| ■著者紹介 | 片寄 明人 比類なきオリジナリティとポップ・センスに溢れる3ピース・バンド、GREAT3のヴォーカリスト。その豊富な音楽知識から、ネット上のヴァーチャル・セレクト・ショップ“sitio”にてCD紹介も担当している音楽愛好家。 | | 「climax e.p.」 TOCT-4456 1,100(tax in) 2003年2月26日発売 1. DAN DAN DAN ダン・ダン・ダン 2. Devil's Organ 悪魔のオルガン 3. Haiku 熊穴に入る 『climax』 TOCT-24982 3,059(tax in) 2003年3月26日発売 1. Superstar スーパースター 2. Dummy Oscar 誰かの唇 3. Television 裏切りの男 4. Honey 恋人よ 5. HAIKU 熊穴に入る 6. China Bowie チャイナ・ボーイ 7. Volvox ボルボックス 8. The Thorn 刺だらけの都市 9. DAN DAN DAN ダン・ダン・ダン 10. Al Capone アル・カポネ 11. Devil's Organ 悪魔のオルガン 12. Charm Against Evil 渦巻いた世界 | | ちょっと前に話題になった映画「バニラ・スカイ」でトム・クルーズ演じる青年実業家が暮らす、実に豪奢な部屋にジョニ・ミッチェルの絵画が飾られていたことに気づかれた方はいらっしゃるでしょうか。ロック・ジャーナリスト出身の監督、キャメロン・クロウらしい気の利いた設定でしたが、こんなエピソードからもわかるように、現在のジョニ・ミッチェルはミュージシャンとしてだけではなく、画家としても高いステイタスを得ているアーティストなのです。 以前からもその作品は自身のアルバム・ジャケットを数度に渡って飾り、時には他のアーティストのジャケット(クロスビー,スティルス,ナッシュ&ヤングの「so far」など)を手掛けることも多く、その少しばかりゴッホにも似たタッチの彼女の絵画作品はファンにも馴染み深いものだと思います。 この映像『Painting with Words and Music』のオープニングはまだ客が入場する前の会場の全景から始まります。大きさはおそらくMTVアンプラクドなんかが行なわれている会場と同じくらいの割とコンパクトなサイズ。中央のステージを360度取り囲むようにすり鉢状になっている客席には、色とりどり、形も様々なソファーが整然と並べられ、実に快適そうな趣です。さらに会場全体を取りまくようにジョニ・ミッチェルの絵画が飾られ、さながらギャラリーとコンサート・ホールとラウンジが合体したような粋なセッティングが今作の舞台。この会場をデザイン、ディレクションしたのもジョニ・ミッチェル自身だということで彼女の全ての面におけるクリエイティヴなセンスが堪能できる仕組みになっています。 このライヴが行なわれたのはおそらくアルバム『Taming the Tiger』リリース後の'98年だと思います。会場で制作中の絵に筆を入れているジョニ・ミッチェルがステージに呼ばれ、名曲「Big Yellow Taxi」を歌い出すところから演奏はスタート。ドラム、ベース、ペダル・スチール、そして曲によってはトランペットだけというシンプルな編成のバンドながら、そこから繰り出されるサウンドの豊潤さには圧倒されます。 ジョニ・ミッチェル・サウンドの特徴としてまず挙げられるのが、彼女の特殊なギター・チューニングでしょう。そのフォーク、ジャズ、R&Bなどなど様々な音楽要素が入り混じった、真の意味でのフュージョンとも言える音楽性の基礎にあるのが、彼女の変則チューニングであることは間違いありません。今作でも複雑で宙に舞うようなコード展開の曲を時には指一本で、簡単に紡ぎ出す彼女ならではのギター・テクニックが堪能できます。しかも今作でのジョニはアコースティク・ギターではなく、エレクトリック・ギターを使用しているところもポイントでしょう。スペイシーでカントリー臭のしないペダルス・チール・ギターと混じり合ったその旋律は驚くほど立体的で、時にいないはずのキーボードの音が聴こえてくる錯覚を起こすほどです。 演奏される曲は初期の名曲「Woodstock」を含む代表曲ばかり。若い頃に比べて多少かすれてハスキーな彼女の声(タバコの吸いすぎ!?)によく似合ったアダルトなアレンジが施されているのも聴きどころ。最後には昔の恋人グラハム・ナッシュが登場するところも実にジョニ・ミッチェルらしい演出です(彼女は自分の作品に昔の恋人をゲスト参加させるのが得意、時には数人が勢揃いでコーラス隊なんてこともありました)。 噂では音楽業界の腐敗した現状に嫌気がさした彼女は先日リリースされた最新アルバム『トラヴェローグ』を最後に音楽活動から引退するなどという話も伝わってきていますが、これだけの唯一無二な才能を持った、真の意味でのアーティストにはたとえ寡作でもいいから末永く活動を続けてもらいたいと願うばかりです。 この作品に感動したあなたには、ジョニ・ミッチェルの映像としては極めつけとの評判も高い、'79年のライブを収録した「Shadows and Lights」が是非お薦め。あのジャコ・パストリアスやパット・メセニーらを従えた演奏は今作のリラックスした雰囲気とはまた全然違う、緊張感溢れる瞬間を堪能させてくれます。 Great 3 片寄明人 | |