映画サントラ特集『ハイ・フィデリティ』

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音楽と映像の密接な関係――。

音楽オタクを自称するならば、この映画『ハイ・フィデリティ』をぜひ。

音楽ジャンキーで、30代独身男のロブ・ゴードンを演じるのは、ジョン・キューザック。『マルコヴィッチの穴』の好演が記憶に新しいところ。そんな彼は今回、主演はもちろん、製作、脚本、音楽監修も行なったことからも、力の入れようは尋常でなく、クオリティも保証済みといえるだろう。

愛ある皮肉、うんちく語り、お気に入りアーティストのお薦め、そしてアナログ盤の山……。

Bruce Springsteenやリサ・ボネットが登場するこの映画は、音楽オタクの愛すべき部分、情けない部分をうまく出した映画だ。



『ハイ・フィデリティ』

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ジョン・キューザックがシカゴの中古レコード店の店長、ロブに扮し、自らの失恋体験をカウントダウンしながら、ポップ/ロックと過ごした青春に立ち返ってみる。

社会人になると、知らず知らずのうちに音楽をはじめエンタテインメントというものを生活における二義的なものに追いやってしまう人が多い中で、ロブは好きなものに囲まれるのが商売…とはいえ、店員たちは頼りないし、彼女はほかの男に走り…と、悩みのタネは尽きない。

自分がフラれた訳にこだわりつつ、過去につきあった女たちを訪ねること、情けない男を自認することに、ちょっと喜びも感じてしまうような自己憐憫の甚だしいロブが、なんとなく憎めないのは、誰しもどこか身に覚えのある情けない部分を素直に外に出すキャラだからだろうか。

なにしろ劇中のかなりの時間がレコード店内で費やされるため、音楽もそれは重要なファクター。

大音量のKatrina And The Wavesと共に登場する、異様にアグレッシヴだが、意外性に満ちたおデブの店員。内向的に見えて頑固で気の遣い方のベクトルがちょっと違っていて、いかにも内臓の悪そうな店員。訃報を聞いても音楽と絡めようとする、不届きなやつらの会話の中にも、たとえばGreen DayがStiff Little Fingersに影響されているだのと、音楽関連のクスッと笑えるネタがふんだんに仕込まれている。

ほかにも、Captain Beefheart、Echo & The BunnymenThe Beta Band…と多様な名前がなんでもなく飛び出してくる。自分でテープを編集するにあたっての美学、レコード棚を整理するにあたっての楽しい苦労に、うんうんと頷いたり、ちょっと違うなと首をかしげたりするのも一興。

『Original Soundtrack High Fidelity』
Hollywood AVCW-13027
2,548(tax in)
2001年1月17日発売

キューザックは、代表作の一つ、『グリフターズ』の監督、スティーブン・フリアーズのもと、共同製作及び脚本にも名を連ねていて、相当、原作に惚れ込んだらしい。原作は英国の作家、ニック・ホーンビィで、これまでに『ぼくのプレミア・ライフ』が映画化されている。さらに現在、映画化の話があるという『About A Boy』という作品も、金と時間に不自由しない30代半ばの男と、12歳の少年の物語で、この『ハイ・フィデリティ』に負けず劣らず笑える小説なので、かなりお勧め。俳優さえハマれば、こうしたセリフ先導型映画の原動力になる作家だろう。

ティム・ロビンスやキャサリン・ゼタ・ジョーンズ、ジョンの姉、ジョーン・キューザック、リリ・テイラーなど、主役を張れる人たちが脇を固めて、灰汁の強い役をこなしている。ディテールを確認しに、二度、三度と観たくなる映画だ。

文●佐武加寿子

『ハイ・フィデリティ』(2000年アメリカ)
2001年3月3日より恵比寿ガーデンシネマにて公開!

監督:スティーブン・フリアーズ
原作:ニック・ホーンビィ(「ハイ・フィデリティ」新潮文庫)
音楽:ハワード・ショア
出演:ジョン・キューザック、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ、ティム・ロビンス、リサ・ボネットほか
配給:ブエナ ビスタ インターナショナル(ジャパン)
上映時間:1時間54分

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