歴史と驚きの映像、そして名曲の誕生秘話

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歴史と驚きの映像、そして名曲の誕生秘話

'70年代のエルトン・ジョンの歩みがダイジェスト感覚で

最新映像作品

『クラシック・アルバムズ:エルトン・ジョン/グッバイ・イエロー・ブリック・ロード(VHS)』

VIDEOARTSMUSIC VAVG-1096
2002年2月27日発売 3,990(tax in)


【収録曲】
葬送
グッバイ・イエロー・ブリック・ロード
キャンドル・イン・ザ・ウィンド
土曜の夜は僕の生きがい
ベニーとジェッツ
碧の海、ジャマイカにおいで
歌うカウボーイ、ロイ・ロジャーズ
ハーモニー
ダニー・ベイリーのバラード
スウィート・ペインテッド・レディ
ほか

【出演】
エルトン・ジョン
バーニー・トーピン
ガス・ダッジョン
デヴィッド・ヘンツェル
ナイジェル・オルスン
デイヴィー・ジョンストン
デル・ニューマン
ティム・ライス
ほか




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昨年、秋の来日公演の記憶が未だ鮮明なエルトン・ジョン

そのパフォーマンスは大物だけが持ち得るリッチでゴージャスな魅力に溢れ、さらにエルトン・ファンを増加させたようだ。

一口にリッチでゴージャスなムードと言ってもエルトンの場合は一味違う。そう、何かロイヤルというか、どこか威厳のようなムードすら感じさせるのだ。おそらく、一連のダイアナ妃ショックを契機に今やトリビュート・ソング的な意味合いを持った「キャンドル・イン・ザ・ウィンド」との微妙な関係もあるのだろうが、ともかくエルトンの身辺からは独特なムードが漂って来る。

そのエルトンのイメージを決定付けたような「キャンドル・イン・ザ・ウィンド」は今でこそダイアナ妃のトリビュート・ソング的なニュアンスが強いが、もともとはアルバム『グッバイ・イエロー・ブリック・ロード』の収録曲として発表された。この『グッバイ・イエロー~』は'73年にリリースされた9作目、初の2枚組アルバムとして話題を集めた。タイトル・トラック(米2位)を含め、「ベニーとジエッツ」(米1位)、「土曜の夜は僕の生きがい」(米12位)と3曲ものビッグ・ヒットを放ったこのアルバムは8週もの間、全米チャートのトップをキープした他、全世界でトータル1億枚以上のセールス記録を弾き出したエルトン・ジョンの名盤中の名盤だ。

ある意味で、現在のステイタスをも決定付けたアルバム『グッバイ・イエロー~』のアンソロジー・ビデオが本作だ。

エルトン・ジョン自身はもちろんのこと、彼の作品とは切っても切り離せないプロデューサー、ガス・ダッジョンやソングライト・パートナー、バニー・トーピンらがレコーディングにまつわるエピソードを語ってくれる。特に、メロディーの美しさではエルトン・ソング随一と言われる「グッパイ・イエロー~」のサワリ部分だけでも、彼自身がピアノを前に弾き語りで披露するところなどはゾクゾクさせられるシーンだ。

'70年代前半のエルトンはメロディメーカーとして上り調子にあった。あの「ホンキー・キャット」を生んだ『ホンキー・シャウト』('72)、名曲「ダニエル」、「クロコダイル・ロック」を生んだ『ピアニストを打つな!』('73)、そして『グッバイ・イエロー~』の3作は、そんな時期にリリースされている。

そのレコーディングの舞台となったがフランスのストロベリー・スタジオだ。ここには当時のレコーディングやリハーサル、さらにはリラックスしたオフのレア・ショットが収められている。但し、残念ながら“このアルバムのレコーディング”と時期を明確に出来ないが、上記の3枚のアルバムのいずれかのものであることは確か。ともかく、エルトンを筆頭にレコーディング・メンバーの若いこと! もちろん、この時期のエルトンを支えたバック・ミュージシャン、例えばギタリストのデイヴィー・ジョンストンやドラマーのナイジェル・オルソンらの現在のコメントも網羅されていて、作品の説得力をさらに増している。

『グッバイ・イエロー~』は2枚組というヴォリームから、コンセプト・アルバム的カラーが強く、緻密なサウンドが聴き所の作品でもある。プロデューサーのガス・ダッジョンはコンソール・ルームにでーんと腰を据え、オリジナルのマルチ・トラックを使用して、ミキシング等のタネ明かしをしてくれる。そして、エルトンも「イエロー・グッバイ~」同様、収録曲の一部をアドリブで披露するなど、音マニアには嬉しいシーンが少なくない。

ただ、おや?と感じたのがライヴ。

ここにはエルトンのライヴ・シーンもアット・ランダムに挿入されている。中でも、'70年代のグラム・ロックばりのド派手なステージは、今とはかなり趣が違って、アグレッシヴ。それこそ「クロコダイル・ロック」辺りのナンバーがぴったりハマりそうなステージなのだ。このビデオを観て、ライヴにも歴史ありを実感すること必至。

本ビデオは基本的に『グッバイ・イエロー~』のアンソロジー作品であることは前で触れた通り。ただ、その肉付けとしてヒストリー的な要素も含んでいる。'70年代初期、まだデビュー間もないエルトンの姿が、ここにも刻み込まれている。まだ、プロモーション・クリップがポピュラーじゃない時代だが、それに似たような映像も収録。モノクロながら「ダニエル」のクリップが映し出された瞬間は本当にビックリするし、ストロベリー・スタジオで収録されたと思われるクリップ風の秘蔵映像も涙ものだ。

名盤『グッバイ・イエロー~』をキーワードに'70年代のエルトン・ジョンの歩みがダイジェスト感覚で楽しめる。

もちろん、既にキャリア30年以上の大ベテランのこと、これもほんの通過点に過ぎないないが、現在のビッグなステイタスを支えるベース、そう彼の原点が捉えられていると考えれば、ファンならずとも必見の映像であることに間違いはないと思う。

北井康仁/YASUHITO KITAI

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