【ライヴレポート】LUNA SEA、タイムトリップした32年前の<IMAGE or REAL>に濃厚な今と未来「明日を信じて突き進んでいく」
デビュー35周年を記念して、全41公演を数える自身最大規模の全国ツアー<ERA TO ERA>を開催中のLUNA SEA。EPISODE1、EPISODE2、EPISODE3の三章立てで日程を組み、伝説と化している過去のツアーを再構築して現代に蘇らせる、というオリジナルな試みだ。6つの時代(ERA)をタイムトリップのように行き来する、(これは誉め言葉だが)常軌を逸した前代未聞のツアーである。8月31日および9月1日に札幌でファイナルを迎えるEPISODE2の、東京2DAYS初日の模様をレポートする。
◆LUNA SEA 画像
8月24日(土)、東京ガーデンシアター。この日のLUNA SEAのタイムトリップ先は、約32年前、<IMAGE or REAL>の世界である。BGMが鳴り止んで、当時と同じくケイト・ブッシュの「バブーシュカ」に切り替わると暗転、ステージ下手側からSUGIZO、真矢、J、INORAN、最後にRYUICHIが登場し、歓声とどよめきが沸き起こった。真矢のカウントから「Déjàvu」へ突入し、RYUICHIはイントロに乗せ「東京!」とシャウトする。SUGIZOとJがステージ上を行き交い、INORANがRYUICHIと向き合ってプレイ。メンバーはひっきりなしに動き回り、ダイナミックな見せ場を次々と生んでいく。
再現ツアーとはいえ、「Déjàvu」は今なおLUNA SEAライヴの定番であり続けているナンバーだ。グッと時空が歪むような錯覚に見舞われたのは、曲が終わり、Jが前へ出てベースソロを爪弾き始めた瞬間である。「MECHANICAL DANCE」がスタートすると、哀訴するような物悲しさを湛えたメロディーを、ピークを保ちながら命懸けで疾走し続けるようなアンサンブルが包囲していく。渾身のドラミングをしていた真矢は、最後の一撃を打ち鳴らした後、スティックを宙に放った。この場所は、1992年という過去であり、同時に2024年という今現在でもあるのだった。
「<ERA TO ERA -EPISODE 2->、IMAGE or REAL。東京、会いたかったぜ! お前ら、元気だったか? 35周年のツアー、俺たちの限界に挑戦するツアーでもあります。着いてきてくれるよな? 行くぞ!」──RYUICHI
RYUICHIはそう叫ぶと、「IMITATION」へ。会場に鳴り響くクリアなサウンドに聴き惚れる一方で、INORANがRYUICHIの周囲を回りながらプレイする場面がシンボリックだが、現実と非現実との境目が曖昧になっていくような、トリップ感覚に襲われた。続く「IN MIND」で幻想性の度合いが増していき、囁くような声色でRYUICHIがタイトルコールした次曲「Image」で、退廃的な美の闇の最深部へと降り立った。霧のように曲全体を包み込んでいるINORANのアコースティックギターサウンドが美しい。闇に注ぐ白い縦線状の照明も印象的で、サビの“Image or Real”というフレーズをRYUICHIは目を閉じて歌い、SUGIZOの滑らかなギターソロへと繋がっていった。
ニューウェイヴのフレイバーを湛えた最初期曲「SANDY TIME」では、“生まれた意味も知らずに”という哀切を帯びたフレーズに耳を奪われ、真矢のドラミングがRYUICHIの歌に寄り添うようにドラマティックに昂っていく。十字架を象った照明が背後に出現すると「WALL」が始まり、ステージを白煙が覆い尽くしていく。INORAN、J、真矢の刻むリズムは呼吸のように自然にピッタリと合っていて、SUGIZOがギターから持ち替えてヴァイオリンを奏でると、ステージは天界のような神聖さに溢れ、RYUICHIは天を見上げた。
残響音の中で大拍手が響き余韻に浸っていると、背後に白いスクリーンが下りて来た。低く響く声でRYUICHIが「VAMPIRE’S TALK」とタイトルを告げ、メンバーのシルエットが背後に写し出されていく。RYUICHIの声を嗄らして繰り返すシャウトには、鬼気迫る凄みがあった。
