バンド人生の中でも最高のギグ! 新メンバーを交えての来日は大盛況

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『Trinity Overture』

ディープ・パープルレインボーの昔から、日本ではクラシカルなメロディ展開を備えたハード・ロックが人気だ。

'70年代から受け継がれてきたそのサウンドは、俗に“様式美ハード・ロック/ヘヴィ・メタル”などと呼ばれ、'80年代に革命的な速弾きギタリストとして衝撃のデビューを飾ったイングヴェイ・マルムスティーンの登場により、さらに幅広いファン層を獲得することとなっていくのだが、その勢いは、'90年代を経た現在もとどまるところを知らない。

'99年2月にアルバム『アブストラクト・シンフォニー』でデビューを果たしたスウェーデン出身のこのマジェスティックも、そんなパープル&レインボーやイングヴェイの方法論をお手本とした様式美サウンドを身上とするグループで、クラシカルな美旋律をこれでもかと詰め込んだそのサウンドは、正に日本人好みの典型と言えるもの。

ただ、その手の様式美サウンドを武器にするバンドというと、大抵の場合、ギタリストがイニシアティヴを握っていることが多い中、彼等の場合はキーボーディストのリチャード・アンダーソンが主導権を握っているという点がなかなかユニークと言えよう。

しかも、メインのソングライターでもある彼は、何と、かつてイングヴェイ・マルムスティーンからその比類なき才能を認められてバンドに誘われ、オーディションにも見事合格したにもかかわらず、結果的にイングヴェイの申し出を断って自らのマジェスティックでの活動を優先させた…という驚くべき経歴の持ち主でもあるのだ。

マジェスティックの結成は'96年頃のこと。当初のラインナップは、リチャード・アンダーソン(Key)以下、ヨナス・ブルム(Vo)、ピーター・エスピノーザ(G)、マーティン・ウェザウスキー(B)、ユウェル・リンダー(Ds)という5人だったが、ファースト・アルバム『アブストラクト・シンフォニー』のリリース後にギタリストが交代し、さらには、ツアー終了後にシンガーとドラマーが相次いで脱退したことから、メンバーを一新。

今年6月に発表されたばかりのセカンド・アルバム『トリニティー・オーヴァーチュア』では、新たにアポロ・パパサナシオ(Vo)、マグナス・ノード(G)、ピーター・ウィルドアー(Ds)が加わり、文字通り新生となっての再スタートが切られたということになる。そんな彼等の初来日公演が、去る7月27日、原宿・アストロホールにて行なわれた。

東京公演1回のみのショウ・ケース・ギグということで、当日の会場は満員御礼状態。どうやら、関東以外の地方から駆けつけたファンも少なくなかったようだ。

リチャード曰く「スウェーデンは小さな国だから、腕の立つミュージシャンはすぐに噂となるんだ。おかげで、新しいメンバーを探すのはそんなに大変なことではなかったよ」というニュー・ラインナップのコンビネーションは上々だった。

ステージ運びに少々ぎこちなさも感じられたが、フル・スケールでのショウの経験がまだまだ少ないことを考えれば、1時間半に及んだ今回の公演は、彼等にとってひとつの挑戦とも言えたであろう。

また、熱狂的な反応の一方で演奏に終始ジックリと耳を傾け、同時によく歌うオーディエンスの姿に大いに感動させられ、ドラムスのピーターなんて「何度も泣きそうになった…!」のだそうだ。

さらには、シンガーのアポロが、歌いまくるオーディエンスへ何とも嬉しそうにマイクを向けていたのも印象的だった。

だって、完璧に歌詞を憶えてくれてるんだぜ!」と語るそのアポロの横では、「お前の書いた曲を皆が歌ってくれてる気分は最高だろ…!?」と、ベースのマーティンがリチャードの肩を叩いている。

