【対談】UA × アイナ・ジ・エンド、コラボライブ開催直前に語る「ギフトそのものだと思ってます」
■正直私は、ジャニスは歌えない
■歌うんだ、ヤバ!この人!と思ったよ
──お二人で、聴いてきた音楽や影響を受けてきた音楽について話したことはありますか? ルーツとかバックグラウンドみたいな話か、それとも今、目の前にある音楽や自分たちの音楽性について話すことのほうが多いですか?
UA:ミュージカルのお稽古から本番までって、もう本当に怒涛の日々で。ものすごく日本が暑くなり始めた時期だったし、コロナ禍バリバリの中で。毎朝検査してドキドキしながらさ。だから、そこと関係ない話ってあんまりしなかったよね?
アイナ:そうですね。私もめちゃくちゃ必死で、初めての主演でセリフ量もとても膨大だったので、音楽の話とかは、UAさんとも他の方とも正直全然できてなかったですね。なんなら、初めての通し稽古が終わって私が泣いてたら、UAさんが近寄ってきて励ましてくれる時間があったというくらいで。ミュージカルに没頭してました。
UA:みんな放心状態っていうかね(笑)。なかなかタイトな日々だったんですよ。
アイナ:UAさんも一回喉の調子が良くなかったリハの日があって。でもすごいなと思ったのが、その次の日には全然普通になってて。
UA:ああ! アイナがしばらくお休みしなきゃいけなくなって、代理の方が来てくれてたんだけど、やっぱり気分が盛り上がらなくて。で、アイナが帰ってきてくれた日に、すっごい嬉しくなっちゃって。ウィッグつけて全部衣装着てヒール履いて、マスクつけたまま全開でやっちゃったのね。そうしたらなんか、生まれて初めて熱中症になっちゃって(笑)。その時のことかな?
アイナ:えー! そうだったんですね。
▲アイナ・ジ・エンド
UA:だから本当、ルーツの話なんていうのはルの字もなかったよね(笑)。改めて話させてもらうと、19歳の頃に当時のボーイフレンドがレコードのコレクターで、誕生日のプレゼントにアレサ・フランクリンの『Aretha's Gold』っていうベスト盤みたいなものをくれて。それをもう毎晩聴いて、すっごく影響を受けたのね。たぶんそういったジャンルの音楽で自分が3枚目か4枚目に手にしたレコード。そのあと梅田のほうの映画館で映画『ジャニス』を観たのね。その中の<モントレー・ポップ・フェスティバル>で「Cry Baby」が歌われるシーンで、もう号泣しちゃって。人が歌を歌う姿を観てあんなに泣いたのって生まれて初めてで。なんか革命が起きちゃったんだよね。だから私の10代の2大ディーヴァがアレサとジャニスだったの。ミュージカル『ジャニス』のことも、私がアレサをやらせていただいたこと、そしてあなたがジャニスだったこと、全てが私にとってはあまりに不思議なギフトで、奇跡的な体験だったんだよね。
アイナ:すごい。19歳って、一番多感かもしれない時期に出会った二人がアレサとジャニスだったんですね。それは初めて知りました。
UA:だから本当に不思議だった。
アイナ:舞台(ミュージカル『ジャニス』)でアレサ・フランクリンを歌うことになって、あの歌も聴き馴染みがあったんですか?
UA:実際にジャズのクラブで歌ってた時期があって、そこでスカウトされたんだけど、そのクラブでアレサ・フランクリンの歌を歌ってたのね。「Chain of Fools」とか「A Natural Woman」とか、キャッチーめな曲を歌ってたんだけど、「Spirit in the Dark」は映画のシーンでは観ていたけど、ずっと同じコードでゴスペルでクワイアしながら歌う…歌うというかチャンティングする曲だったので、正直そこまで聴き馴染みはなかったんです。
アイナ:そうだったんですね。初めてのリハーサルの時から“アレサ・フランクリンが出てきたのかな”っていうくらいで…。
UA:ちょっと待って(笑)。
アイナ:憑依されてるように見えてました。
UA:でもやっぱり大役だったので、きちんと練習していきましたよ、あの日は。
アイナ:本当に大役でしたね。いろいろな歌があって、UAさんがドンと登場して。しかもミュージカルの中で一番尺が長いシーンだったので。
UA:そうだね。10分くらい歌って踊って、アイナと掛け合いのシーンもあって。でもあそこが一番楽しかった!
