【対談】Waive × ν[NEU]が語る、バンドを終わらせるということ「自分たちの棺桶に自分で花を入れている」

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■終わりを決めて何かをすることが初めて
■自分としても未知数なので、探しながら


──Waiveの復活と解散への道筋を参考にしているν[NEU]のヴィジョンとは?

mitsu:ν[NEU]はヒィロがつくったバンドで、自分も加入メンバーなので、 それ以前の歴史が結構あって。なので「ヒィロの好きにやれば?」というのは伝えていたんです。自分はその時に一番カッコ良くするというだけで、乗っかるという感じが強い。なので、ヒィロが博士というか作る人だとしたら、自分はその代わり頑張って乗る人というか。

ヒィロ:僕がWaiveさんと同世代のバンドを組んでいたら、たぶん嫉妬すると思ったんです。“いきなりバン!って復活して、動員あるし、なんかムカつく”みたいな。何だかんだ言って僕、中二病なので(笑)、“そう思われる復活バンドっていいな”と思って参考にしました。ν[NEU]は2023年7月から1年半、「ちゃんとこの期間で終わります」と言って活動していますけど、その期間は同世代の中で……あくまで自分の基準ですけど、僕らはかなり夢を追っているほうだと思うんですよ。

mitsu:この、周りを下げる発言が中二病なんです(一同笑)。

ヒィロ:バンドを維持するのに必死で、夢がなくなっている人たちが増えているように見えて。でもν[NEU]というバンドは純粋に夢を追い掛けている。僕自身がそういうことを俯瞰して見た時に、嫉妬したくなるようなバンドにしたいと思ったんですよ。最後の1年半で、“こいつら、これまで何もしてなかったくせに、取材だの、テレビ出演だの、メジャーデビューだの、サンシャイン広場や渋公だのって、ふざけんな!”みたいな。“どうやったら自分自身が嫉妬するかな?”と考えてプランを組みました。年齢と共に夢を諦める人が増えている中で、守らなきゃいけない、動員しなきゃいけない、繋ぎ止めなきゃいけない、というところに必死になる気持ちはわかるけど。結果、“稼がなきゃ”とかいう方向へ行ってしまい、元々やろうとした何かを忘れ掛けているところに、ν[NEU]という爆弾をぶち込んでやろうかな、と一発夢見てみたかったんです。

田澤:昨今のこのシーンに、かなり憤りを感じてるらしい(笑)。でも分かる。

杉本:めちゃくちゃ分かるよ。

mitsu:ヒィロは引退するので言い逃げできるから(笑)。自分は周りに対するアンチはなかったですけど(笑)、ヒィロと話していたのは「ただ守るだけはダサいよね。だったら解散しなきゃ良かったやんってことだから。何も守るものもない俺らが攻めなかったら誰が攻めるの?」って。

ヒィロ:伝説になりたいんですよ。

mitsu:これが一番ダサい発言です(笑)。自分たちで言わなくないですか?

田澤&杉本:はははは。


▲ヒィロ (B / ν[NEU])

ヒィロ:“ν[NEU]みたいな復活だったら、もう一度やってもいいよ”ってバンドマンから思われるようになりたいし、バンギャルからも“ν[NEU]みたいな復活だったら、もう一度やってほしい”と思われたい。僕らはWaiveさんを見てこうなったので、今度は僕ら、バンギャルとバンドマンの両方から“ν[NEU]みたいな復活っていいな”と思ってもらいたいんです。今回対バンのタイトルを<光跡>と付けたのも、今、目に見えている星の光は何万年前の光だったりするので、そういう意味を込めていて。Waiveさんが放った光を僕らが見て、僕らが今度は光って、その次にバトンを繋げたい。そのためにはやっぱり伝説を作らなきゃいけない。僕の中でWaiveさんは伝説の復活バンドなので、僕らもその意思を継いで伝説になるっていう。

