【ライブレポート】中しま りん、活動20周年、あの頃とこれから

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2024年10月30日。箏アーティスト 中しま りんの6年ぶりのワンマンライブが六本木CLAPSで開催された。この6年の間に、ドイツの大学院と提携した音楽心理療法の専門機関で学んだり、日本橋とやま館でふるさと富山の情報を発信するポッドキャストを始めたり、挑戦を続ける彼女のワンマンライブだ。



彼女の箏は、洋楽器との共演。今回も、ジャスピアニスト後藤魂、パーカッション渡辺純也、ギター大里健伍と演奏する。開演とともに、エメラルドグリーンと黒の着物姿で中しまとメンバーがステージに。オリジナル曲「永遠なるもの」でライブは始まる。箏の演奏というと箏の定番曲というイメージの人も多いだろう。しかし、彼女のライブはオリジナル曲が多い。今回は、20周年記念ということでカバーよりオリジナルを多く演奏するとのこと。「永遠なるもの」は2009年に作られた曲。曲のインスピレーションは自宅での掃除。掃除機をかける様子が畑を耕す様子に似ていると感じたことから、日々生きることをイメージして作られた。演奏に引き込まれる、箏と洋楽器とのコラボは美しい。



カバー曲「Oriental Wind」は、お茶のCMでおなじみのあの曲だ。そして、水の音をリアルに感じながら「流るる」。天に逝ってしまった人を思って作られた「天を仰ぎて君想ふ」。アレンジされた「里の秋」は、童謡の枠を遥かに超えた。愛猫の足跡が梅の花に見えたことから作られた「梅ノ花」から、もう一面の箏に移り立って演奏に。会場からの手拍子に合わせ、箏の低音がロックなようなジャジーなような印象。1部最後の「歩」は、さらに強くリズムが刻まれる。





箏は曲ごとに調弦が必要な楽器だ。曲ごとに作られる音階でその曲は演奏される。演奏者が音を作るという意味合いをより強く感じる。

2部は、朗読とドローイング映像のコラボからスタート。富山県出身の俳優 坂城日日とステージに上がる。ドローイングの映像とともに、「つながりの森」の朗読。詩とドローイングは、Roy Taro。朗読とのコラボは、今回の挑戦のひとつ。箏の音から言葉が紡がれ、朗読の声から演奏が作られ、演奏からドローイングの映像が作られるという環で作られた空間だ。ジャズで行われる即興がここで生きる。バンマスでありジャズピアニストの後藤魂から、箏の日本音階は、即興に合っていると聞いたという。





後藤魂との YAMATO LOUNGEでは、自分だけの力ではなく、セッションをしながら波になって繋ぎ音を作っているという。電子的なものと、和楽器箏の日本音階を使って曲を作るという取り組みだ。音楽心理療法を学んだことで、伝統楽器と呼ばれる箏が持つ楽器としての役割を考えることも増えたという。今の時代に合った、箏ができることを伝えたいと語る。

「Orin」は、仏具 おりんからの言葉。「閃光」では、入場時に渡された鈴を使って観客も即興で参加。観客が鳴らす音は様々でまさにライブ空間ができあがる。「剣」は、古事記の「ヤマタノオロチ」の語りに合わせて作られた静と動を持つ一曲。




本編最後は、富山の民謡「こきりこ節」。日本最古の民謡がジャズ風にアレンジされ、令和に生まれ変わる。

アンコールでは「華やぎ」を演奏。この曲は、テレビで流れる曲を作りたいと考えて作った曲。そして、狙い通り、テレビのBGMで使われることが多い。ともに演奏する、ギター大里健伍は、中しまを知る前からこの曲は知っていたというほど。


今年の初めには、ワンマンライブをすることは考えていなかったという彼女が、人との出会い、新たな挑戦をして、この日ここに立っている。ステージは日常とは違う場所。6年ぶりに得た感覚で、演奏に留まらず箏という楽器を使った新たな試みが始まるのだろう。

写真◎YU MIZUKI

<セットリスト>

<1st.>
1.永遠なるもの
2.Oriental Wind
3.流るる
4.天を仰ぎて君想ふ
5.里の秋
6.梅ノ花
7.歩
<2nd.>
1.つながりの森(朗読&ドローイング映像あり)
2.Womb (ドローイング映像あり)
3.Orin
4.閃光
5.剣
6.こきりこ節
En.華やぎ

<イベント>

【MUSEUM Concert】
2024年12月8日(日)14:00開演
中しま りん(箏)、大里健伍(ギター)、坂城日日(朗読)
高岡市万葉歴史館(富山県高岡市)

【大人へ贈る絵本の時間】
2024年12月18日(水) 13:30〜15:00(13:00開場)
景山聖子(絵本よみきかせ)、中しま りん(箏)、後藤魂(ピアノ)
大田区民ホール・アプリコ(小ホール)

【つながりを生むーConnecting the Heart and Body】
中しま りんトークセッション ファシリテーター: Roy Taro
2025年1月18日(土)14:30〜 15:30(14:20開場)
経堂アトリエ / plum cafe

【大人へ贈る絵本の時間〜春〜】
2025年3月30日(日)13:00〜15:00
景山聖子(絵本よみきかせ)、中しま りん(箏)、後藤魂(ピアノ)
日本橋三越本店 カルチャーサロン

[寄稿] 伊藤緑 https://midoriito.jp/
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