▲UA
アイナ:楽しかったし、私は人生で初めてああいうアドリブをやったんですよ。だからもうUAさんについていくのが精一杯で。自分からは何にも提案できなくて終わってしまったんですけど。それでも楽しかったです。
UA:だってあなた、いったい何曲歌ったのよ? 私と宿題の量が違いすぎてるから当然だわ。あと、正直私は、ジャニスは歌えない。“ジャニス歌うんだ、ヤバ!この人!”と思ったよ。
アイナ:はは。
UA;歌えないよ、普通。でも歌えてたから、“この人は歌唱力半端じゃないんだな”って。
アイナ:もうそんな、UAさんに言われたら一週間笑って生きていけます。
UA;いやー、証明されたでしょ、あれは。
アイナ:頑張りました。本当、UAさんが励ましてくれたからですよ。通しリハの最後に私が泣いてたら、「大丈夫?」っていうか、「かわいそうに~」って言ってくれて(笑)。
UA:言っちゃってた(笑)? かわいそうだったんだね、あの時は。すごいプレッシャーなんだなと思ってさ。
アイナ:でも私はそれが嬉しかったんですよ。「かわいそうに」が一番リアルで。その後に映画『キリエのうた』で村上虹郎(UAの長男)くんにお会いすることがあって話したんですよ、「UAさんに慰められたよ」って。そうしたら「オカンやん、ええな。オカンやん!」って、なんか虹郎くんも励まされたそうな感じでした(笑)。
UA:励ましてるんやけどなぁ(笑)。虹郎くんも本当にBiSHからのファンやし、ミュージカル『ジャニス』の話をいただいた時にもやっぱり虹郎に相談したんだよね。太平洋を越えた島暮らしなんで、いまいちピントが合ってなくて、“どうなんだろう?” “息子に聞くしかないわ”と思ってさ。で、一緒にファーストテイクで歌ってる動画を観たの。そうしたら“ああ、これ本物だ!”って。彼もすごく推してたから、“アイナと一緒だったらできるわ”と思えたのね。
アイナ:よかったぁ。
UA:彼のお父様もめちゃくちゃアイナのファンだよね。車でずーっとかかってるっていう噂だよ。
アイナ:なんかもうUAさん一家といいますか、お世話になってます(笑)。
UA:みんなアイナ好きみたいになっちゃってるね。
──アイナさんのルーツ的なところもお話いただけますか?
アイナ:私もボーイフレンドにレコードをもらった話とかあればいいんですけど、正直なくて(笑)。ジャニス・ジョプリンぽいよね、みたいなことをお世辞でも言われることは昔からちょくちょくあって、それで“誰だろうな?”と思って。
UA:ははは!
アイナ:調べて、“あ、27歳で亡くなっちゃったんだ”みたいな。いろいろ調べていく中で「Cry Baby」とかすごく好きだなと思って聴いてたんですけど。“まさか自分が?”って思ったのと、ミュージカル『ジャニス』をやったのがちょうど27歳だったので、なんだかこう…私はお酒もドラッグもセックスもめちゃくちゃする人生を送ってるわけじゃないけど、ジャニスみたいにブルースを好きかもしれないと思って、すごくブルースにのめり込んでまして。なんか、そうすると別に死にたいわけではないんですけど、こう“死んでやろうかな”みたいに思いながらやってました。
UA:乗り移ってる乗り移ってる! そんな感じだったの?
アイナ:そうなんですよ。思いっきりルーツとかじゃないはずなのに、本当にジャニスがずっと心に住み着いちゃってましたね。
UA:イタコチックと言いますか、シャーマニックな要素があるんですね。
アイナ:あったのかもしれないですね。でも、楽屋とかでBiSHのメンバーと話したり、それこそミュージカル『ジャニス』に出演していた緑黄色社会の長屋晴子ちゃんとか藤原さくらちゃんは同世代で、二人の「あそこのカフェラテが美味しかった」という会話が聞こえてきて。
UA:話してたね(笑)、だいたい食べ物の話だったよね。
アイナ:それですごく元気が出たんですよね。あ、こっちの世界に戻って来れそう!って、あの二人の会話のおかげで思えたので。なので憑依されてどうにかなるとかはなかったです(笑)。
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