『AALIYAH』 東芝EMI VJCP-68264 7月7日発売 2,548 (tax in) 1 We Need A Resolution 2 Loose Rap 3 Rock The Boat 4 More Than A Woman 5 Never No More 6 I Care 4 U 7 Extra Smooth 8 Read Between The Lines 9 U Got Nerve 10 I Refuse 11 It's Whatever 12 I Can Be 13 Those Were The Days 14 What If 15 Try Again このアルバムについてもっと知りたい! という人はこちらもどうぞ | | Trump International Hotelの上には、けばけばしいゴールドの日よけが、まるで世界中へ向けて中指を立てて挨拶しているような威容を示し、Central Parkへ向かおうとする数えきれない観光客やジョギングランナーに対して、ここの宿泊客は他の誰よりも金持ちの最高の大物ばかりで、気に入らないものなどひとひねりにしてしまうのだということを知らしめている。Donald Trumpについてはさまざまなことが語られているが、繊細という形容が含まれていないことは確かだろう。 もし、一等地にあるTrump氏のホテルに出向く理由が私になければ、このような話にはまったく意味がなかっただろう。だが、そこでは映画とアーバンラジオ局で売り出し中のクールで控えめなスーパースター、Aaliyahがインタヴューのために待っていたのである。彼女のレコードレーベルであるBlackground/Virginの幹部が、自社の繊細で魅惑的な歌姫をこのような繊細とも魅惑とも無縁な環境に宿泊させることに決めたのが不思議に思えた。しかし、それが人生のミステリーというやつなのだろう。 それにくらべれば、Aaliyah Haughtonがメガスターダム間近の眩いばかりの高みへと昇り詰めたことは不思議でも何でもない。15歳の時にR. Kellyの手堅いプロデュースによる『Age Ain't Nothing But A Number』でデビューし(本当にあれは7年も前だったのだろうか)、2年後のセカンドアルバム『One In A Million』ではビートマスター、Timbalandと仲間のMissy Elliottが参加、そこで彼女は自身の口ごもるようなシンコペーションのグルーヴを会得したのである。おしゃれでスタイリッシュな部分をストリートに通じた最先端のプロダクションとビートに織り込むことによって、彼女が自分のポジションを確立したのもこのときだ。セカンドアルバムのタイトル・トラックは、近年のアメリカにおけるアーバン・サウンド・シーンの金字塔として打ち立てられ、多数のイミテーターが登場したのだった。Timbalandが「Are You That Somebody?」と「Try Again」(それぞれ『Nutty Professor:ナッティ・プロフェッサー/クランプ教授の場合』と『Romeo Must Die:ロミオ・マスト・ダイ』のサウンドトラックに収録)で二重の成功を勝ち得たときには、このプロデューサーとアーティストのコンビはR&Bの階級社会における王と女王の座に君臨していたのである。 『Romeo Must Die』に主演したことにより、Aaliyahはハリウッドでも充分にやっていける才能があることを証明したのはもちろん、BrandyのシチュエーションコメディやBeyonce'とMonicaのMTV向け映画をはるかに凌ぐ実績を残した。実際のところ彼女は、演技の面では誰よりもBarbra Streisandをロールモデルとして崇拝している(「彼女は私のやろうとしていることをすべてやっているわ。歌から始めて、それから演技やプロデュースに乗りだしていったの。もちろん私はダンスとパフォーマンスもずっと続けるつもりだけど。これは天賦のものだからね」)。 Aaliyahはすでにもっとおいしい主役の座を射止めている。『Matrix:マトリックス』の続編2本とAnne Riceによる『Queen Of The Damned』の映画バージョンだ。この調子でいけば彼女はすぐに引く手あまたの人気者となるだろう。賢明な投資を行なうことを願うばかりだ。 こうした多方面での芸能活動により銀行口座が超高速で膨れ上がっているのではないですか、という質問に「そうね、私はトライしているのよ。