『Mashroom Haircat』 QUATTRO DISC クアトロ-043 2001年11月15日発売 1,890 (tax in) 1Firestone Baby 2 Pierrot Lunaire 3 Intervista 4 Shiritori 5 I Cat My Hair 6 Dialtone 7 The Rabbit Was Me 8 Noah 'S Ark
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知れば知るほど深~い Mashcatのバックグラウンド【その1】 |
. | Mashroom Haircatって、マッシュルームカットと、猫のキャットをかけたんだけど、モーマスがこのアイデアを持ってきたときに、なんてダサいんだ~!って思いましたよね(笑)。 以前のエミはぐるぐるの頭だったのに、今落ち着いてるし、あと、ドラッギーなイメージってマッシュルームって。それを縮めて、Mashcatってユニット名にしたんですけど、モーマスが「ミスチルみたいでいいでしょ? 超日本ぽいし~」って(笑)。 それに加えて、私はmash catって感じで、猫をつぶすっていうイメージも持ったし、モーマスがきのこで、私は猫ね、ってのでもいいなと(笑)。 |
知れば知るほど深~い Mashcatのバックグラウンド【その2】 |
. | モーマスは、エジンバラ出身なんだけど、魔女狩りのメッカみたいなところで。旧市街地が残ってて、幽霊ツアーみたいなのもあったりして、重くて、怖いところだらけのところなのね。今もみんな住んでるんだけど、中世の歴史がそのまま残ってて、それを隠すわけでもなく、普通に共存してて。 で、私は福島県白河市出身で、ここも城下町で怖いところいっぱい残ってて、地名でも怖い由来だったりするんだけれど、そういう怖い話だったり、不思議な話に2人とも興味津々で。 それに私はクラシック畑だったし、彼はお父さんが天文学者で、型にはまった勉強もちゃんとしたっていう両極も持っていたりして、そういう共通点があったんですよね。 |
知れば知るほど深~い Mashcatのバックグラウンド【その3】 |
. | 私は大学で打楽器の勉強をしていたので、デビューしたときは「曲を書くときはコンガで作るんですか?」なんて聞かれましたね(笑)。そんなわけないんですけど(笑)。でも、たしかに、曲を聴くとき、リズムから反応するところはあります。 あと、クラシックも全然違和感なく聴いてて、ベートーベンの「田園」も、田園の風景を思い浮かべながら、音を解体して楽しんでましたね。それは、アイドルを追っかける感覚と同じレベルでやってました。 だからMashcatもクラシックも垣根はないですね。ポピュラリティーってところで、同じじゃないかな。時代が違うだけで。 |
| ――まずはモーマスと出会ったきっかけは? 猫沢: 私が大阪にキャンペーンに行くときに新幹線に乗っていたら、偶然、前の席にカヒミ・カリィちゃんが座ってて、声をかけてきてくれたんですね。カヒミちゃんは大阪へツアー行く途中で、モーマスがそのツアーバンドに参加してたんです。で、私、モーマスのファンだったし、モーマスも私のCD聴いててくれてたみたいで、そこで知り合ったんです ――猫沢さんは、モーマスのどういうところがファンだったんですか? 猫沢: モーマスは曲、詞もすごくいいし、物の見方がかなりニヒリストなんですね。で、歌詞で皮肉ったり怖いこと書いてるんだけど、視野を感じさせて。そういうところがよくていいなって。 ――逆に、モーマスは猫沢さんのどういうところに惹かれたって言ってましたか? 猫沢: お互い違うバックグラウンドなんだけど、出てくるものはすごく近いって言ってましたね。 ――なるほど。で、その後2人は? 猫沢: モーマスがロンドンからNYに移住するときに、私のCDをドーンと送ったんです。私はこういうことやってきたんだ、って聴いて欲しくて。そしたら、モーマスが「僕が君と演るならばこういったことをやるな」って返事が来たんです。それをきっかけで、「私ならこうする」とか、今までの2人の音楽経験や経歴をメールでやりとりするようになったんです。 ――そのやりとりの結果、2人で一緒に作ってみようと。なにか具体的に見えてきたものがあったんですか? 猫沢: “商業音楽には疲れたね”って2人とも一致した意見が出たんです。今の音楽制作の環境や流れに疑問を持っていたから、僕らは一歩、先に行こうよって。作る側も楽だし、聴く側も楽だっていう、やさしい音楽が演りたいねってところで、作り出したんです。あとね、言葉が先に頭に入るよりも、ぱーっと絵が……説明的じゃなくて、子供が書いたような絵が浮かぶ音楽をやりたいねって。 ――そこからモーマスが持ってきたアイデアや曲を元に始めたんですか?
