【インタビュー】Sorry Youthが語る、最新作『Noise Apartment』と台湾インディーズシーンの賑わい「ずっと探し続けないといけないもの」
■今、台湾ではメジャーよりもむしろ
■インディーズのほうが注目されています
──さて、Sorry Youthは台湾のインディーズシーンを牽引する存在だそうですが、台湾のインディーズシーンは現在どんな状況なんでしょうか?
ジャンジャン:コロナ禍以降、とても盛んになりました。インディの音楽を聴いていない人はいないんじゃないかというくらい、みんな聴いています。私はインディの音楽を聴きながら育ってきましたが、まさかこんな日が来るとは思ってもいなかったです。インディーズシーンのアーティストもスタッフも、いま、すごく将来を感じていると思います。
──Sorry Youthのようにインディーズのバンドでもがんばれば、音楽活動だけで生活できるわけですね。
ジャンジャン:そうです。この数年で変わったのは、リスナー達がインディーズバンドのライブは楽しいと気づいたことです。ライブをするときにカラオケを使うことが多いメジャー歌手との、一番の違いはそこだと思います。多くの人がやっとそこに気づいてくれてよかったです。
チュンハン:インディーズとメジャーの境界線も今では曖昧になってきました。インディーズはマイナーというイメージがありましたけど、今、台湾ではメジャーよりもむしろインディーズのほうが注目されています。
▲ウェニ(Weni / 維尼:G)
──じゃあ、メジャーレーベルと契約するインディーズバンドもいるんですか?
ウェニ:いないことはないのですが、そこまで多くはないです。なぜならインディーズバンドはみんな、自分のことは自分でコントロールしたいと考えているからです。たとえば、2024年の<フジロック・フェスティバル>に出演したNo Party For Cao Dongも、「絶対メジャーレーベルとは契約しない」と言っていました。
チュンハン:CDがすごく売れる時代は、メジャーレーベルの力を借りる必要があったかもしれないですけど、今、インディーズバンドの収入の一番大きな部分はライブなので、メジャーレーベルの力はそこまでおよばないと思います。
──なるほど。そういう状況なのですね。さて、ここからは一番新しい4枚目のアルバム『Noise Apartment (噪音公寓)』について聞かせてほしいのですが、『Noise Apartment』はSorry Youthのキャリアにおいてどんな作品になったという手応えがありますか?
ウェニ:バンドを始めた当初は、曲ができるたびに興奮していました。そこから1曲1曲、曲作りを重ねていくうちに、“もしかしたらいつかアルバムを出せるかもしれない”とわくわくして。その後、本当にアルバムを出せるようになりましたが、アルバムを4枚も出せるなんて、考えたことはなかったです。前作『Bad Times, Good Times (歹勢好勢)』は初めてフルタイムのミュージシャンとして出したアルバムなのですが、その後も私たちはフルタイムのミュージシャンを続けています。そういう意味で、『Noise Apartment』は自分自身を肯定するアルバムだと考えています。
▲ジャンジャン(Giang Giang / 薑薑:B)
──アルバムを作るにあたっては、どんなテーマがありましたか?
ウェニ:『Noise Apartment』は、このバンドを始めてから5年間、3人で一緒に生活したアパートの名前でもあるんです。あの頃、お互いに好きな音楽を交換しあい、サブカルの文化をシェアしながら、1枚目のアルバム『Seafood (海口味)』を作りました。今回、何年かぶりに練習スタジオで多くの時間を3人で過ごしながら『Noise Apartment』を作ったんです。それもあって、最初の5年間、自分たちに影響を与えた音楽の要素を残しながら作ったアルバムであると思います。
──いただいた資料にも「ロマンティックでバカバカしい青春時代を記念するために」という文章がありましたが、エレクトロやトリップホップの要素も取り入れながら、バンドとして成熟している一方で、「バカバカしい青春時代を記念する」──つまりバンドの原点に立ち返ろうとしているところがおもしろいと思いました。
ウェニ:20年音楽を続けてきて、いろいろな技術を身につけてきたからこそ、最も根本的なものは残したかったんです。やはり自分たちの原点は、3人で暮らしたアパートだと思っています。だから、あらゆることを試した上で最後、自分たちの一番いい部分を残したんです。
▲チュンハン(Chung-Han / 宗翰:Dr)
──現在のスキルでバンドを始めた頃のピュアな情熱を再現した、みたいなことですか?
ウェニ:今回、アルバムを作っている最中、頭の中で“ロックンロールは帰ってくるぞ”と思っていました。だから、ロックンロールが好きなんだという気持ちを曲にすれば、絶対いろいろな人が好きになってくれるはずだと思ったんです。台湾の人たちは、みんなで何かをすることが好きだから。そんな民族性も今回のアルバムには表れていると思います。
──表題曲の「騒音アパート (噪音公寓)」で“自分の音を探しに行こう 自分なりの音を見つけよう”と歌っていますが、20年間バンドやってきて、それは見つかりましたか?
ウェニ:いえ、それはずっと探し続けないといけないものだと思っています。
──あともうひとつ。ラストナンバーの「世界一バカ ft. 謝銘祐(世界第一戇)」で、“僕らは世界一バカだ 僕らは世界一バカな兄弟だ”と歌ってますが、自分たちが世界一バカな兄弟だと思うのはどんな時ですか?
ウェニ:楽器を含め、重たい機材を運ぶ時です(笑)。
チュンハン:そんなふうに苦労したにもかかわらず、お客さんから反応をもらえなかった時です。
ジャンジャン:でも、それは必ずしも悪いことではないと思います。なぜなら、苦労が報われる時はいつか来るからです。
──ジャンジャンさんは、どんな時、自分たちは世界一バカな兄弟だと思いますか?
ジャンジャン:ウェニがバカをやって、自分が笑っている時とか、お酒を飲み過ぎた時とか、バカだなと思います。でも、それは楽しい時間でもあるんです。
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