【対談】Waive × ν[NEU]が語る、バンドを終わらせるということ「自分たちの棺桶に自分で花を入れている」
■やっぱり終わりが近いヤツは覚悟が決まっとる
■本当は言いたくないけど、僕は彷徨っていて
ヒィロ:善徳さんの「0を1にして、あとはみんなに任せた」というお話を聴いて思ったことがあるんですけど。ν[NEU]も基本的に僕が考えたものをみんなと一緒にブラッシュアップしていくバンドなんです。だけど、解散に向けてもっとブワーッ!と燃え上がるんだろうなと思っていたら、意外と違ってて。Waiveさんとの対バンを発表して、残り2ヶ月、自分の火がどんどん消えていっているんですよ。たぶん渋公の時にはもう消えてるんじゃないかな。
田澤:その時はまだ燃えとかないと(笑)。
ヒィロ:初めは渋公をソールドアウトさせることがメンバー全員の目標だったし、でも、いろいろな施策をやっていく中で、キャパオーバーになってしまっているメンバーもいて……僕たちは復活バンドでありマイナスからのスタートだと思うからこそ、相当頑張らないとすぐに価値はなくなってしまうと思うんです。だからこそ「やりたくないこともやらないと結果は出ないし、ファンの子たちに熱は伝わらないよ」とか言う場面もありました。けど、残り3ヶ月ぐらいになったぐらいから、“もう嫌われたくないな”みたいな気持ちになってきまして。そうなった時に俺、渋公ソールドアウトを諦めてしまったんです。
田澤:大事なものが変わった、みたいな感じなんですかね?
ヒィロ:“もっとやりたいこともいっぱいあるけど、メンバーに嫌われるならやらなくていいや”みたいな。一度解散したバンドだからこそ、もうν[NEU]を壊したくない、というのが素直な気持ちで、 “メンバー全員もう充分頑張ったじゃん”と思うようになりました。
mitsu:さっき“終わる覚悟”の話をしましたけど、それは今ヒィロが言ったことをすごく感じてたからなんです。ヒィロが「ああしよう」「こうしよう」とあれこれ言ってきたのをいろいろ見てきた中で、“あ、今自分は自分たちの棺桶に自分で花を入れている”と気付いたというか、そういうことをしているってことが分かってきた。で、もう棺桶に入ろうとしていることも見えてきているので、ヒィロがあれこれ言わなくなってきていることも理解できる。ヒィロに「言わないの?」って俺から訊いたこともあるんですよ。それはメンバーの誰がどうとかじゃなくて、バンド全体としての話で。言い方が合っているか分からないですけど、これが“自分から息を引き取ろうとしている。ロウソクの火を消し切ろうとしている”ということなのかと。途中で消えるんじゃなくて、ちゃんと終わるようにロウソクが消え切ることを計算しているというか。その物語の階段を自分で計っているんだなと。ここが、自分とヒィロとでは圧倒的に違うところなんですよ。善徳さんの話を聞いてても、“ヒィロの話を聴いてるみたいだな”と思ったんです。と同時に、自分はもう客観を捨てて主観だけに生きているので、違うんですね。
田澤:それも振り切ってるな。すごいな。
mitsu:極論を言ったら1万人が「いい」と言ってくれても、俺が良くなかったらクソだと思ってるし、そうしたくなったんです。それを整えてくれているのがヒィロであり、ν[NEU]はそういうバンドなんです。自分はソロでやりたいことをやっている。ν[NEU]という船はヒィロが作って、直し続けてきた物語だから、それを最後まで走らせるための熱量は自分から注いでいこうという感覚です。これも役目の一つだなと思ってます。4人が同じところを見ているだけでもダメだし。だから、善徳さんのWaiveさんの話を聴いて、“あ、上手くみんなの立ち位置があるんだな”と感じたし、ν[NEU]もそうなんだなと気付けました。ν[NEU]が残り2ヶ月という中で、この話を聴けて良かったなと思います。言語化できていなかったので。
──では、12月12日の対バンに向けて、意気込みを聴かせてください。
ヒィロ:ワンマンツアーが1本終わるごとに、9月ぐらいから毎回“情緒不安定か?”と思うぐらいライヴの内容や伝えることが変わっていってるんですよ。僕自身、12月12日はどうなってるか分からない。“果たしてステージにいるのだろうか?”みたいな(笑)。
田澤:そこはおれや(笑)!
