【インタビュー】DEZERT、武道館初ワンマンを振り返り2025年の新たな覚悟を語る「自分の強さを信じる。バンドの強さを信じる」

■最後に4人で肩を組んだところですかね
■このバンドでは絶対できないと思ってたので
──武道館の1日を振り返ったときに、まず頭に浮かぶ景色はどんなものですか? 客席とか、あの曲を演奏している瞬間とか、いろいろあると思うんですけど。
Miyako:3曲目とか4曲目だったかな。ギターを持ち替えるときに、ギターテックのキャプテンに「すごく気持ちいいね」と言ったんですよ。そのときのことですね。
SORA:そんなことあったんだ?
Miyako:うん。まあでもやっぱり、そう思えたのは客席からのパワーがあったからで。一番はお客さんかもしれないですね。
Sacchan:僕は映像を観たからっていうのもありますけど、ド頭ですね。SEが流れてメンバーが出てきて、1曲目で火がボワー!ってなった瞬間の映像を観たときに、“やっぱりこのキャパ感のライヴってすごく非現実的だな”と思ったというか。非現実的なのはいつもそうなんですけど、さらにいいなと思いました。演奏してる側としては目の前で火が出てるだけなんで、“熱い!”っていうぐらいでしたけど(笑)。その場面が僕の中ではかなり印象が強い気がします。


──SORAさんは?
SORA:最後に4人で肩を組んだところですかね。このバンドではそういうこと絶対にできないと思っていたので。たしか以前、インタビューで言ったことがあるんですよ、「ハイタッチしたり、肩組んだりなんて、たぶんできないバンドですね」みたいなことを。
──DEZERTのイメージにはない光景だったかもしれない。
SORA:でも、時間が経って、目標のためにメンバーと真剣に向き合って、武道館でああいうことができて。その映像を僕自身が編集した「オーディナリー」のリリックビデオにも入れられたのは嬉しかったです。僕はそこかな。ファンを置いてきぼりにして申し訳ないですけど。
──むしろあの瞬間、多くのファンが感動したと思います。
SORA:「オーディナリー」を編集したから、より分かったんですけど、そのときのファンもめっちゃいい表情をしてて。“すごく素敵だね、バンドやっててよかったね”って、自分に対して思いました。
──「肩組みたい!」「写真撮りたい!」とステージ上で言ったのは千秋さんでしたよね。
SORA:舞台袖のマネージャーから「写真を撮って!」とずっと言われていたんですよ。だけど、予定より時間が押してたのに、ステージ上でみんながしゃべり出しちゃってたから、“今日は写真撮れないだろうな。まぁそれもDEZERTっぽいか”と思ってて。だから、千秋には「写真」ってあえて伝えなかったんですよ。で、アンコールラストの「「切断」」をやってるときに、“本当に写真撮れなかったな”と思ってたら、千秋が「写真撮りたい!」と言ったから、よかったーと。その時に舞台袖を見たら、制作の一番偉い人もマネージャーもずっと手をぐるぐる回して、巻きの合図を出しまくってて。
千秋:ははははは!
SORA:それでも許してくれてるスタッフを見て、“愛されてるな”と思いました(笑)。

▲Sacchan (B)
──千秋さんとしては、今までやってこなかったけど、あの日はやってもいいかと思えたんですかね、肩を組むというのは。
千秋:まぁ、一応目標にしていた全国大会に出られたから、それぐらいの思い出はあったほうがいいのかなと。ファンの子も初めて見たと思う。でもまぁ、次はどうかな。
──毎回やるわけではないっていう。千秋さんはどの場面を思い出しますか?
千秋:僕はステージに出る直前ですね。舞台袖にスタッフのみんながいて。その中には、せっかくいい関係を築けたのに、あの日で離れるスタッフもいたんです。でもまぁ、ここまで、風邪も引かずにインフルエンザにもかからず、悪いこともせず捕まらず、もう行くしかないってなったときに、なんかちょっとホッとしたんですよ。今思い返したらそのときの光景が出てきた。
──節目を迎えた方もいたというスタッフの方々への感謝も大きかったんでしょうか。
千秋:舞台袖からお客さんが入っている客席も見えてたから、“みんな来てくれたんだ”っていうのも含めてですけどね。あまりないんですよ、ライヴ前が印象に残ることって。そこはまぁ、あの場所がそうしてくれたんじゃないですかね。