わかるでしょう」とミシガン州に生まれ育ったシンガー/女優は、少し当惑した様子で笑いながら答えた。 「本当はね、その方面の話はあまりしたくないのよ。だってとってもパーソナルなことでしょう。言えるのは私は単に歌って演技するだけじゃなくて、キャリアのあらゆる側面に深くかかわっているということね。あらゆるミーティングに弁護士と会計士を連れていっているし、彼らと個人的にも親しくつきあっているわ。これはとても重要なことよ。どんなアーティストに対しても“キャリアのあらゆる側面に充分注意しなさい。だって何よりもまず第一に、これはビジネスなんだから”って言いたいわね」 彼女自身の名前をタイトルに付けた新作はTimbalandとの2作目、トータルでは3枚目のアルバムとなるが、その制作は彼女の女優としての多忙なスケジュールの合間に進められたため、ファンはリリースまでこれほど長く待たされることになったのである。 「このアルバムのレコーディングは『Romeo』の撮影に入る前にスタートしたの」「3曲を仕上げてからサウンドトラックのアルバムに取り掛かったわ。その3曲のうち「Rock Da Boat」と「Loose Rap」がアルバムに収録されたけど、この2曲は数年前の作品ということになるわね。スペシャルな曲だと思ったから残すことにしたのよ」 アルバム『Aaliyah』はお馴染みのTimbalandをはじめ、Key Beats、Tank、Missy、そして以前に「Are You That Somebody?」と「Try Again」を書いた主力ソングライターのStatik(Playaというグループのメンバー)といった、Blackgroundの社内スタッフであるビートテクニシャン、ミュージシャン、ソングライターによってプロデュース/作詞作曲が行なわれた。Timbalandのトレードマークであるスピーカーを試すようなドラムンベースのビートに、ちょっとメロウな'80年代スタイルのジャズファンクを組み合わせたサウンドはもちろん、ニューアルバムのハイライトになっているのは「Rock Da Boat」のレトロなジャジーさと、ヒット性の高いセカンドシングル「More Than A Woman」におけるブリージーなヒップホップファンクなどである。 AaliyahはソングライターであるStatikとの音楽的な関係が、彼女の自己表現にとって重要な役割を果たしていると考えている。 「私たちはお互いのことをとってもよく知っているわ。私がStatikに自分の感じていることを話すだけで、彼はそれを言葉にしてくれるの。アルバムのほとんどは『Queen Of The Damned』を撮影していたオーストラリアで録音したのよ。StatikとBlak(このアルバムにも協力しているPlayaのバンドメイト)が、私のために作った曲を参考に歌ったり演奏したりしてくれて、そこから気に入ったものを選んだの。それから2人はオーストラリアに来て私の歌を録音したわけ。2人には前には取り上げたことのない題材をテーマにしたいということと、自分たちの内面を深く探ったものにしたいということを話したわ」 「Tankが書いてくれた「I Can Be」という曲は、私の好きなダークでエッジのある感じなの」と彼女は続ける。「それにちょっとロックンロールっぽいのよ。自分自身の音楽に他のタイプの音楽を融合させるのが好きなのね。テーマは“別の女の子になること”について触れているわ。“あなたとの関係はうまくいっていると思うけど、私はあなたの人生における別の人物になりたいのよ”という内容なの。こういうことに関する見解は人によってまちまちでしょうけど、この歌に出てくる女の子は自分の現状にまったく満足していないというのが私の解釈だわ。彼女はナンバーワンになりたがっているのよ。人生にはこうしたことが起こりえるし、とっても悲しい状況ではあるけど、この歌はそういう感情を反映しているの」 もうひとつ歌詞が注目を集めそうなのが、夫婦間虐待の問題を扱った「Never No More」である。 「Statikがこれを作ったとき、私は駆けよって彼を抱きしめたわ。このテーマについて私たちは最初に議論して、“そこまでやるべきだろう”という合意に達したの。私のイメージと得意なスタイルはとってもユニークなものだと思うし、それまでと違うことにトライするのを躊躇することも決してなかったわ」 たしかに『Queen Of The Damned』におけるあらゆるヴァンパイアの母親であるAkashaの役を演じるのは、Aaliyahにとってまったく違った経験だっただろう。