杉本:僕も違った意味の中二病を持っているから、似た感覚はあって。Waiveを好きなファンの人たちは、Waiveがマイナーだから「Waive好きなんだよね」とか言えない人もいるんだろうなと、ずっと勝手に思っているんですよ。少しでも「Waiveっていいんだよ」と言い易くするためには、ポピュラーな何かを付けないとダメなので。それには「Waive、武道館やるんだよね」だったら言えるんじゃないの?というのはあるんです。

──誰もが知る聖地ですからね。

杉本:人数というよりも、今までにWaiveを知った人たちが、堂々とWaiveのことを言える状況を作りたかったんですよ。最近知った人もいるんだろうけど、やっぱり25年間を知っている人もいるわけで。長い短いに関係なく、その人にとっての貴重な時間を使ってもらったのに、“好きなものを好きって言わせられないってどういうこと?”みたいなのがある。自分もそう。24年もやったバンドを「俺、Waiveってバンドをやってたんですよ」とは言えない瞬間って多々ある。自己紹介して、「何てバンドやってるの?」って聞かれて「いやいや、名前を言っても知らないんで」となってしまう自分が嫌だった。自分が言えるようになったら、周りも言える日が来ているはずだなって思う。そのためには、今の光の話と似ているかもしれないけど、燦然と輝くものを一個ずつ持っていくしかない。そういう光る冠みたいなものって、だいたいが人から与えられるものだったりするから、無冠の僕には縁遠いものなんだけど、それでも会場ってのは自主的に決められるものだなと思ったんです。「武道館やるねん」と言った途端に、こうやって周りの人たちがいろいろと言ってくれるようになっていく。それぐらい武道館って光っちゃってるんですよね。自分たちが言葉にしないと、「それ面白いな」と言って周りの人も話に乗ってきてくれない。他力本願かもしれないけど、「Waiveが武道館をやる」と言っても、自分の力だけで成功させられるとは1ミリも思っていないんです。

──それはどういう意味ですか?

杉本:メンバーに「Waiveを解散させようぜ。武道館やろうぜ」と言った時から、正直1%さえも思ってない。ただ、「Waiveで武道館やろうぜ」という、0を1にするようなスタートの意見を出すことは僕にしかできなかったと思う。そこに対して周りの人たちが「おもろいな」って乗っかってくれるプロジェクトになっていくかどうか、その時に成功するかどうかが決まるだけで。 僕はそのフラグを立てたところで1ターン目の出番終了というか。そもそも自分の曲だけが武道館にWaiveを連れていくとは思ってない。それができるんだったらたぶんとっくにやっているんですよ。

──良い曲を書きつつ、周りの人を巻き込みながらムーブメントを増幅させていく、という作戦ですね。

杉本:そういう引力を自分たちが無理矢理でも持たない限り、みんな離れていくと思う。 そこにはキャッチーな言葉が必要なんですよね。それがあれば潜在能力に対して引力が増す可能性はある。その時に唯一“信じていいかな?”と思ったのが、ポテンシャルで。Waiveの楽曲や演奏や歌唱であったり、数字であったり。それは0ではないって信じていたいし、信じたからこそ、長い時間やってきたんだろうなと思うので。このポテンシャルのこのバンドが、「こういうプロジェクトをやる」と言ったら周りが何とかしようと思ってくれるっしょ?というところに、僕は賭けた。


▲Waive

──田澤さんはいかがですか? 圧倒的な歌唱力を誇り、様々なプロジェクトでヴォーカリストとして活動もされているわけですが、Waiveというバンドにおいて、2025年末までの活動期間で果たすべき役割や担うものは何だとお考えですか?

田澤:さっきmitsuくんが言ったような「この日に終わろうね」と決めて何かをするということが初めてなもので。「やめたい」という(2005年の解散の引き金となる)意思表示はしたものの、今回のように、解散するという合意のもと、「最後の日に向かって俺たち、燃え尽きようね」と言って肩組んで走り出すみたいなことをしたことがないので。ちょっとどうしようかな?と思ってます。

──迷い中ですか?