15分のインターミッションを経て、DEAD CAN DANCEの「De Profundis (Out of the Depths of Sorrow)」に乗せ真矢が姿を現した。真矢が位置に着くと明滅していたステージライトが消え、代わりにドラムセットが緑色に発光し、やはり呼吸のような自然さで明滅した。一打振り下ろすたびに観客の「真矢!」という叫び声を求め、「もっとこいや!」と煽っては互いに昂っていく、お馴染みのコール&レスポンス。「ハーッ!」という真矢の一声で特効が爆ぜたのを合図に、4人がステージに戻ってきて「FATE」へ。怒涛の盛り上がりで、5人揃っての第二部はスタートした。
「みんな気分はどう? 32年ぶりだって、<IMAGE or REAL>。過去に行ったら、未来があったんだよ」──RYUICHI
RYUICHIはU-NEXTの生配信を視聴している全国のファンにも熱く語り掛け、「さらに盛り上がっていこうか!」と叫ぶと、メンバーは相槌のように各々音を打ち鳴らした。「SYMPTOM」「CHESS」「TIME IS DEAD」と狂暴なアップナンバーを容赦なく連打。ただ単にテンポが速くて激しい曲だから会場が湧く、という構図では決してない。絶妙の長さでタメを効かせたブレイクと、全員で揃って再度音を鳴らす瞬間。阿吽の呼吸で繰り出されるスリルの連続が、LUNA SEAという生命体が打つ脈拍であり、それが伝わることでオーディエンスは身体を揺らし、大声で叫んでいるように思えた。レアな初期曲の連続ではあったが、心が深い部分で通い合っている、2024年の今のLUNA SEAの5人だからこそ成し得たことであろう。
本編ラストは「PRECIOUS...」。ステージを所狭しと動き回っていたメンバーたちが、RYUICHIへと吸い寄せられるようにステージセンターに集まってくる、その唯一の瞬間の華やかなオーラは圧巻だ。譜面化し指揮者を立てたとしても、こう綺麗には揃うまい、という完璧な呼吸と間で最後の音を一斉に打ち鳴らす幕切れ。「どうもありがとう!」とRYUICHIが叫び、5人はステージを去った。
ブルーと白のレーザー光線がひんやりとした月夜を思わせる舞台へと、メンバーが再登場。アンコールで披露したのは、ミステリアスな大曲「MOON」だった。本編ラストの熱狂が遥か昔のことのように思えてくる幻想空間が広がっていく。ゆったりとしたテンポ感の中で、悠然とした歌唱と演奏を積み重ねることで昂っていく、熟練の表現に感嘆するばかりだった。ミラーボールが無数の光の筋を放射する中、メンバーは再度ステージを後にした。
すぐに手拍子が起きアンコールを求める声が強まっていき、明るくなったステージに5人が登場。「BLUE TRANSPARENCY」で沸き立たせた後、朗らかにメンバー紹介が繰り広げられた。RYUICHIに一人ずつコールされていくと、メンバー各自、真っ直ぐな言葉をファンに届けていった。
「俺たちが35年間の時を経て、32年ぶりにこの<IMAGE or REAL>というツアーをできるのも、本当に本当にここにいる人たち、そして今、ネット(U-NEXT)を観ている人たちの、本当に本当にお陰です。みんなのお陰で、LUNA SEAというバンドは、俺たちが35年前に想像してたより、とってもとっても素敵な、とってもとってもカッコいいバンドになりました。この一言しか思い浮かばないんだけど、みんな本当に本当にありがとう!」──真矢
「35年前、俺たちには音楽しかなくて、周りに仲間たちは誰もいなくて。でも、気が付いたら全国に俺たちのこと、俺たちの音楽を好いてくれる子たちがたくさんいて。そしてずっとずっとずっと歩んできて、今ここにいます。すげぇことだと思わない? こんな未来があるなんて思ってなかったし。だけど、信じれば絶対何かは叶うんだということを、相変わらず俺たちは証明してるのかもしれません。それもここにいるみんなと共に。その意味分かる?! その意味分かるか東京〜! このままのテンションでファイナルの東京ドームまで、みんなでいきたいなと思ってます。どうもありがとう!」──J
「ただいま、東京! どうですか今のLUNA SEAは? 一回り大きくなりましたか?! 二回り大きくなりましたか?! 35周年で全国いろんなところをまわって、いろんな奴と出逢えて、いろんなEPISODEをつくって、いろんな宝物を得て。週末に会う前に、みんなが愛しくなっちゃうんだよね。もちろんメンバーは最初からずっと愛しいです、スタッフも。みんなも、一週間待てないぐらい、恋しくルーティーンしてます! そうやって募る想いを東京ドームまで皆で持っていきましょう。絶対来いよ! 待ってるからな!」──INORAN