この役が彼女のダークサイドにアピールしたことは間違いないようだ。 「Romeoを撮っているときに台本を読んだのを覚えているわ。私はAnne Riceファンだから、この役を引き受けるべきだと思ったの」と彼女は回想する。女優としてのAaliyahは、明らかにダークで不気味な役を好んでいる。 「私の生涯最高のお気に入り映画のひとつ『Silence Of The Lambs:羊たちの沈黙』でClarice Starlingを演じられたらよかったんだけど。『The Godfather:ゴッドファーザー』を除けば、私が見た小説の映画化の中では最高の脚色だと思うわ」 でも、どうしていつもそんなに暗いのだろうか? 「どうしょうもないのよ!」と彼女は叫ぶ。「私は複雑な人格なの! 暗さもAaliyahの一部なのよ。私がとっても親切で陽気なのをみんなが知らないだけ。たしかにひどくメランコリーなときもあるんだけどね。親しい友人や家族といるときは、ずっと笑っているわ。(彼女のマネージャーでもある)両親や兄弟とはとっても仲がいいの。自分のダークサイドやヴァンパイアや『Silence Of The Lambs』と同じくらいにコメディも好きなのよ」 『Queen Of The Damned』に主演することは、彼女のような若い女優にとって大きなチャレンジであった。 「監督とミーティングをして、何度か彼とワークセッションをやったわ。キャラクターに命を吹き込むのは大変だった。まずニューヨークで1カ月、オーストラリアでもう1カ月リハーサルをしたの。Akashaはエジプト人だからアクセントのコーチについて、アメリカ人とエジプト人が混ざったような話し方を完成させたのよ。それから振付師と一緒に、ヴァンパイアの身のこなしを作り上げていったわ。とくにAkashaは女王だから威厳があるし、とっても邪悪で極めてパワフルなの。それに若いからちょっと生意気な感じもあるのよ。彼女は自分が欲しいものを手に入れるのは当然だと思っているしね。だから彼女のこうした側面をすべて演じきるのは、私にとって大変な試練だったのよ」 Aaliyahは映画で要求されたさまざまなハードルを簡単には克服できなかったことも認めている。 「今回の役には私にとって初めてのちょっとしたラヴシーンがあって、私はとっても神経質になっていたの!」とAaliyahはナーヴァスそうにくすくすと笑った。 「だけど彼女のキャラクターはとっても支配的でセクシュアルだったから、私は自分のシャイさを横に置いといてAkashaになりきるしかなかった。そのシーンは薔薇でいっぱいのバスタブで撮影されたの。恥ずかしいパートを一度乗り越えたら、とっても楽しいものになったわ」 実際のところ時としてシャイなAaliyahは、彼女の音楽と同様に謙虚さのモデルでもある。彼女は美しいが、ピカピカのスーパーモデルのようなところはまったくなく、どちらかというと近所にいる本物の可愛い娘といった感じなのだ。また、彼女を取り巻くトランプタワー的な環境にふさわしい、ゲットー・ファビュラスなマナーでダイヤをギラつかせるのではなく、彼女のスタイルはむしろ地味なほうである。上品なブレスレットとキラキラするペンダントも、シンプルなブラックジーンズとそれに合わせたセーターのおかげで目立たなくなっている。とってもシックだ。 「この業界にはありとあらゆる種類のプレッシャーがごろごろしているけど、それを単に自分にプレッシャーを与えるものとして放っておいちゃだめよ」 彼女の映画界でのキャリア、ニューアルバム、そして彼女が生きている蛇とのたうち回るシングル「We Need A Resolution」のダークでエキゾティックなビデオなどを取り巻く高い期待について尋ねたとき、Aaliyahはそう宣言した。 「私は自分自身に忠実であるために、そして他の誰かがやっていることに影響を受けてしまわないように、自分で自分にかなりのプレッシャーをかけているのよ。ちょっと尖っていてセクシーなのが私なの。私のイメージはお仕着せのものじゃないわ。ビデオにダークなエッジを加えることができたのにも満足している、だって元からずっと存在していた要素だから。若いころにはサングラスをしていたし、髪はもっと片目を隠すくらいに伸ばしていた。今の私は自分のあらゆる側面に満足しているわ」 By Jeff Lorez/Launch.com | |