やっと戻ってきてくれたぼくらのウィーザー。諸手をあげて彼らを迎えて、そして抱きしめたい。大袈裟かもしれないが、1曲目を聴いただけで胸がキュンとなってしまった。
もちろん、4月の来日公演も感動的でそんな印象だった。でも、この5年ぶりのニューアルバムは、そんなファンの思いをもっと強固なものにしてくれた。
何故ならこのアルバム、凄く良い。全曲ストライクというほど、気持ちいい曲が並んでいる。もしかしたら、今までのウィーザーの中でいちばん良いかもしれない、というほどの最高のアルバムになっている。
まさか、極上のパーティ・チューン「バディ・ホリー」が入った1st『ウィーザー』を、涙なくしては聴けない名曲「アクロス・ザ・シー」が入った2nd『ピンカートン』を凌ぐアルバムが出来るとは、リヴァース・クオモには悪いけど思いもしなかった。
また、昨年8月の<サマーソニック>は、他のどのバンドよりも良いステージだったのはもちろん、メンバーそれぞれの演奏力も向上しているなとは思いはしたけど、懐かしさが先に立って、新曲よりも1st、2ndの曲ばかり楽しみにしていた気がする。
でも今回、4月の来日公演を経て、改めて新曲をアルバムという形で聴いてみると、これが冒頭の文章のごとく、心を大きく揺さぶられてしまう。 | . | 青いエネルギーで突き進む一方で寂寥とした心象や繊細な若さを現したサウンドは、まさに理想的な青春ギターポップといえるのだろうが、ウィーザーの優れた点はそれだけで完結していないところ。ライヴで盛り上がるだけでなく部屋でもきちんと聴かせてくれるその音楽性だ。
その核となっているのはリヴァース・クオモのソングライターとしての才能の高さだろう。キーがマイナーなのに楽しく盛り上がる「バディ・ホリー」やポップに聴こえながら実は転調が激しい「セイ・イズント・ソー」など、以前から彼の書くメロディは一筋縄ではいかない変則ポップが多かったが、その作風は、今作でますます成長している。同時にクリエイターとしてのプロ意識と緊張感が芽生えてきているようだ。
今回のプロデューサーは、1stを手掛けているリック・オケイセック。轟音ギターのうねりは貫禄を増し、丁寧に音が重ねられていることから、隅々からメジャー感が伝わってくる。
それぞれの曲が躍動していながらも、全体的に比較的あっさりしているのは、充実さゆえか、それとも次作への余力を残しているからなのか。あっという間に聴き終えてしまう。でも考えてみたらトータル33分と、とても短い。
もっと聴きたいと思わせつつ、終わってしまう感覚、似たアルバム、他にあったな……と思いめぐらせていたら、ビートルズ『プリーズ・プリーズ・ミー』だった。あれもトータル30数分。
恐るべしウィーザー。 |