「東京! ガーデンシアターはほぼこけら落としをさせてもらって。今日、LUNA SEAとしては3年ぶりに帰ってきて “ここ故郷なんだ”と実感しました。ここでみんなと掛け替えのない時間を過ごせるのを心から光栄に思います。今年の東京公演ってすごく貴重だからね。今日と明日しかないから。そして来年のグランドファイナル、LUNA SEAのその最後の瞬間まで、みんなと一緒に旅をしたい。まだまだ走り続けるので、ぜひ、まずはこの正真正銘、故郷の東京が、日本をそして世界を、みんなが導いてください、いいですか? 全員で2月23日まで…元気で生きてほしい。全員の顔を見たい。本当にどうもありがとう。故郷、東京をこれからも愛してます!」──SUGIZO
SUGIZOから「on Vocal、RYUICHI!」とコールされたRYUICHIは、「愛してるよー!」とマイクを通さず生の大声で叫んで想いを伝えた後、スタッフへの賛辞を述べ、全員で音を鳴らし拍手を送った。このツアー名物企画となっている、スマートフォンでの写真撮影OKタイム“#LUNAPIC”についてアナウンスした。
「東京ガーデンシアターで、3年間こんなに盛り上がったことはない、という瞬間を一緒につくってみたいと思います。東京、盛り上がって行こうか? お前ら全員で掛かって来い!」──RYUICHI
そう叫んでタイトルコールしたラストソングは「WISH」。銀テープが客席へと勢いよく弾け飛び、ライヴが終わる名残惜しさを互いに分かち合う、寂しくも幸福なエンディングを迎えた。
「明日があるとは思わない。今日出来ることが明日できなくなるかもしれない。それでも、必ず明日を信じて突き進んでいく」──RYUICHI
その他、メンバー4人のMCから言葉を抜粋した言葉を列挙した後、RYUICHIはこうも語った。
「俺たちはもうドームに約10回立ってるけど、ドームはLUNA SEAの…本当のライヴハウスというかね。カッコいい場所にするから。ドームをどこよりもカッコいい場所、ルナティックな会場にしようよ、みんな」――RYUICHI
賛同する大きな拍手が注がれる中、5人は並んで手を繋いだ。観客も隣同士で手を繋ぎ、一斉にジャンプ。東京初日は幕を下ろした。
2018年12月にさいたまスーパーアリーナで<LUNATIC X'MAS 2018 -Introduction to the 30th Anniversary->として開催した<IMAGE or REAL>は近年の楽曲群も加えたセットリストだったが、<ERA TO ERA>ツアーでの再現ライヴは『IMAGE』とその前作『LUNA SEA』収録曲に特化した再構築となっており、更に濃厚なものだった。当時をリアルタイムで体験した人たちの記憶を呼び起こすだけでなく、当時観たくても観られなかった人たちの悲願を叶え、近年LUNA SEAと出会った人たちには全く新しいライヴ体験をもたらすという、画期的なコンセプトツアーは、LUNA SEA自身の今と未来に対しても大きな影響を及ぼすタイムトリップとなっているに違いない。
RYUICHIは声帯の手術を経た回復の途上で、万全とは言い難いコンディションではあるものの、メンバー5人の心が互いに強く結びついていること、応援しているファンの切なる想いも声援やシンガロングからひしひしと感じ取ることができる、温かなライヴでもあった。次に東京でLUNA SEAを観ることができるのは2025年2月23日(日/祝)、14年ぶりに東京ドームのステージに立つ、<LUNA SEA 35th ANNIVERSARY TOUR ERA TO ERA -THE FINAL EPISODE- LUNATIC TOKYO 2025 -黒服限定GIG->である。
取材・文◎大前多恵
撮影◎田辺佳子/上溝恭香
■<LUNA SEA 35th ANNIVERSARY TOUR 2024 ERA TO ERA -EPISODE 2-「IMAGE or REAL」>8月24日(土)@東京ガーデンシアター SETLIST