ショウ翌日にもかかわらず、インタビューの席でもまだまだ興奮気味のマーティンは、「とにかく、これまでのバンド人生の中でも最高のギグだった!」とも語ってくれた。

とはいえ、楽曲そのものの素晴らしさは言うに及ばず、やはり、リチャード&マグナスによる壮絶なるプレイ・バトルこそが、マジェスティックのショウの中で大きなウェイトを占めていたということは言うまでもないであろう。

特に注目すべきは、まだ若干20歳というマグナスのジョン・ペトルーシ(ドリーム・シアター)的でもあるアラン・ホールズワース直系のギター・ワークだ。どちらかというと、ジャジーな雰囲気に包まれた彼のプレイは、飽くまでクラシカルな方向性を貫くリチャードのキーボード・ワークとのコンビネーションも実にいい。

マグナスのホールズワーズっぽいギター・スタイルは、まさに俺が望んでいたものだった。だって、2人でクラシカルなことをやってもつまらないだろ? イングヴェイ&イェンス・ヨハンセン的な…いかにものソロ・バトルはもう沢山だよ(笑)」(リチャード)

ステレオタイプな様式美メタルの方法論を踏襲したくないという姿勢は、2代目シンガーの選考時にも考慮されたのだという。

とにかく、ハイ・トーンで歌い上げるタイプのシンガーは絶対に避けたかった」と言うリチャードは、アポロのスタイルが「ロニー・ジェイムズ・ディオデイヴィッド・カヴァーデイルジョー・リン・ターナーなんかに通じる」ことも強調していた。

個人的には、カヴァーデイル風のブルージーな唱法こそアポロの持ち味だと思うのだが、そのソウルフルな熱唱は、マジェスティックの金看板である疾走様式美チューンよりも、むしろ「レザレクション」(『トリニティー・オーヴァーチュア』収録)のようなタイプの楽曲でより活きてくるのではないだろうか。

そういえば、ドラムスのピーターもダーケインというメロディック・デス・メタル・バンドをマジェスティックと同時進行させており、そう考えると、マジェスティックの現ラインナップが決してコテコテの様式美をやるためだけに集められたものではないことが窺えて面白い。

デス・メタルもメロディック・メタルも同じロックン・ロールなんだからね。特にライヴのエネルギーはどっちも変わりはないよ!」(ピーター)

ちなみに、全ての作曲を手掛けるリチャードは、マジェスティックの音楽がイングヴェイ・タイプの様式美メタルと言われることに関しては、全く気にしていないのだという。

むしろ、「そう思われるのは光栄だね。イングヴェイの他にはシンフォニー・エックスに似ているとも言われるんだけど、それって、俺にとっては褒め言葉だよ。まぁ…モトリー・クルーに似てるなんて言われたら怒っちゃうけど!(笑)」とのこと。そして、それぞれに異なったルーツを持った5人のメンバーそれぞれが、一様にイングヴェイのことをヒーロー視しているということも付け加えておこう。特に、ピーターの心酔振りは「イングヴェイはスウェーデンでは文字通りのスターだけど、俺にとって彼は“神”なんだ!」と凄まじいばかりだった。

日本を経ったあとは、スウェーデン本国とデンマークで数回のショウを行なう彼等…、リチャードによれば、「11月からシンフォニー・エックスと日本のコンチェルト・ムーンと一緒にツアーする予定なんだ。ドイツ、ベルギー、フランスの他、大々的にヨーロッパを廻るフル・スケールのツアーになるよ」とのことなので、次に日本のオーディエンスの前に姿を現わす時までには、さらにライヴ・バンドとしての経験を積んできてくれることだろう。

では最後に、バンドを代表してリチャードとマーティンからメッセージを!

初めて日本のファンの前でプレイ出来て嬉しかった。本当にありがとう。サード・アルバムは来年になると思うけど、是非また会おう!」(リチャード)

日本は最高だったよ! Stay Metal !!!!」(マーティン)

by 奥村裕司/Yuzi Okumura

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