【インタビュー】FAKE TYPE.、10周年イヤーに原点と新機軸「偽物が本物になっていくストーリーを見せたい」

ポスト
no_ad_aritcle

■「Cats are dangerous」は
■新しい形を提示できたんじゃないかな


──「No more work」にはゲストが入っていて、Sarah L-ee(セラリー)とFuma no KTR(フウマノコタロウ)のお二人。元々知り合いですか。

DYES IWASAKI:セラちゃんは10年以上前ぐらいから知り合っていて、めっちゃカッコいいラップする方なので、いつか呼びたいなとは思っていたんですけど。特にこういう、トラップっぽいダークな感じのトラックでは、めっちゃカッコいいラップしてくれるので、今回ハマりそうだなと思ってお声がけしました。コタロウくんは、アオが仲いいんだよね。

TOPHAMHAT-KYO:ご近所さんです(笑)。元々、自分の過去の楽曲とかをコタロウくんが聴いてくれていて、そういうのでお互い知ってはいて。数年前にようやく一緒にご飯食べて、その後本当にご近所さんになっちゃって、たまに遊ぶようになって。その流れで、「FAKE TYPE.の次のEPでコタロウくんやってくれない?」と言ったら、すぐOKという感じで、結果的になかなか珍しいメンツになったんじゃないかなと思います。コタロウくんはばりばり現場のラッパーなので。

──高校生ラップ選手権の印象は今も強烈です。ちょっと年下ですか。

TOPHAMHAT-KYO:一回りくらい下な気がしますね。まだ20代前半だと思うので。

──違いは感じます? ラップの解釈とか、乗り方とか。

TOPHAMHAT-KYO:独特だなとは思いますね、二人とも。自分が持っていない味を二人とも持っているので、 だからこそ呼ぶ意味があるのかなという気はします。自分が使わない言葉をばりばり使ってくるので、見てておもろいなってなります。“こんなふうにリリック作るんだ”みたいな。

DYES IWASAKI:バランス良かったよね、結果的に。めちゃめちゃいい組み合わせだなと思った。

TOPHAMHAT-KYO:勉強になるもんね、人のを見ると。

──「No more work」のリリックのテーマはアオさんが?

TOPHAMHAT-KYO:そうです。ありがたいことに、お仕事をいっぱいいただくんですけど、これをこなしたら次はこれをやって、みたいな感じが結構続いていたので、ちょっと勘弁してくんねぇかな、みたいな気持ちになった時のヴァイブスだと思います、これは(笑)。



──それで“No more work=もう仕事したくない”(笑)。なるほど。「Apple juice」のテーマは?

TOPHAMHAT-KYO:「Apple juice」は何だったかな。ちょっと待ってください、思い出します(笑)。なんでリンゴにしたんだっけ? そうだ、元々のトラックは、DYESがぼくりりくん(ぼくのりりっくのぼうよみ/現在は“たなか”)に作っていたんだっけ。

DYES IWASAKI:そのへんの人と一緒にできたらな、ぐらいのイメージで作っていた曲。

TOPHAMHAT-KYO:その時のぼくりりくんのアーティスト写真が、人の体なんだけどリンゴに見えるみたいな写真なんですよ。たぶんそこからリンゴを引っ張ってきて、“リンゴに関連する曲って何だろう? 赤色だよな”みたいな感じで。あとは“自称ミュージシャン”というのもあって、確定申告をしていないと(ミュージシャンではなくて)自称ミュージシャンで報道されるみたいな話を、昔聞いたことがあって。そこで“真っ赤な嘘”とか、そういうワードを頭の中でこねくり回して作ったんじゃないかな?と思います。リンゴは知恵の実とも言われているから、知恵がどうのこうのみたいなリリックを入れたり、そんな感じだった気がしますね。

──面白いです。リリックを練ってる時って、いろんなテーマがぐるぐる回っているんですね。頭の中で。

TOPHAMHAT-KYO:そうですね。あんまりそういうものをまとめられなくて、だから散文みたいになっちゃうんですよ。

──それがTOPHAMHAT-KYOの面白さだと思います。バラエティ番組感があるというか。

TOPHAMHAT-KYO:「Apple juice」はミュージックビデオを作ろうと思っていて、そっちとリンクしてくれればいいかなという感覚で作っていたので。最近は、曲自体の意味というよりかは、映像と合わせて、それと合っているか合っていないかをイメージすることのほうを、書く時に重要視しているかもしれないです。


