【レポート】台湾の大型フェス<浪人祭 Vagabond Fest.>が台風を打破「今後は国際的なフェスへ」

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10月4日および5日、台湾の大型フェス<浪人祭 Vagabond Fest.>が開催された。会場は台湾の台南安平。6年目を迎えた今年は、国内外のアーティストやバンドが多く参加した。野外音楽フェスといえば、その盛り上がりは天候に大きく左右されるが、今年はフェス始まって以来のピンチに見舞われるところからのスタートとなった。

◆<浪人祭> 画像

“まさかの台風直撃?”──10月に発生した大型台風“山陀兒クラトーン”が台湾付近を停滞したまま迷走し、フェスの開催自体が危ぶまれたのだ。同フェスは6つのステージを有しているが、その設営のための準備期間が台風による影響を大きく受けた。日本人の感覚からすると、今回ばかりは間違いなく中止になるのでは?と思いきや、おおらかな気質ゆえか、まさかの開催へ。しかし、もともと3日間開催の予定だったが、初日は中止に、残る2日間が無事開催されたかたちだ。


▲<浪人祭 Vagabond Fest.>設営中

迎えた開催当日、まだ会場の準備は完全ではなかったが、急ピッチで進められた設営は、看板の文字を貼る作業などの手作り感が、場内の雰囲気をより温かいものにし、ユニークなかたちでのスタートとなった。

また、当初の予定では14:00開演だったが、初日出演予定だったアーティストの出演機会を設けるべくスケジュールを調整し、朝9:30からのスタートになった。さらに驚いたのは、台湾の音楽フェスでは、間違いなくトリを務める実力者FireEX.滅火器が、朝イチのトップバッターで登場したこと。



▲FireEX. 滅火器

FireEX. 滅火器の楊 大正(Sam Yang / Vo)はMCで、「沒想到! まさか、オープニングで歌うとは思っていなかった!」と語り、さらに父親になったSamは、「子供が生まれてからは朝早いことには慣れている。<浪人祭> リスペクト!」とシャウトして会場を沸かした。早朝に熱唱するFireEX.滅火器に遭遇できるのも、このフェスならでは。台風が運んだ良い意味でのハプニングかも知れない。

日本からこのフェスに招致されたのは、THE JET BOY BANGERZ with EXILE AKIRA。台湾の国民的バンドMaydayの「OAOA」をカバーしたほか、メンバー一人一人が中国語で挨拶する場面も。そして最後は海を超えて知られる「Choo Choo TRAIN」で盛り上げた。


▲草東沒有派對 No Party For Cao Dong

初日のトリを務めたのは、今年の<FUJI ROCK FESTIVAL 2024>に出演したほか、今や台湾では一番チケットが取れないと言われているバンド 草東沒有派對 No Party For Cao Dongだ。 客席が踊り、叫び、大合唱する連続はまさしく会場がひとつになった証。安平の夜にその音が響き渡り、1日目が大盛況のうちに終了した。

迎えた2日目は、定刻スタート。今年の<浪人祭 Vagabond Fest.>は、前述のTHE JET BOY BANGERZ with EXILE AKIRAのみならず、日本から多くのアーティストやバンドが参加している。




▲離婚伝説

台湾の音楽フェス初参加となった離婚伝説はメディアインタビューで、「一番印象深い音楽祭体験は?」と問われ、「それは今日でしょう! 私たちの初めての海外公演に、多くの観客の方々が来てくれて、とても嬉しくて感動しました」と答えたほか、「注目している台湾バンドは?」という質問に「落日飛車 (Sunset Rollercoaster)だと明かした。また台湾ファンへのメッセージとして、覚えたという中国語で「我愛你們 (愛してる)!」と伝えた。

ステージでは、カネコアヤノのパフォーマンスが凄まじく、言葉の壁を飛び越えて台湾のファンの心に届くステージを展開したことに加え、水曜日のカンパネラへのオーディエンスの熱烈歓迎ぶりは驚くほど。ドミコのMCなしのクールで熱い演奏が会場を揺らすなど、見どころ満載だった。


▲カネコアヤノ



▲水曜日のカンパネラ


▲老王樂隊

<浪人祭 Vagabond Fest.>2日間の大トリは、台湾のバンド・老王樂隊だ。演奏がはじまると共に大粒の雨が降り出すなど幕開けからしてドラマティック。観客はその雨に動揺することなく大ヒット曲「我還年輕 我還年輕」を大合唱するなど終始大きな盛り上がりの中、<浪人祭 Vagabond Fest.>が幕を閉じた。

世界にはたくさんのフェスがある。フェス参加者の高齢化が話題に上ることもあるものの、台湾フェス参加者の年齢は若い。主催者のEchoや、関わるスタッフも全員若い印象だ。未来に向けて勢いを増している台湾フェス<浪人祭Vagabond Fest.>の2024年は、動きの遅い台風で始まり、最後は大雨で終わった。しかしオーディエンスもスタッフも徹頭徹尾元気だった。困難に遭おうが、最後まで諦めない台湾人の、台湾フェスの底力を体感した2日間となった。

以下に<浪人祭 Vagabond Fest.>の主催者である蕭達謙(Echo)のコメントをお届けしたい。

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▲蕭達謙(Echo)

「フェスの名称<浪人祭 “Vagabond Fest.”>は、大好きな漫画家・井上雄彦さんの『バガボンド』から付けたものです。<浪人祭>のコンセプトは“環境保護”であり、環境にやさしいフェス作りを目指しています。

たとえば、海岸のゴミ拾いはもちろん、このフェスの中で販売されている食べ物や飲み物の食器は使い捨てのものを使わず、全てリサイクルしているんです。今年の食器の回収率は90%です。マイボトルはもちろん、マイ箸などを持参する人も増えているようです。


今年の天候については、台風の動きをずっと心配していましたし、中止や延期の対応も考慮していました。初日を中止にした場合、延期公演を設けるのか? もし会場に来られないアーティストがいた場合、どう対応するのか? チケットの払い戻し対応はどうするのか? 来年もそのチケットを繰り越しで使えるようにするのか?などなど。お客さんに対して、早めにSNS等で考えを発表したことで、反応は良かったと思います。

日本のフェスにも注目しています。<フジロック>、<サマーソニック>、<京都大作戦>などは、ずっと気になっているんです。まだ行ったことがないので、いつか行ってみたいですね。

台湾の人は海外のいろいろなフェスに行くのが普通なんです。でも、海外の人は台湾のフェスになかなか来ないのが現状で。今後は国際的なフェスへと成長できるように取り組んでいきたいと思っています。そして、10周年を迎える頃には、アジアの代表的なフェスになっていたいですね」

──蕭達謙(Echo)

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取材・文◎竹内将子
写真提供◎<浪人祭 Vagabond Fest.>

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