【音楽と映画の密接な関係 2001 Special!】『D.O.A.』

ポスト
~

音楽と映像の密接な関係――。

パンク・シーンが生まれ出た'70年代ロンドン。
大きなうねりを作り上げたSEX PISTOLS、THE CLASH、GENERATION Xなどのバンド勢が一挙出演のドキュメンタリー映画。



『D.O.A.』

▲アメリカツアーのSEX PISTOLSのライヴ映像。得体の知れない大きなエネルギーを撒き散らしているバンドと、観客。
生き急ぐかのように、破滅へと向かっている様相も感じ取られる。

▲シド・ヴィシャス(SEX PISTOLSのベーシスト)と、その恋人ナンシー。ステージで見られるクールなシドの姿はなく、
始終どんよりと、夢と現実をさまよっている様子が伺える。
のち'78年10月12日にナンシーはホテルの浴槽で腹部を刺されて死亡。殺人容疑をかけられたシドは'79年2月2日にヘロインのオーヴァードーズで死亡。

『D.O.A.』(1981年アメリカ)

2001年2月23日(金)~3月15日(木)、
渋谷シネパレスにてレイトショー公開!
(午後9時より1日1回上映/日曜休映)
※モヒカンの方は当日大人料金1,800円のところ、1,200!!

●監督・製作:レック・コワルスキー
●撮影:ルーファス・スタンド・ファー
●出演:セックス・ピストルズ、クラッシュ、ジェネレーションXほか
●配給:ケイブルホーグ

上演時間:1時間39分

Special Thanx to www.cablehogue.co.jp

'70年代後半のロンドンで、“パンク”が生まれた。 …なぜ? ワタシは資料を読んで、勉強した。

この時代のロンドンは未曾有の経済不況。

そのため、街は失業者で溢れかえっていた。それに加えて、いまだ階級制度が根強いお国柄。労働階級層ばかりが一層苦しむ構造ができあがっていた。

これに反発するのは、やはり若者。

やり場のない怒りを誘発したのが、英国の象徴、QUEEN(エリザベス二世)を批判し、放送禁止用語を連発し、世間のダウナーな様子とは反対に、したい放題をメディアの前でガンガンやってのけたSEX PISTOLSが受けた、というわけだ。

昨年の初秋、ロンチ・ジャパンでも大体的に紹介した映画『NO FUTURE』('99年)が上映されたが、こちらがピストルズ、オンリーだったのに対し、『D.O.A.』はGENERATION X、THE CLASH、SHAM69など数々のバンドの映像を折りこませつつ、パンク・シーン全体を見据えている。

そして、一般社会の反応(ファンの賞賛の声もあれば、反対派の排除の声もある)も確実に押さえた映像が特徴できだろう。そういった時代を写す映像カットがザッピングされていて、当時のリアルな言動やファッションが堪能できる映画となっている。

が、やはり、大きな見どころのひとつは、ピストルズの最後となる全米ツアーの記録。

ジョニー・ロットン(Vo)にめがけて投げられるパイ、ベースで観客に容赦なく殴りかかるシド・ヴィシャス(B)。そして、金欲しさにこの映画の監督(レック・コワルスキー)に映像を撮らせるシドとその恋人ナンシー。

この2人の映像は、結構長いのだが、それゆえに観ている側が居た堪れなくなる。

薬物投与により数秒前に質問されたことが理解できないシド。それを献身的に(それでもかなりラリってる)ナンシー。なんと、最初ナンシーは2人のセックスシーンを撮らせるつもりだったらしい(監督が拒否し、インタヴューとなっている)。

お金欲しさ、…しかもドラッグを買うお金のために、自らスキャンダルを売りつけようとする。痛ましくもあり、命の炎が確実に消えかかってるシーンでもあった。

ゲリラ的に撮られたというこの映画。

一時的にせよ、パンクが、音楽が大きく社会へ影響をもたらしたという貴重な映像となっている。

文●星野まり子

この記事をポスト

この記事の関連情報