マイケル・ジャクソン『Invincible』最速レビュー

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この10年間において変化したのは、その美白化した顔だけではなかった。パパになった自信からかどうかは定かではないが、声変わりのクスリを飲んで下がらなくなっていたはずの声は幾分低くなっていた。しかし、そのぶん発声に無理がなくなり安定感を増している。そして、普段はあたかも王子様のような生活をしているのだから、本来ならもっとも黒人のストリートから乖離している存在のはずなのに、その最新鋭の刺激的なファンク・ビートに対する抜群のリズム感の良さは今どきの10代の血気盛んなブラザーさえもねじ伏せるパワーと勢いがある。これが世界有数の大富豪である43歳の感覚なのか! やはり天才は健在であった。その不世出の才能に対し、現在R&B界の最高のプロデューサー、ロドニー・ジャーキンスが、ブランディジェニファー・ロペスにさえ繰り出したことのない最上にして最先端の鋭角的なチキチキ・ビートで応えている様は、現在のR&Bの世界でも間違いなく最高のつばぜり合いである。

……と、このままマイケル&ロドニーのコンビで全曲作ってしまえば間違いなく現在のR&Bの世界でも、もっとも先進的な作品の1つになっていたであろうが、“ただ単に先進的なだけがカッコいいワケではない”ということを、今回もいつもながらにマイケルは教えてくれている。最新シングル「You Rock My World」のPVにおける、小林旭の日活アクション映画ばりのクサさとカッコ良さ紙一重のプレイボーイ、それを演じるコテコテ芸人ぶりは今作でも大いに健在だ。泣き崩れるように歌うハンカチびしょぬれの感動バラード、子供たちに対する未来永劫の愛情を歌ったナンバー、自分を執拗に追い回すマスコミに対する怒りを託したロック・ナンバー。こうした“マイケル的様式美”が今作も損なわれることなく徹底的に表現されているのは実に嬉しい限り。自分の何がネタにされるのか。それを熟知し、そのイメージにその都度その都度の最新モードで期待を裏切ることなく応えていく、徹底したエンターテイナーぶり。やろうたって出来はしない。ポップの王様を20年続けられる理由はズバリここにある。

文●沢田太陽(01/10/10)



■ニューアルバム 『INVINCIBLE』
 2001年10月29日発売
 EICP-20 ¥2,520 (tax in)

1 Unbreakable
2 Heartbreaker
3 Invincible
4 Break Of Dawn
5 Heaven Can Wait
6 You Rock My World
7 Butterflies
8 Speechless
9 2000 Watts
10 You Are My Life
11 Privacy
12 Don't Walk Away
13 Cry
14 The Lost Children
15 Whatever Happens
16 Threatened
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