【インタビュー】LEEVELLES、新曲「幸福のすゝめ」にダークな魅力「テーマは神様の書いたシナリオ…つまり運命に抗うこと」

■いい意味でごちゃごちゃした展開は
■全部トライだったかもしれない

──普段は表に出さない自分の黒い部分を曲に滲ませてみようみたいなところも「幸福のすゝめ」にはあるんでしょうか？

小川：その意味では、以前、LEEVELLESではきれいな部分を際立たせるために陰の要素や、ちょっとした濁りを入れることを大事にしていきたいという話をしたと思うんですけど、そういうところを今回、もうちょっと濃い目に出そうと思いました。僕らってやっぱり楽曲をきれいに作っちゃうクセが全員あるので、それは課題でもあったんですよ。表に出す出さないは別として、黒い部分って人間なら誰しも持っているものだから、そういうところでも「幸福のすゝめ」が聴く人に刺さったらいいなと思って、作っていきました。

川﨑：僕らバンドマンなんで、やっぱり何かしらのアンチテーゼはあってこうなってるところがあるというか。例えば、勉強して大学に行って、就職したら幸せになれるというような、それこそ建前に対して、ある意味アンチテーゼを持って、こっちを選んだっていうところとちょっとリンクしてるのかなって個人的には思っていて。普通はこうだよとか、こうしたほうがいいよっていうことに対して、中指を立てるじゃないですけど、それがロックバンドというか、それがバンドマンだろうって思うところもあるので。そういう気持ちでもこの曲に取り組んでたなって、今改めて思いました。

──そういう意味でも、これまでにないLEEVELLESを見せることができる曲になっていると。

髙木：さっき(小川)紘輔君が言っていた陰の要素や濁りは、けっこう濃い目に出たと思います。その中に皮肉がいい塩梅で混じっていて、遊び心があるというか、余白があるというか。

──余白ですか？

髙木：皮肉って捉え方がいろいろあるじゃないですか。例えば、“だって僕はいい人なんだから”って歌詞の“いい人”って、言い方は悪いかもしれないけど、そういうふうに思い込んでいるちょっとマヌケな印象にも見えるし、自分でそういうふうに思い込まないとやっていけないんじゃないかみたいにも見えるし。そういういろいろな捉え方ができるおもしろいワードだと思うんですよ。だから「幸福のすゝめ」の歌詞もけっこういろいろな解釈ができるんだろうなっていう。そこがこの曲のおもしろいところですよね。



──今、髙木さんが取り上げた“だって僕はいい人なんだから”を含む冒頭の歌詞は、曲の最後でも繰り返されますが、冒頭と最後では歌いながら気持ちにも何らかの変化があるんじゃないかと聴きながら思ったのですが。

小川：僕ら、そこを“神様パート”と呼んでるんです（笑）。「幸福のすゝめ」は建前と本音ともうひとつ、神様の書いたシナリオ…つまり運命に抗うこともテーマにしているんですけど。最初の神様パートで、“僕もいい人になりたい。じゃあ困ってる人に手を差し伸べましょう”って歌っているのは、みんなが是とするものに流されただけの建前なんです。それが最後では“本心から困ってる人に手を差し伸べた”という本音に変わっている。そういう主人公の気持ちの変化があって、結局それすらも神様のシナリオだったという意味で同じ歌詞にしているんです。

──なんと。

小川：主人公は神様に抗って、自分で運命を切り開いたつもりではいるんですけど、神様はそこまでシナリオに書いていたっていう。

髙木：それもまた皮肉です（笑）。

──聴いた人はどう受け止めたらいいんだろう（笑）？

小川：いや、歌詞のギミックのひとつとして、そういうエピソードを加えただけで。もちろん、一番伝えたいことは、自分の心の声を大事にしてほしいということに変わりはないんです。

──なるほど。メッセージはメッセージとして、最後のどんでん返しじゃないですけど、ストーリーテリングのおもしろさとして受け止めればいいわけですね。

小川：あー、そうですそうです。

川﨑：そういう遊び心は、僕も好きですね。



──サウンド面の話も聞かせてほしいのですが、今回、アレンジやサウンドメイキングで新たなトライはありましたか？

小川：さっきも言った転調も含め、いっぱいあるんですけど、神様パートに“ここでこのサウンドを入れるか？”みたいな聖歌隊風のコーラスを加えたりとか。

──荘厳な鐘の音が鳴って、ちょっとゴシックっぽい雰囲気もありますね。

小川：Aメロは普通に歌っているのに、Bメロで急に皮肉っぽい違うキャラクターが出てきたりとか、ファニー系のコーラスが入ってきたりとか。そこから元に戻ったとき、ボーカルエフェクトも掛けつつ、サビはキャッチーな力強いメロディーでストレートに表現したりとか。さっきもちょっと言いましたけど、そういういい意味でごちゃごちゃした展開は全部トライだったかもしれないです。

川﨑：展開が次々に変わるから、最後まで飽きさせずに、いろいろな表現を楽しんでもらえるんじゃないかな。

──その中で、今回はそれぞれにどんなアプローチをしていったのでしょうか？ 川﨑さんはパートごとにギターを使い分けたそうですね。

川﨑：そうですね。ギターはけっこう重ねているので、必然的に音色を変える必要があったんですよ。メインのリフは最初、ストラトキャスターで弾こうと考えてたんですけど、レコーディング当日にギブソンのES-335を弾かせてもらったら、ギブソン特有の質感がリフにマッチして、これだと思いました。

──セミアコですか。

川﨑：普段使ってないから最初は苦労したんですけど、音色で決めました。ストラトのシングルコイルで弾いたら、またちょっと違う世界観になったんじゃないかな。ES-335で正解だったと思います。ギターソロはストラトで感情を込めて、気持ちよく弾かせてもらったんですけど、重ねているフレーズをテレキャスターで弾いたりして、今回はヴァースごとにギターを持ち替えましたね。

小川：ワウを使ったの初めてじゃない？

川﨑：あ、そうだね。ギターソロとか2Aでチャカチャカって、これも遊び心かなと思いつつ使ってみました。ワウはやっぱりカッコいいですね。最初、ペダルを踏むタイミングをけっこう決め込んでいたんですよ。“こういうふうに弾いて、ここで踏んで”というふうに。でも、レコーディングの当日、あんまり決めずにやるほうがよさそうな気がして、もうフィーリングでやっちゃいました。

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