ヒィロ:あはは! 先が読めない状態なんです。ただ、せっかくやらせていただくからには…やっぱり僕はν[NEU]というバンドを完成させるために今やっているので。完成する直前のライヴで挑ませていただくことができると思ってます。
mitsu:元々ν[NEU]を終わらせる理由に、“ヒィロが引退を決めた”というのがありまして。その決断に対して自分は、“よく決めたね”と思ってるんです。それは本人にも「じゃあ最後の花、一輪を俺が入れるから」って伝えてて。“いい形で見送り出す役目は俺でしょ?”という感覚がすごく強いんです。さっきも言ったように、ヒィロはν[NEU]という船を作った人であり、ずっと守ってきた人であり、自分は「ヒィロが始めた物語でしょ」ってよく言うんですね。その一方で、自分はどうしても音楽を、歌をやめることをまだ選べない。だから、どこかでソロとバンドが同時並行で、歌は1本だと思っているんですけど、二つに別れてないというか。終わっていかない側にいるので、いい扉の閉め方をしてあげたいという感覚のほうが、ν[NEU]に関しては強いんですね。他人行儀に聞こえるかもしれないですけど、そうじゃなくて。余命がある、あと何回かのν[NEU]で、それまで自分がどれだけレベルアップできるかだけ。それ以外の回り道はできないなと思っています。
──終わりを決めた者だけが持つ、覚悟ですね。
mitsu:自分はずっと前から勝手に「ヴォーカリストとして田澤さんが一番カッコいい歌を歌ってるんだ」って言っているんです。対バンでは上下とかなく、もちろん胸を借りる挑戦者にはなりますけど、あくまで対バンなので真っ向からWaiveさんに対して失礼がない形で挑みます。そうじゃないとイベントが素敵なものにならないと思うから。今はとにかく少しでもいい歌を歌えるようにって毎回思いながら過ごしていますね。あとは、ν[NEU]はWaiveさんよりも先に終わるので、ずっと背中を見てきた側の自分たちが初めて「先に行きます!」って言える日になったらいいなと思います。Waiveさんもあと1年後に、たぶん感じ方とかが変わってくると思うので、そのうちのピースの一個を自分たちが作れたらいいなという気持ちになってます。Waiveさんからもらったものがいっぱいあるので。
田澤:あともう2時間ぐらい、しゃべっていたいんですけどね、話してて訊きたいことがいっぱいできたから(笑)。お互いにすごいタイミングでご一緒させてもらうんだな、という実感が強く湧きました。だから当日はしっかり対バンします。mitsuくんもそう言ってくれたし、変に先輩面もしないですし。「すみません、全力で殴り合いましょう」みたいな。遠慮なく、自分ができる全部を置いていこうと思いました。
▲杉本善徳(G / Waive)
──最後に杉本さん、お願いできますか。
杉本:この流れで締めるの、むずいな~。でも、ちょっと面食らったな、というのは正直ある。“やっぱり終わりが近いヤツは覚悟決まっとるわ”と思いました。僕は覚悟が決まっていないし、迷子になっているなと思っているから。
──Waiveの活動に関してですか?
