【インタビュー】由薫、ドラマ『笑うマトリョーシカ』主題歌含むEPに濃厚で果てしない広がり「表現したのは現在の自分のありのまま」

ポスト
no_ad_aritcle

■EPでは誰と誰の関係の愛なのかを
■1曲1曲、磨きたいと思った


──そしてもう1曲、Toruさんとのコライト曲が「ツライクライ」です。こちらは「Sunshade」制作の延長で一緒に、という感じですか?

由薫:というよりも、「ツライクライ」はリリースがあるから制作しようとかでなく、ただ一緒にセッションをしようと誘っていただいて作っていた曲でした。普段は私がテーマを持って行って、そこからスタートすることが多いんですけど、これは元々Toruさんが書いていたサビ部分の“君をツライクライ嫌いになったって 決して忘れることはないんだろう”に対して、私がアンサーするという感じで作っていったんですけど。与えられたものに対して、まずどういうことなんだろうって考えたりとか、それを考えながら生活をしたり。それで自分の答えを出すっていうのが新しかったし、楽しかったんです。

──サビからどんなイメージを膨らませていったんですか?

由薫:私が最初に聴いたときに思い浮かべたのは、雨のなかで若者がワーって歌っているイメージで。“愛”とか“世界”とか大きなワードを使っているのが、逆に若いというか未熟な感じがして。それってすごく青春だなって思ったんです。その青春のキラキラとした感じを、人生の一瞬を、恥ずかしがらずにしっかりと書いてみるのもいいなと思って。これも本当に制作が面白くて。“この音が”とか“この歌詞が”良いとか悪いとかのキャッチボールじゃなくて、制作のなかで「青春とか恋愛ってなんなんだろうね」って話をしながら作っていったのも新鮮でした(笑)。



──充実した制作となりましたね。8月に先行リリースとなった「勿忘草」は、ピアノと歌とでエモーショナルに始まる、美しくも力強い曲です。どんなふうに生まれた曲ですか?

由薫:これもコライトで、野村陽一郎さんと制作した曲です。インディーズ時代から曲のアレンジをしていただいたり、個人的にはギターを習ったりもしていたので、野村さんは私の歩んできた道を知っているというか。1stアルバム『Brighter』を作る過程で悩んでいたことも知ってくれていて。アルバム『Brighter』の最後の曲「brighter」も野村さんと作った曲なんですけど、そのときに改めて“曲を作るということが、ヒーリングというか自分を前に進めてくれるもので、心にとってすごく大切な作業だ”ということを思い出させてくれたんです。このコライトも、特にリリースを目指していたとかではなくて、ただ音を楽しむために遊びで作った曲のデモを広げていったもので、それが「勿忘草」なんです。

──音を楽しむところから、どういったことが歌のテーマとして出てきた曲でしたか?

由薫:野村さんのお子さんも仲良くしてくれたり、家族ぐるみで親交があるんですけど。そういう意味でもコライトしているときに、家族とかが頭に浮かんでいましたね。曲を作り上げていくなかでタイアップ(本山製作所CMソング)のお話をいただいて、そのタイアップのテーマが“つながり”だったので、“まさにこの曲で歌いたかったことがテーマだな”と思って。ただこれまで、愛は人と人との間に生まれるものだから、恋人や友だちや家族に向けもいいし、あまり誰が誰にというのは関係ないと思っていたんです。でも、今回のEP『Sunshade』ではそこを曖昧にせずに、誰と誰の関係の愛なのかを1曲1曲磨きたいと思ったんです。


──なるほど。「勿忘草」はどんな愛でしょう?

由薫:家族の愛ですね。私自身、音楽を作り始めた時期は、孤独感に飲み込まれていて、確固たるものを探すように曲を作っていたし、人とのつながりを求めて曲を作っていたんです。だけど振り返ってみると、その孤独のなかでも私が目を向けていなかっただけで、必ず誰かがそばにいて、背中を見せてくれていたし、逆に私の背中を見てくれていたりしたんだなと思って。自分が渡したい愛だけじゃなくて、知らず知らずのうちに受けていた愛がしっかり自分のなかに刻まれていることを感じたんです。年齢的にも大人の仲間入りをして、反抗期の頃は天邪鬼で見えなくなっていた部分を振り返ってみるという意味で、歌詞を書いていきました。

──とても素直に、自分の思いを書いていますよね。

由薫:それが音楽のいいところですよね。グッドメロディに引き出された歌詞というか。自分でも気に入ってます。やっぱり直接言えないことのほうが多いですし、それを代弁してくれたり、気づかせてくれたり、心に入り込んでくれるのは、音楽のいいところだと思うので。みなさんにとってもそうであったらいいなと、素直に書きました。


──振り返ってみると、長い反抗期だったなと思うところってありますか?

由薫:反抗心が自分の根本にあることは感じています。環境に依るところも大きいんですけど、人生で自分を見失いそうになることが多かったなと思いますし。何かに抗うことで自分をわかるみたいなところがあったんです。でもある程度人生を歩いてくると、振り返って、素直にいろんなことを見つめられるんだなと思いました。そういう意味でも、今まででは歌えない、辿り着けなかった歌詞を書くことができたかなって。

──「もう一度」は5月に配信リリースされましたが、こちらはライブで一緒に歌えるような晴れやかな曲となりました。実際ライブでも披露されていますが、感触はどうですか?

由薫:歌っていてすごく楽しいんですよね。ライブで「もう一度」をみんなで歌っている映像を見たのですが、私、すごく楽しそうって思いました(笑)。シンガロングってやっぱりいいですよね。特にコロナ禍では一切できないことでもあったし。コロナ禍のときに私、海外の人たちがアパートの窓越しに一緒に歌ったりしている映像とか、オアシスのライブ映像でみんなが一緒に歌っている映像を観て泣いてたんです(笑)。一緒に歌うっていいなと思いました。シンガロングするっていうことに対して漠然といいよなあっていう思いがあったんですよね。


──ちょうどデビュー時期がコロナ禍で、みんなで歌えるようなライブができなかったこともありましたしね。

由薫:はい。人と人との声が重なるっていいなって。これからもライブで歌うことで、育てていきたい曲ですね。

◆インタビュー【3】へ
◆インタビュー【1】へ戻る
この記事をポスト

この記事の関連情報