【インタビュー】Sorry Youthが語る、最新作『Noise Apartment』と台湾インディーズシーンの賑わい「ずっと探し続けないといけないもの」
2023年に引き続き、2024年も日本にやってきて、イベントも含め精力的にライブを行った台湾の3人組ロックバンドがSorry Youth(拍謝少年)だ。彼らは現在、台湾で最も注目を集めるオルタナティヴロックバンドなのだそう。
◆Sorry Youth 画像 / 動画
「台湾のインディーズシーンを牽引する存在だそうですね?」と尋ねると、「そんなことはないです」とメンバーたちは照れていたが、台湾を代表する大型フェス<MEGAPORT FESTIVAL (大港開唱)>のメインステージに立ったほか、約6,000人規模の会場でワンマンライブを成功させた実績を考えれば、それは謙遜というものだろう。
この夏、リリースした4thアルバム『Noise Apartment (噪音公寓)』は複数のゲストシンガーを迎えつつ、エレクトロやトリップホップも取り入れ、音楽性の成熟をアピールした意欲作だったが、10月16日に東京・新代田FEVER(拍謝少年 Sorry Youth JAPAN TOUR 2024「Noise Apartment」)で観たライブでは過去曲も交えていたせいか、ロックバンドとして逞しい姿も見せつけた。ソリッドなバンドサウンドを聴きながら、個人的には90sエモをちょっと思い出す瞬間も。シークレットゲストに迎えた台湾の人気シンガー、オリビア・ツァオ(曹雅雯)とともにエモーショナルに盛り上げた『Noise Apartment』収録のオリビアとのデュエットナンバー「遅かった ft. 曹雅雯(袂赴啊)」は、この日のハイライトのひとつだったと言えるだろう。
その翌日、Sorry Youthの3人に『Noise Apartment』のことはもちろんだが、バンドのバックラウンドや台湾のインディーズシーンのことなど、いろいろ話を聞かせてもらった。ちなみに彼らは台湾の標準語である中国語ではなく、台湾に元々住んでいた人々が話していた台湾語で歌うことを自分たちのアイデンティティとしているという。
◆ ◆ ◆
■最初はインストバンドだったんです
■ポストロックが流行ってたことも大きかった
──東京・新代田FEVER公演を見せていただきました。情熱的で、とても素晴らしいライブでした。
全員:ありがとうございます。
──サプライズ的なオリビア・ツァオさんの登場にはびっくりしましたが、オリビアさんはたまたま日本に滞在していたんですか?
ウェニ(G, Vo):今回のジャパンツアーの計画を、たまたまオリビアさんに話したら、「1曲歌わせてもらえるなら、観光を兼ねて一緒に日本に行きたい」と言ってくれたんです。そして、今回の共演が実現しました。
──でも、オリビアさんのギャラって高いんじゃないですか(笑)?
全員:ははは。
──いや、ジョークですから真面目に答えていただかなくても大丈夫です(笑)。
ジャンジャン(B, Vo):でも、私達の間には友情がありますから。
チュンハン(Dr, Vo):オリビアさんは日本のライブハウスでパフォーマンスしたことがないから、すごく貴重な経験になると考えたんだと思います。
▲ウェニ(Weni / 維尼:G)
──新代田FEVERでは、Cody Lee(李)、大阪SOCORE FACTORYではドミコ。ともに友達関係にある日本のバンドとの共演でした。
ウェニ:2組ともライブで共演したことをきっかけに仲良くなりました。2023年、私達が大阪でライブしたとき、たまたま大阪にいたドミコの長谷川啓太(Dr)さんが打ち上げに顔を出してくれて、一緒に飲んだんです。今年、ドミコが台湾でワンマンライブをやった時は、差し入れを持って挨拶しに行き、2人を連れて、私達が一番好きな羊鍋を食べに行ったり。Cody Lee(李)とも彼らが台湾に来るたび、ライブを観に行ったり、差し入れを持って行ったりしています。
──Cody Lee(李)、ドミコも含め、多くの日本のバンドが台湾にライブをしに行っていますが、今、台湾で一番人気のある日本のバンドは誰ですか?
ジャンジャン:チケットが売れるという意味では絶対、ONE OK ROCKです。
ウィニ:台湾でよく行くラーメン屋さんの店長が、ワンオクのTAKA (Vo)さんのお父さんと友達らしいです。
──森進一さんと?