▲猫沢エミ | 猫沢: それが、モーマスが日本に来て私を改めてみた途端、「あれ、イメージが違う」って(笑)。「不思議ちゃんで俗世間では生きていけないような人間を想像してたけど、もっと動物的だ。僕がNYでひとりで作った曲はひとまず無しにしよう」って。だから、やさしい音楽、っていうようなテーマだけをもって、曲のない状態でスタジオに入って作り出しました
――なかなか無謀ですね!
猫沢: ええ(笑)。でも、いろいろアイデアはすぐ出ましたね。初日は様子伺いみたいなところがあったんだけど、最初の理解が始まると、ばーっとお互い分かるようになって、2日目にはもう作り出してましたね。モーマスが小さなコンピュータを作って、「こういうのはどうだ?」ってアイデアが出てくると、私が「あの映画のこういう感じがする」って言って、「ああそうだね、これはフランス語にしよう」ってどんどん進んだこともあるし、私が持ってきたパーカッションで、ループで作って、ああだこうだって肉付けしてったり。モーマスは<焼き芋~石焼~き芋~♪>って外で流れてくるのが気に入って、テレコ持って裸足で駆け出しましたからね(笑)。でも、それは日本人にとって知りすぎてて、イメージはそれ以上湧かないからダメなんだよって、説明してね。モーマスは「超カッコいいのに!」って言ってましたね
――そんな感じですべての制作を3週間で終わらせたと聞きましたが?
猫沢: ええ。それでも、1日3、4時間しか作業しなかったんですよ。モーマス、他の仕事もあったし、お互い疲れたら、今日はヤメってなったし、土日はきっちり休んだし(笑)。そうやってシンプルに作っていったら、机の上を一番占拠してるのが楽器や器材じゃなくて、お菓子だったし(笑)。
――リラックスした感じだったんですね。
猫沢: ですね。でも、モーマスは日本語分からないし、私は英語そんなに得意じゃないから、言葉の面ではいい意味で、緊張しましたね。
――お2人は音楽知識や基礎音楽、映画や絵画に対する知識は豊富ですよね。モーマスは海外いろんなところに住んで、様々なアーティストとコラボレートしてるし、猫沢さんも音楽大学出身ですし、ジョン・ケイジなどの現代音楽の話でも盛り上がるようですし。
猫沢: そうですね。モーマスも言っていたけど、こうやって3週間でできたのは、私達それぞれ土台にある膨大な音楽知識があったからこそできたんだと思いますね
――英語、フランス語、日本語とさまざまな歌詞があって、その中でも日本語の「SHIRITORI」は面白いですね。楽曲じゃなくて、雰囲気あるBGMみたいで。歌は猫沢さんがメインですが、これは2人でユニークにしりとりしてますよね(笑)。
猫沢: モーマスが、数少ない使える日本語で「やだ~超怖い~」とか言うんですね(笑)。私が英語やフランス語で歌うのって、たどたどしいと思うんですね、それと同じで面白いかなって。でもね、私に発音を教えるとき、厳しいんですよ! NOVAの先生みたいで(笑)。で、それのお返しっていうのもあります(笑)
――それでも、子供っぽい柔らかい曲があり、ゾクゾク怖いサウンドもあり、ドキッとするような大人っぽい雰囲気もありで、バラエティに富んでるんだけど、統一感がありますよね。それはなにか意識しましたか?
猫沢: いえ、それはないですね…。歌い入れやレコーディングもモーマスを信頼してやったし、でも歌の取り直しも1回あったくらいだったし。ん~やっぱりテーマでもあった、絵が浮かぶようなってところが統一感になったんですかね。歌詞もそうかな、モーマスと話してたんだけど、イギリスの哲学者ヴィトゲンシュタインが「世界の限界は言葉の限界」って言ったんですね。でも音楽の言葉ってそれを超えられるかなって。“言葉の関節を外す”って感覚で、言葉に囚われないように作っていきましたね
――Mashcatはパーマネントなユニットなんですか?
猫沢: まだまだやっていきたいです。NYへレコーディングしに行く予定だったんですけど、テロがあって行けなくなっちゃったんです。でも、いずれ私がNY行って作りますよ! また全然違ったのが出てきそうな感じもありますから。取材・文●星野まり子 | |