【前編】からの続き ――LL Cool Jの“LL”にはどんな意味があるのですか? LL Cool J: 何かカッコいい名前を探してた時に、たまたま誰かが“Ladies Love(女性に愛される)”って案を出してきたんだ。最初はどうかなと思ったけど、後で「よし分かった、じゃあLadies Love Cool James(女性はCool Jamesが大好き)にしよう」って言ったのさ。めちゃくちゃ簡単だろ。で、Rick Rubinとようやく契約できた時に「君のラップネームは?」って訊かれて、「Ladies Love Cool Jamesです」って言ったら、LL Cool Jに縮めたらどうかって提案されたんだ。別に“Eggshells(卵の殻)”だって何だってよかった。俺は全然こだわらなかったからね。ただ、彼のレコーディングに参加したかっただけ。契約さえできれば良かったのさ。初めてのレコードなんか契約なしで作ったんだぜ。口約束だけでさ! ――あなたの考えでは、成功と危険/失敗の境界線は何だと思われますか? LL Cool J: 俺たちを成功から遠ざける要因はたった1つ、恐怖心だけだ。そして唯一、その恐怖心を克服できるのが信念なんだ。つまりどういうことかというと、ほとんどの人たちは心の底に夢を持っていて、たとえその時どんな仕事をしていようと、何をやっていようと、どんな時でも本当にやりたいと思っている夢があるってこと。彼らの多くがそういった夢を追いかけないのは、ズバリ怖いからだ。彼らはそれを認めようとしないけど、本当はトライして失敗したらどうしようっていう恐怖心があまりにも強すぎて、その時やっていることに甘んじてしまうんだよ。そして、夢は所詮、夢だと割り切ってしまう。それまで何かに挑戦したことも、挫折したこともないもんだから、そう感じるのさ。 だけど、時には勇気を振り絞って、夢に向かっていくことも必要だと思う。門をよじ登ってでも中に入る勇気がないと。「これは俺の夢だ。何が何でもやってやる」くらい思わないとね。例えばジャーナリストの仕事をしている人がいるとしよう。けど本当は小説家になりたいと思っている。まあプロのホッケープレイヤーでも何でもいいや。ところが彼は怖くてやりたいことができない。そんな奴に俺は「夢に向かって前進しろよ、そして自分には必ずできるという信念を持て」と言いたいのさ。こうありたいという人生を常に頭の中で描くことだ。自信を持って夢を追いかけろ、そして自分が思い描いた通りの人生を歩めよ、とね。 ――Camp Cool Jについて教えてください。 LL Cool J: Camp Cool Jは去年は活動を休止してたけど、この夏には再開する予定だ。今回もタダで子供たちをキャンプに連れて行くよ。俺流の愛情表現ってとこかな。人生って池みたいなもんだろ。ほんの小さな石でもさざ波ができる。いつかその子供たちの誰かの人生の中で、このキャンプが起こしたさざ波がプラスに働くんじゃないかと思ってさ。もしかしたら大統領になる奴がいるかもしれないし、知事になる奴がいるかもしれない。それは誰にも分からないけど。どっかの名門大学の教授になるかもしれないしね。俺はただ、素晴らしいと思うことをしたいだけさ。 だからといって、自分がアーティストであるという事実を忘れる必要はないと思う。自分らしさを保ちつつ、同時に正直でいい人間であれるはずだから。子供たちの親を騙したり嘘をついたりする必要はないんだ。社会にいい影響しか与えない、もちろんすれ違う女のケツなんか追っかけない、人畜無害な好青年のふりをする必要もない。俺は嘘の人生を生きるつもりはないからね。ハッピーになりたいし、家族も大事だ。自分の人生を愛しているし、自分の子供たちも愛している。でも、そのことを隠したり、嘘をついたりする理由はないだろ。ただ社会に貢献し、自分のコミュニティを大切にしてるだけなんだから。常に敬意を持ち、それを行動に移しながら生きていくことさ。 ――奥様にはどうやってプロポーズしたんですか? LL Cool J: 面白いこと訊くね。実は、ハイウェイでポルシェを運転しながら「なあ、もうそろそろいいかもな?」って言ったんだ。そしたら「「何が?」って訊かれたんで、「結婚だよ」って言ったのさ。それだけ。カミさんからは、4年くらい結婚してくれって言われ続けてたからさ。嘘じゃないぜ。ずっと俺のほうがプロポーズされてたんだ。 ――いわゆるライムバトルは、今や手に負えなくなってきていると思いますか? LL Cool J: それは見方によるね。感じ方ってのは人それぞれでさ。もし俺についてのアルバムを作る奴がいたら、俺はそれに答えてやるし、売られたケンカは買うさ。あ、でもそんなこと本気で考えないでくれよ。興味なんかないんだから。ライムバトル、結構だと思うよ。個人的には楽しんでる。歓迎はしないけど、たまにやるのは楽しいかな。競争しちゃいけないって理由はないからね。 まあ、スポーツみたいなもんさ、言葉と口のね。アートとして深く愛していれば、その分、誰かにバトルを仕掛けても危険は少なくなるんだと思う。金のためとか、そんな理由だけでやってる奴らのほうが、入っていくには難しい世界かもしれないな。そういう奴らにとっては、コンヴェンションかなんかでケンカしてるようなもんでさ。まるで口の中から食い物を取られる、みたいに思ってる。本当は違うのに。