▲TOPHAMHAT-KYO (MC)


▲DYES IWASAKI (TrackMaker)

──なるほど。タイトルチューン「Cats are dangerous」はどうですか。

DYES IWASAKI:これは元々、johngarabushi (ジョン)さんと僕で、FAKE TYPE.用に曲を作ろうという話になって。今までシャッフルのリズムであんまり作ったことがなくて、“♪タッカタッカタッカ”みたいな、デジタル盆踊りと僕は呼んでいるんですけど、デジタル盆踊りな曲を、エレクトロスウィングと同じ楽器構成で作りました。当時僕が猫ミームにめっちゃハマってて、猫ミームの音ネタをふざけてトラックに入れて遊んでいたんですよ、僕とジョンさんで。それが予想以上に癖になっちゃって、「これがないと考えられないよね」みたいな話になって。ただ猫ミームの音は、サンプリングして使っちゃダメだと言われたので、自分たちで録りました。

──手間かけてますねぇ。

DYES IWASAKI:という元があって、それをアオに聴かせたら、まさにリリックもそういうことになった。

TOPHAMHAT-KYO:猫ミーム自体が、日本では今年の頭くらいに爆発的に流行っていたと思うんですけど、世界中では10年前から流行っていたものであることを知っていたので、リバイバルヒットみたいな感覚があるよなと思ったのと、日本ってちょっと遅れて流行るみたいなことってあるよなというものと、そういう普遍的な部分を取り上げつつ。猫ってすごく可愛い生き物だと思うので、猫を称えるメッセージも込めたりして、猫好きな人たちに刺さってくれたら嬉しいなという思いもありつつ。“Cats are dangerous=猫は危ない”というタイトルなんですけど、いい意味で“危ないよ、ハマっちゃったら危ないよ”みたいな意味合いのタイトルですね。

──アオさん、社会風刺的なこともバンバンやれるラッパーですけど、今回そういうものもありつつ、わりと遊んでるリリックが多くないですか。すごく楽しげに。

TOPHAMHAT-KYO:「Cats are dangerous」なんて、ほぼほぼふざけてます(笑)。確かに、楽しさ全振りはなかなかやらないかもしれないですね。「FAKE LAND」くらいかな、楽しさ全振りしたのは。こういうものができたほうが自分の息抜きにもなるので、久々にふざけられるという感じはありましたね。

DYES IWASAKI:でもこれ、めちゃくちゃラップの難易度高くない?

TOPHAMHAT-KYO:「Cats are dangerous」は高いと思う。声を裏返したりするところも結構多いし、オケ自体が独特のリズムだから、それに乗るのが難しいなと感じる人がたぶん多いと思う。

DYES IWASAKI:後半怒涛の詰め込みラップみたいな、あれは絶対真似できない。

TOPHAMHAT-KYO:「カラオケで歌えないよ」ってよく言われる。


──歌おうとするのが、すでにすごいですけどね。

DYES IWASAKI:これは本当に歌えないだろうなって、聴いていて思った。そのパートの時、俺、ライブで何しよう?みたいな気持ちになったよ(笑)。

TOPHAMHAT-KYO:「ハイ!ハイ!ハイ!」って、盛り上げてもらうしかない。

──FAKE TYPE.はそのバランスが本当にすごくて、楽しく盛り上げる曲でも、ラップのスキルの高さはとんでもないことをやっているという。

TOPHAMHAT-KYO:「Cats are dangerous」は、新しいFAKE TYPE.の形を提示できたんじゃないかな?と思います。

DYES IWASAKI:トラックが出来た時点で、会心の出来だなみたいな感じになって、曲を送ったらすごい速度でラップが返ってきた。今まで作ってこなかったタイプで、なおかつキャッチーに仕上がったので、推し曲はこれで行こうよということで、EPのタイトルにしました。

──この曲はロックファンにも受けると思いますね。キャッチーなサビもちゃんとあるし。

TOPHAMHAT-KYO:確か、コード進行がブルースだっけ。

DYES IWASAKI:そっち系だね。

◆インタビュー【3】へ
◆インタビュー【1】へ戻る
この記事をポスト

この記事の関連情報