杉本:Waiveも、自分自身もそうかもしれない。もう分かんないな。例えばここから先が僕らには1年あるんだとして、1年って短いわけですよ。1年先のスケジュールは見えるけど、感情は全く読めていなくて。とにかく気持ちも思考もブレてる……とは本当は言いたくないけど、彷徨っているので。だって、生きていて“こんな日が来る”と思ったことないですもん。mitsuが言う「ヒィロの物語でしょ」というのは、僕からしたら“いや、彼の物語でもあるし、全員に物語はあるじゃん”と思う。だけど、たしかに第三者から見たら“Waiveは僕の物語なのかもな”と思う瞬間はかなりある。ただ、“『ドラゴンボール』は鳥山明の物語じゃなくて主人公は孫悟空だし”みたいに思う瞬間がどうしてもあって。ふと“俺、作者だし”となって、ボーッとしてしまう。今のことなのか、過去のことを思い出しているのか、未来を想像しているのかも、もう分からなくなってきているから。
──自分のつくった物語が手を離れて動いていっているという感覚ですかね。
杉本:これだけ長くやっていると、“何のためにやってたんだっけ?”が分からなくなってくるんですよ。逆に言うと、“みんなこうなるで、数年後に”と思ってるんです。唯一ならない可能性があるとしたら彼(ヒィロ)で。彼にはフォーカスが合ってるものがあるから。二人(mitsuと田澤)は歌い続けるというフォーカスは持ってるかもしれないけど、“何を歌うんだ?”とか“どう歌うんだ?”とか、年齢とかファン層と共に変わっていくわけで、その武器の上でどう生きていくかは、やっぱり揺れる気がするんですよ。僕は「Waiveって“揺れる”という言葉を一つのテーマにしてる」とずっと言い続けているけど、それは“揺らぎこそが人生でしょ”と思っているから。ヒィロはヒィロで“やめる”ってところにフォーカスが合ってるのかもしれないけど、もう一つの仕事の中で、きっと我々には見えない…違う種類なだけで、同じく揺れていくんだと思う。グワングワン揺れているところで、病気のように生きていくのが我々であって、もうとっくにパンチドランカーなんですよ。“俺には言語化できない次元に来てしまった”と思いながら、“ミュージシャン杉本善徳”というものに対して、誰か最後の花を添えてくれ、みたいな気持ちで生きてしまっている。
mitsu:こんな話を聴いたら、余計いろいろと訊きたくなりますね。
──対談第二弾を…。
ヒィロ:第二弾の時は、俺らもうν[NEU]としてはいないんですけど(笑)。
杉本:いやいや、我々が終わる直前ぐらいに、 “次のν[NEU]”がまたやってるんですよ!
──ν[NEU] IIですかね(笑)。
mitsu&ヒィロ:いやいやいや(笑)。
取材・文◎大前多恵
■ν[NEU] × Waiveツーマンライブ<-光跡->
2024年12月12日(木) 神奈川・SUPERNOVA KAWASAKI
open18:30 / start19:00
出演者: ν[NEU]/Waive
▼チケット
前売:¥6,800-(税込 / ドリンク代別)
詳細:https://l-tike.com/neu-waive/
(問)DISK GARAGE:https://info.diskgarage.com
■ν[NEU]<since2009〜2025 ν[NEU] FINAL LIVE『エンドロール〜誰よりも大事な君へ〜』>
2025年1月4日(土) 東京・渋谷公会堂(LINE CUBE SHIBUYA)
open17:15 / start18:00
▼チケット
前売¥5,800
※全指定席
詳細:https://l-tike.com/neu/
■Waiveセルフカバーベストアルバム第1弾『BLUE ALBUM』
発売元:鉄ぱいぷレーベル 販売元:Daiki Sound
【初回限定盤(12曲入りCD)】
WVCD-20242 6,800円(税別) / 7,480円(税込)
・スリーヴケース
・アクリルスタンド
・Mカード:いつか~Piano instrumental~
【通常盤(12曲入りCD)】
WVCD-20241 3,200円(税別) / 3,520円(税込)
▲初回限定盤
▲通常盤
▼CD収録曲
01. TRUE×××
02. 銀河鉄道
03. ガーリッシュマインド
04. Blood vessel
05. そっと...
06. Dear
07. ASIAN「noir」GENERATION
08. infection
09. FAKE
10. ネガポジ (Negative & Positive)
11. いつか
12. C.
●アルバム購入特典
・タワーレコード(オンライン含む)オリジナル特典
映像特典A(DVD-R):ライブ定点映像1曲(A)+おまけ映像(A)
https://tower.jp/item/6608000
・HMV(オンライン含む)オリジナル特典
映像特典B(DVD-R):ライブ定点映像1曲(B)+おまけ映像(B)
https://www.hmv.co.jp/artist_Waive_000000000166273/item_BLUE-ALBUM_15351995
・anysee.jp オリジナル特典
映像特典C(DVD-R):ライブ定点映像1曲(C)+おまけ映像(C)
https://anysee.jp/ec/item/cd-item/19255/
詳細:https://www.waivewaive.com/?p=7920
■<Waive最終公演>
2026年1月4日(日) 東京・日本武道館
※詳細は順次発表
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