──そういう場所でもあった日本武道館公演の衣装は、4人とも鮮烈な赤でした。
千秋:他に選択肢がなかったんですよね。黒でもないし、白でもないなと。僕としては「街中では着れないものを着たい」ということはずっと言ってて。武道館に関しては、スタイリッシュなものはダメだと。
──つまり、これまでのイメージとは違うものとか、観る人の印象に残るものとか?
千秋:この13年間の重みを僕は知っているので、13年を総括した衣装を着たかったんですよ。今までスーツとか布とかいろいろな衣装を着てきましたけど、武道館はやっぱり、晴れの舞台であって。晴れ舞台=結婚式みたいな感じを持ってたから、僕としては花嫁姿のイメージがあって。でも、白は選択肢になかったんですよね。白って一見美しいですけど、逆に何もないように見えちゃうんですよ。で、シンプルに赤が好きだし、燃え滾ってるんだから赤だろみたいな。深層心理じゃないですけど、めっちゃ気合い入ってるときって赤なんですよ。調子がいいときは赤。そういう感じですかね。
──当日の会場には、活動初期からのファンも、現事務所に所属後のアルバム『TODAY』以降のファンも、混在していたと思うんです。そのどちらのファンも大満足のライヴとなった大きな要因は、新旧を巧みに取り混ぜたセットリストの妙もあったと思いますが。
Sacchan:いつもは千秋君がセットリストのベースを作ってくるんですけど、今回の武道館に関しては、その上で話し合いましたね。
──「13年の総括」という言葉もありましたが、過去と現在を踏まえたドラマをセットリストに投影しつつ?
千秋:もちろん。DEZERTは「過去も今も未来も連れていく」と言ってるじゃないですか。これはどのライヴでも同じなんですけど、過去曲を入れて喜んでもらおうというよりは、僕が納得したいからやるっていう感じでセットリストの流れを考えるんです。つまり、“13年間”のカッコいいことをしよう。これが俺のカルマだなってものを。
──たとえば、キーポイントとなる曲を据えて、そこを土台に構築してくようなことは?
千秋:作品のリリースツアーはそうなりますよね、それって今を見せるものだから。だけど、これからも大きな会場でもやっていくことになると思うけど、そのときには絶対に過去の曲も入れる。というのは、曲じゃなくて、過去も否定しないから。ただ、否定したほうがいいのであれば、否定するんですけど。でね、今回の武道館で、僕がどうしてもやりたかった昔の曲があって、その曲で一番言いたかった歌詞が出てこなかったっていう珍事が起きたんですよ。

▲SORA (Dr)
──珍事かどうかは別として、一番言いたかった歌詞とは?
千秋:「さぁミルクを飲みましょう。」という曲なんですけど、 “いつか心の底からキレイ事をいえる力をください”って歌詞があって。俺、“これを歌うならここしかねぇだろ。武道館でキレイ事を言う。絶対にここしかない!”と思っていたんですよ。そうしたら、歌詞が飛んだんです(笑)。
──曲に入り込みすぎた?
千秋:いや分からない。尺も間違えていたらしくて、それに乗じてSORAくんも間違えそうになったり。逆に言えば、これもドラマだったんですよね。俺はこの歌詞が言いたくて仕方なかったから、「誰がなんと言おうと、「さぁミルクを飲みましょう。」だけは絶対にやるから」ってずっと言ってたもんね?
Miyako:うん、言ってた。
千秋:メンバーもみんな「いいじゃん」と言ってくれて。でも歌詞が飛んじゃったんで、悔しかったです。結局最後、アウトロで言うんですけど。
──弾き語りで、フリーな感じでした。
千秋:歌詞通りに歌おうとは思ってなくて。“武道館に立ってこの曲をやったら自分はどう思うのか”というのを大事にしたくて、事前に決めずに当日思ったことを歌おうと思っていたんですけど…。
──自分がなんて歌うのかを楽しみにしていたと。
千秋:そう。“俺はまだキレイ事をいえる力がほしいのか?”って自分に問うていたんですけど、問うた挙句…(笑)。
──でも、逆にあのアウトロがよかったんです。“キレイ事を 君と 今日は歌いたいな”っていう一節にグっときました。
千秋:俺はもう“マジか…”って思ってましたけどね。あれはまたリベンジしないといけない。