【インタビュー vol.2】SOPHIA、新作『BOYS and』を語る「ここで終わらない。繋がって続いてるということです」
■SOPHIA復活をお祭りで終わらせないためにも
■音楽でちゃんと刻まないと、と思って創った
──2曲目は「Like forever」。
松岡:さっきも話したように、「State of love」と「Like forever」があのときに持っていたものは1mmも欠けてはいけないと、今回アレンジするにあたってそう思っていたので、「Like forever」に関しては最後までやり切りましたね。これは都が創った曲なので、まず自分の歌でアプローチして、もう一回創り直してもらったんですよ。そうしたら見事な形に仕上がった。
都:一番最初にベーシックは録ったんですけど、そこに乗った松ちゃんの歌を聴いたり話したりして、そこからまるっきりアレンジを変えたんですよ。夜中にスタジオに行って、頭からサビ手前までをアナログシンセを弾いて今の形にしたんです。そのあとのミックスのときかな? 松ちゃんと話して、「サビもこのままでいったほうがいいね」ってなったので、その場で弾いて変えましたね。
豊田:今のSOPHIAがやったらこうなる、という最新型サウンドになったと思います。
黒柳:ミドルポップだけどちょっと哀愁があるから、8ビートでガツガツいくよりも、しっかり聴かせる8ビート。実はこういうベースが演奏的には一番難しい。
赤松:阪神淡路大震災に対しての曲ですが、僕にとっては上京物語的な曲でもあるんですよ。松ちゃんとジル(豊田)くんが僕の実家に迎えに来てくれて。トラックに荷物を積んで、僕の家から神戸の景色を眺めながら東京に向かう。そのときの神戸の風景を今も思い出す曲です。僕はここから旅立って東京で頑張っていくんだという、自分に対する応援ソングのような存在でもありますね。
▲松岡充(Vo)
──そして復活後の第一弾新曲「あなたが毎日直面している 世界の憂鬱」。
松岡:1曲目「State of love」と2曲目の「Like forever」が『BOYS and』の“and”の部分で、そこから繋がってこの「あなたが毎日直面している 世界の憂鬱」になったんだよ、ということを伝えるために、3曲目に収録しました。SOPHIAの歌詞の世界観のひとつにある、社会の中の自分や、社会と切っても切り離せない存在の自分っていうものを、当時は稚拙だったけど「State of love」と「Like forever」で表現した。
──なるほど。
松岡:「State of love」はあんなに明るい曲ですけど、“俺たちの愛の有様はこんなもんじゃないだろ”という疑問を投げかけた曲で、基本的には「Like forever」と同じ問題提起した2曲なんですね。そこから30年後、僕らはまだ「あなたが毎日直面している 世界の憂鬱」という曲でそこに向かおうとしている。そこが3曲に直結しているんです。「あなたが毎日直面している 世界の憂鬱」は、SOPHIA復活をお祭りで終わらせないためにも、僕らが生きていくための糧になり得るのであれば、それを音楽でちゃんと刻まないと、と思って創った楽曲です。
赤松:松ちゃんがそれぞれのメンバー特性をイメージして創ってくれた曲なので、レコーディングはそこに自分の色をプラスするだけでよかったんですよ。だから僕は、最初から馴染み深い感じがした曲です。
都:最初にデモをもらったときに話をしたら、松ちゃんが思い描く世界観とかイメージがすごく確立されていたので、それに従ってプレイした感じですね。この曲も今現在の年相応な音になるように、バックにアナログシンセでブラスみたいな音を入れたり。オルガンは今の自分のプレイスタイルが前面に出ていると思います。
豊田:復活したSOPHIAの久しぶりの新曲であり、久しぶりのレコーディングをした、その一発目ですね。
▲豊田和貴(G)
▲黒柳能生(B)
──続いて4曲目は「Secret Lover’s Night」。
松岡:「Secret Lover’s Night」と「Believe」は同時に創ったんです。「Believe」はずっとライブで演り続けて、今となってはSOPHIAの顔と言える曲になったんですけど、「Secret Lover’s Night」は同じ魅力を持っているのに、あまり演らなかった。こっちを演り続けてたら「Believe」じゃなくて「Secret Lover’s Night」が顔役の曲になっていてもおかしくない。代表曲ってそういうものですよね。
──分かります。
松岡:当時、SOPHIAはアイドル的な見られ方もしていたし、そういうワチャワチャしたバンドが演るメロディアスな8ビートっていう立ち位置の曲が「Believe」であり「Secret Lover’s Night」でした。ところが30年経ち、さまざまな歴史が重なって「Believe」は単純なラブソングではなく、ファンの人たちとSOPHIAの信頼関係の証というところまで発展したし、変容していった。一方の「Secret Lover’s Night」は当時のまま止まってる。だからこそ、'90年代にしかなかったコテコテの8ビートやフレージングをはじめ、無条件にハッピーになれる“これこれ!”って感じを今回はそのまま出したかった。『BOYS and』では3曲目までリアルを追い求めたからこそ、当時の『BOYS』の感情を思い出してもらうという気持ちで、4曲目に「Secret Lover’s Night」を置きました。