今やラップコミュニティは本当に分裂してしまっている。ここ何年かで変わってしまったんだ。前は、もっと純粋な愛情や誠実さに溢れた世界だったのに。恐らくTVの影響でイメージが下がっちまったんだろう。宝石やチェーンをジャラジャラ身に着けてる、みたいなね。多くの奴らが間違った理由でそういうことをしてる……。 まあ、実際のところ俺には間違ってるのかどうか分からないけど、要するに金のためだよ。別にこのアートに傾倒しているわけでも何でもない。でも、確かに最近はいたる所でそんなことが起こってるけど、中には誠実で、とてもいい仕事をするアーティストも大勢いる。俺は、バトル自体は素晴らしいし、ヒップホップの神髄とも言えるものだと思う。誰も俺からそれを取り上げることはできないし、そんな必要もないさ。 ――Canibusの“2nd Round K.O.”についてはどう思いましたか? いい曲だと思いました? LL Cool J: いい曲だけど、同時にイージーな曲だとも思った。俺に関する情報なんて、そこら中に転がってるからな。これってアートの戦争みたいなもんでさ、敵と味方の両方をよく知ってるほど、勝利の確率は高くなる。俺は、敵のことを全く知らないという状況の中でも最終的には勝つことができたけど、奴は俺について全て知ってたから、本来ならあっちのほうが有利だったはずなんだ。でも、俺のほうが上だった。どういうことか? 俺は、決して400万枚を売り上げる有名な奴、情報が世間に出回ってる奴を相手にしてたわけじゃない。例えばフレズノから出てきたばかりのルーキーが、Michael Jordanついてああだこうだ延々と言い続けるのに対して、Michaelはどう応えるか? ただコートの上で実力を見せつければいい。だから、俺的には全然気にならないよ。いいんじゃないの。 ――『G.O.A.T.: The Greatest Of All Time』というアルバムタイトルはどうやって思い付いたんですか? LL Cool J: ああ、それに関しては色々あったんだけどさ。前にも俺はラップ史上最強のラッパーだと言ったことがあったろ? 俺の頭の中にはずっとその言葉があったんだ。決して最近思い付いたことじゃない。俺が言わなきゃ誰が言う、ってね。ただ、それを証明しなきゃいかんな、と。今までの実績から見て、俺にはそう断言する権利があると思うよ。どこをどう見ても、他にそう言える奴はいないはずさ。俺はもう20年近くもこの世界にいるんだ。分かるだろ? 3時間で花火みたいにパッと咲いて消える奴らとは違う。自分でもいい仕事をしてると思うし、そう口にもしている。自分がそのことについてどう感じているか、世界中の人たちに分かってもらいたいのさ。ま、同意してもらえるかどうかはその人たち次第だけどね。 ――洋服ブランドのFubuにはどう関わっているのですか? LL Cool J: これもまた違った意味で楽しくてさ。俺はFubuが大好きなんだ。仕事とは関係なく、あそこの服を着てるよ。広告のためだけに人前で着て、家に帰るなり「あークソッ、Spandexの服持ってきてくれよ!」とかそんなんじゃ全然ないぜ。分かるだろ? 俺はあそこの服が心底好きだから着てるんだ。今じゃ俺の周りの奴らも皆Fubuを着るようになっちまった。2、3ヶ月ほど俺とつるんでりゃ、誰でもFubuを着るようになるってわけ。俺たちみんなFubuマニアなのさ。あそこの服は着心地がいいけど、確かに決して安くはない。デザイナーは俺んちの近所の出身で、めちゃくちゃ才能のある奴らだよ。まあ、洗濯機にぶち込めるようなもんではないね。服が縮むし、洗濯機も壊れちまうからさ。 ――あなたはGapのコマーシャルにも出演していましたよね。その体験について教えてください。 LL Cool J: Gapはめちゃくちゃクールだった。ホントにすげえクールな会社だよ。原点に立ち戻って小さな会社を手伝おうって決めたんだから。ま、そうすることで彼らも何か得られるって考えたんだろうな。その企画はとても上手くいったし、おかげでGapのキャンペーンにも弾みが付いて、その直後に彼らの株価が急上昇したのさ。最近はどうなってるか知らないけど、その時のGapの株の上がり方はマジで凄かったし、全てが上向きで、それがFubuにもいい影響を与えた。誰かと仕事をする時、俺は心底そいつのためを思ってやってるんだ。それに、俺は忠実だから、約束したら絶対に守る。もちろん決してパーフェクトじゃないけど、できるだけパーフェクトに近付くように努力してるつもりさ。とにかく俺はベストを尽くしてるし、Fubuを愛してるんだ。 ――あなたは夢を追いかけることについてよく語っていますが、ラップスターを志す人たちに何かアドヴァイスはありますか? LL Cool J: そうだなあ、ラッパーになりたいなら、その夢をとことん追っかけろってことかな。けど、「俺にはラップの才能があるのか? それとも全く無理なことにトライしてるのか?」と自問自答することも必要だぜ。誰かを落ち込ませるつもりはないけど、一旦やると決めたら何があっても夢に向かってかなきゃならないわけだから。 絶対諦めるな。粘り強く、強引に突き進め。Mark Giovelliは何て言ったと思う? 「運命の女神は女だ。力ずくでものにするほかない」だとさ。すぐに行動に移せ。そうすれば夢はお前らのもんだ。 |