田澤:迷ってるのかな? 模索してるのかな……“どうあればいいだろう?”みたいな。根底にあるスタンスは変わらないんですよ。言葉にすると簡単で、“全てにおいて全力を賭します”だから。なので、“在りし日の”と散々言いましたけど、それはやめました。“再結成します。最後まで駆け抜けましょう”と決めた時から、“在りし日を再現する。それを頑なに守る”ということをやめたんです。全くやらないということではなくて、あくまでも“もう一度走り出したバンド”という解釈でWaiveをやることにしたので。だから、明確に“こうしようみたいなのが今あるか?”というと、正直見えておらず、です。

──なるほど。

田澤:再録のセルフカバーアルバム『BLUE ALBUM』が11月27日にリリースされて、きっとこの後に新曲ができていくでしょうし、『RED ALBUM』も録ります。その最中に、きっとまたライヴ活動も行うでしょうし、いろいろな活動をしていく。そんな中での現在進行形ですよね。他のプロジェクトとそこはあまり変わらん。新しいプロジェクトをたくさんやったことで、改めて“Waiveってこうだったんだよな”みたいなものが見えてきたこともあるし。そこに対して、“これから走り出しましょう”みたいな機動力を持って臨んだらどうなるのかが、自分としても未知数なので。そこを探しながらです。でも善徳くんが掲げている美学みたいなのは、俺、やっぱりあまりないんですよ。どっちかというとmitsuくんと同じで、筋肉派ではあると思うので。

mitsu:また違う形の中二病ですね(笑)。

田澤:そう。だから“自分の全力を賭して、あなたの表現したいことを僕はやらせていただきます”みたいな感覚ではある。足りないものは補わなければいけないし、それだけじゃダメだと思ってはいますが、“僕は身体を使います!”みたいなタイプではあるので。


杉本:ある程度の長さを続けたバンドは、たぶんどのバンドも“いい”と思ってやったはずじゃないですか。Waiveのライヴが終わった後に、“もっと広い会場でこの曲をやってたほうが似合うのにな~”って帰りの車の中で一人、僕は思っていて。マジョリティだとは微塵も思っていないけれど、マイノリティなりにハートを掴めると思って、“いい”と思ってやってるのに。時代やスタッフワークのせいにするのは簡単なことだけど、たぶんそこが主たる理由じゃない。でも何かが足りていないのは、結果として出ている数字が証明してくるんです。そんなことも思わされるのがライヴやセールスにはある。その都度“俺の感覚って世間からズレてんねんな”と打ちのめされそうな気持ちになる。だけど、“いや、俺の感覚、やっぱ正しかったやん”と思いたくてやってるんですよ。自分を信じ抜きたいから、それにはやっぱり数字を付けるしかないんですよね。「ほら!」って言う日がほしい。

──客観的な証拠が必要だ、と。

杉本:メンバーやスタッフもそうだし、僕はやっぱり一番にファンの人たちにそう思ってほしい。“25年も掛かってしまったかもしれないけど、正しかったやん? スロースターターやったけどな”って、一人でも多くの人間と言い合いたい。だから、“解散という力”を使ったかもしれないよね。武道館に集まった人たちとそのまま武道館で「乾杯!」って打ち上げするのもいいな。『日本武道館物語』とか『ROAD TO 武道館』みたいな物語の表紙までは僕が描いたから、“この先はもう皆さんが好き勝手に書いてください”って。ファンの人にも一文字ずつ寄せ書きしてもらったら、気付いたらおもろいもんが出来上がってるかもしれない。だって25年もやったわけだから、いろんな人に触れてもらったはず。ファンの人にもそれぞれ想いの深さがあったり、長い人には当然の、そして途中から入ったからこそ違うエッセンスを入れられたりもするだろうし。“面白い物語になってくれよ。でも最後の一文だけは俺に書かしてや”と思ってる。

──あとがきを書く権利はきっと、杉本さんにありますよね。

杉本:そう。“始めたの俺だもん”とは思っているから。ν[NEU]が「Waiveの復活のエピソードを追っ掛けてきた」と言ってくれたけど、変な話、ν[NEU]が先に解散してくれるわけだから、俺からするとこの解散のエピソードには学びがあるなって。今日話を聴いててもめっちゃ思うんですよ。

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