豊田:松ちゃんの言うように、長らく演ってない曲で、演奏すること自体久しぶりだったから、逆に新曲のように新鮮でした。とはいえ、結成当時から存在していた曲なので、僕にとっては、この曲も青春の欠片なんですよ。自分が影響を受けた'90年代バンドのフレーバーをいっぱい散りばめているんです。
赤松:うん。初期のライブの中でどんどん育っていった曲だったんだけど、あまり演らなくなって。自分の中ではもっと脚光を浴びてもらいたい曲ですね。
都:昔の形は残しながら、広げられるところは広げていきました。キーボード的には、全てをアナログシンセで弾いたので、音の感触はこれまでと違うと思う。
黒柳:俺がSOPHIAに加入する前からあった曲だよね。脱ヴィジュアル系みたいなものが、ポップなサウンドに表れていると思う。そういう気持ちがあったから、俺たちは最初から全員がステージネームみたいなものではなく、本名を名乗ってたんだよ。サウンドとしても、キーボードがいるヴィジュアル系バンドなんて、当時周りにはいなかったと思う。
▲都啓一(Key)
▲赤松芳朋(Dr)
──5曲目は「Kissing blue memories」。
松岡:都の曲なのでアレンジを任せたら、ハーフテンポにチェンジしてて、すごくびっくりした(笑)。
都:ははは。Bメロはハーフテンポにしたかったんですよね。それをレコーディング当日に言って、メンバーに演ってもらったんですけど、そこはガラッと変えた部分ですね。あと、この曲は出だしのところで上のコードをつけ加えました。そうすることで、もっと曲に広がりをもたせることができたかな。そういう細かなアレンジはいろんなところでやってますね。
豊田:だいぶ印象が変わったんじゃないかな。今のSOPHIAがプレイしたらこうなるというが、特に表れてる曲だと思います。昔のバージョンと聴き比べてもらったら、サウンドはかなり違うと思うし。これも最新型SOPHIAのアプローチって言える曲ですね。
黒柳:分かりやすくライヴで盛り上がる曲だよね。ベースソロも入っているんだけど、一番最初のデモからベースソロは入っていたと思う。
赤松:SOPHIAに加入して、2ビートというものを初体験したのが「Kissing blue memories」。さっきも言ったけど、僕は2ビートが苦手だったので、当時めちゃくちゃ練習しましたよ。今は全然余裕なんですけど。でもね、苦手だった頃の意識がライヴ中にパッと蘇ることがあって、今でも足が止まりそうになるんですよ。という意味では、僕にとってのトラウマ曲(笑)。もっと言えば、激しい中にもメロディアスで優しい一面があるというか。SOPHIAって1曲のなかでいろんな顔とかジャンルを見せたいバンドだから、器用じゃないとできないんです。今は、どんなジャンルの曲だろうが、歌を一番前に出すことが僕の仕事だと思いながら叩いています。
──6曲目は先ほども少し話があった代表曲「Believe」。
松岡:原曲に忠実に、8ビートの良さを残すほうに重きを置いたかな。本当は最初、ド頭にヴォーカルソロをつけたり、コーラスももっと入れてたんですけど、それもかなりカットして。5ピースの削ぎ落としたサウンドをメインにしたほうが、「Believe」が持ってるものを守れるんじゃないかなと思ったので。
豊田:今でも思い入れが強い曲です。初期から現在までSOPHIAを引っ張ってくれた代表曲のひとつ。
黒柳:“SOPHIAとして最初に作った曲だ”というところにファンのみんなが思いを投影して、物語がどんどん生まれて、曲が育っていく。それがバンドの中で一番うまくいった曲じゃないかな。
赤松:SOPHIAに加入するために、一生懸命練習した曲ですね。「Believe」のテンポが当時の僕には速すぎたんですよ。そのことを松ちゃんに相談したら「大丈夫。お前が楽しそうに叩いてればみんなは認めてくれるから」って言われて。その通りに演ったらSOPHIAに入れました。今はこのテンポも余裕ですけどね(笑)。
都:アレンジはストレートな形にしました。今回、ピアノは全曲生の音で入れたかったので、自分のスタジオではなくてビクタースタジオで録りました。ピアノの音をキレイに録れるスタジオがあるんですよ。あと、「Believe」はもう少しだけ跳ねた感じを出したいというのが自分の中にあったんです。昔のビートロックみたいな感じですよね。だから、イントロのオルガンバッキングを少し変えて、Aメロのコードももっと滑らかで美しい流れにしましたね。
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