02. MECHANICAL DANCE
03. IMITATION
04. In Mind
05. Image
06. SANDY TIME
07. WALL
08. VAMPIRE'S TALK
-Drum Solo-
09. FATE
10. SYMPTOM
11. CHESS
12. TIME IS DEAD
13. PRECIOUS...
encore
14. MOON
W. encore
15. BLUE TRANSPARENCY 限りなく透明に近いブルー
16. WISH
◆<LUNA SEA 35th ANNIVERSARY TOUR 2024 ERA TO ERA -EPISODE 2-「SEARCH FOR MY EDEN」>8月25日(日)@東京ガーデンシアター ライブレポートへ
<LUNA SEA 35th ANNIVERSARY TOUR 2024 ERA TO ERA -EPISODE 2->配信情報
<IMAGE or REAL>
ライヴ配信:18:00~ライヴ終了まで
8月25日(日) 東京ガーデンシアター
<SEARCH FOR MY EDEN>
ライヴ配信:17:00~ライヴ終了まで
※見逃し配信:配信準備完了次第~10月31日(木)23:59まで
U-NEXT配信視聴ページ:https://t.unext.jp/r/lunasea
LUNA SEA過去ライヴ映像・MV:https://www.video.unext.jp/browse/feature/FET0011518
<LUNA SEA 35th ANNIVERSARY TOUR 2024 ERA TO ERA -EPISODE 3->
open17:00 / start18:00
<LUNACY 黒服限定GIG>
09月16日(月/祝) 山梨・YCC県民文化ホール (山梨県立県民文化ホール)
open17:00 / start18:00
<SHINING BRIGHTLY>
09月22日(日) 愛知・名古屋国際会議場 センチュリーホール
open17:00 / start18:00
<BRAND NEW CHAOS>
09月23日(月/祝) 愛知・名古屋国際会議場 センチュリーホール
open16:00 / start17:00
<LUNACY 黒服限定GIG>
10月04日(金) 三重・三重県総合文化センター 大ホール
open17:30 / start18:30
<IMAGE or REAL>
10月06日(日) 栃木・宇都宮市文化会館 大ホール
open17:00 / start18:00
<SEARCH FOR MY EDEN>
10月11日(金) 福島・いわき芸術文化交流館アリオス アルパイン大ホール
open17:30 / start18:30
<LUNACY 黒服限定GIG>
10月15日(火) 埼玉・大宮ソニックシティ 大ホール
open17:30 / start18:30
<SHINING BRIGHTLY>
10月16日(水) 埼玉・大宮ソニックシティ 大ホール
open17:30 / start18:30
<BRAND NEW CHAOS>
10月25日(金) 岩手・さくらホールfeat.ツガワ 大ホール
open17:30 / start18:30
<MOTHER OF LOVE, MOTHER OF HATE>
10月26日(土) 青森・リンクステーションホール青森
open17:00 / start18:00
<UN ENDING STYLE>
11月14日(木) 神奈川・神奈川県民ホール 大ホール
open17:30 / start18:30
<EPISODE3 -FINAL- 黒服限定GIG DAY1>
11月15日(金) 神奈川・神奈川県民ホール 大ホール
open17:30 / start18:30
<EPISODE3 -FINAL- 黒服限定GIG DAY2>
■<LUNA SEA 35th ANNIVERSARY TOUR ERA TO ERA -THE FINAL EPISODE-「LUNATIC TOKYO 2025 -黒服限定GIG-」>
※詳細は後日発表
この記事の関連情報
【ライヴレポート】LUNA SEA、<EPISODE3 -FINAL- 黒服限定GIG DAY2>で「東京ドームまでこのまま行こうぜ!」
J、最新作『BLAZING NOTES』のジャケット写真を公開。年末イベント追加ゲスト発表も
LUNA SEA、35周年記念ツアー映像作品リリース
LUNA SEA、『MOTHER』『STYLE』リバイバルツアー最終公演の映像作品2タイトル同時発売決定
【ライブレポート】INORAN、“爆幸”なバースデーライブのツアーが開幕
【インタビュー】「演奏データを未来へ残す」という、規格外れのヤマハのイノベーション
LUNA SEA|GLAY、25年ぶり東京ドーム対バン<The Millennium Eve>開催決定
LUNA SEA、「ライブの真空パック」アンバサダーに就任
【ライヴレポート】LUNA SEA、過去を超えて<SEARCH FOR MY EDEN>に滲む覚悟と決意「一緒に、東京ドームに立ちましょう」