ウィニ:ええ。だから、その店長さんはTAKAさんのお父さんが演歌歌手であることも、TAKAさんの弟のHiroさんがMY FIRST STORTというバンドをやっていることを知っているんです。
──ところで、Sorry Youth(拍謝少年)のライブを観たとき、3人全員がボーカルを取っているのがとてもユニークだと思いました。リードボーカリストがいるバンドが多いと思うのですが、Sorry Youthはバンドを始めた時からそういうスタイルだったんですか?
ウィニ:最初、Sorry Youthはインストバンドだったんです。その後、曲を作り続ける中で歌も入れることになったのですが、3人それぞれに考え方や想像したことがあるから、だったら自分が書いた歌詞は、自分で歌ったほうがいいということで、全員が歌うようになりました。
▲ジャンジャン(Giang Giang / 薑薑:B)
──歌詞はどんなふうに書いているんですか?
ジャンジャン:まず誰か一人がベースになる歌詞を書いて、そこにそれぞれに自分の考えていることを加えていきます。
──インストバンドからスタートしたのは、インストバンドをやりたかったからなんですか? それとも歌うことに自信がなかったから、とりあえずインストバンドから始めたんですか?
ウィニ:最初は3人とも演奏技術がそんなになかったから、演奏に集中しないといけないと考えていました。だから、歌うことは後回しにしたんです。
チュンハン:もうひとつ理由があります。バンドを始めたとき、ポストロックが流行っていたことも大きかったと思います。
──なるほど。高校の同級生だったジャンジャンさんとチュンハンさんが台北の大学でウェニさんと出会って、Sorry Youthを始めたそうですが、3人はどんなところで意気投合したんでしょうか。音楽の趣味ですか、それとも人間性ですか?
ジャンジャン:両方だと思います。
チュンハン:実はジャンジャンと私がメンバーを募集しているところにウェニが応募してきたんです。最初はお互いに好きな音楽を紹介しあいながら、ひたすら曲を作っていたので、遊びに行くことも含め、それ以外に一緒に過ごすことはなかったのですが、お互いのオススメのライブを観にいったりするうちにお互いの性格もわかってきて、段々仲良くなっていきました。
──3人が共通して好きな音楽と言うと?
ウェニ:ポストロックとかポストパンクとか。1990年代は、たくさんガレージロックとグランジロックを聴いていました。バンドで言ったら、スマッシング・パンプキンズとか、ウィルコとか、ナショナルとか、ストロークスとか、そういうバンドですね。
▲チュンハン(Chung-Han / 宗翰:Dr)
──3人がどんなキャラクターなのかも教えてください。それぞれにどんなキャラクターなのか、お互いのことを紹介していただけないでしょうか?
ジャンジャン:難しい質問です(笑)。
チュンハン:ウェニはけっこう一本気な人です。音楽しかやったことがないんですよ。大学卒業後もギター教室の先生をはじめ、音楽関連の仕事だけやってきました。ただ、社会に出たことがないから、ちょっと社会性に欠けるところがあります。それはウェニの欠点かもしれません(笑)。お酒を飲むと、大騒ぎすることがあって、そんな時は我々二人がウェニを止めなきゃならないんです。
ジャンジャン:チュンハンの言うとおりだと思います。
──ジャンジャンさんはどんな人ですか?
ウェニ:クリエイティヴがすごく好きな人です。音楽だけではないんですよ。今はフルタイムのミュージシャンなので、音楽に専念していますけど、文学や料理の才能も持っているんです。
チュンハン:ジャンジャンとは高校からの付き合いなので、簡単には説明できないほど、いろいろな彼の姿を見てきました。だから、申し訳ないのですが、一言でこんな人だと言うことはできません。
──ウェニさんはさっき「社会性に欠ける」と欠点を指摘されましたが、ジャンジャンさんの欠点を言っておかなくもいいですか(笑)?
ウェニ:いえ、社会性に欠けていることが欠点だとは思ってませんから大丈夫です(笑)。
──最後にチュンハンさんのことを紹介してください。
ウェニ:ドラマーであることがすごく似合ってると思います。スティックさえあれば、どんなところでもビートを作り出せるんです。性格は3人の中で一番穏やか。だからこそ、演奏の基礎となるリズムをキープできるんだと思います。
ジャンジャン:穏やかなところは、おうし座ならではですね。でも、こだわりも持っていて、譲らないところは絶対に譲らない。それは良いところでもあるし、悪いところでもあるかもしれないです。
◆インタビュー【2】へ