【インタビュー】SUPER★DRAGONジャン海渡ソロプロジェクト・jjeanが掲げる2つの目標「自分だから作れている音楽を今後も曲げずに」
◼︎今後、よりヤバいものを作っていきたい
──「Babylon」の冒頭に“Wake up, it’s new life”という声が入っているのも、その生まれ変わりを示していますよね。
jjean:あれは神の声みたいなイメージで、罪を認めた人間がどう更生していくのかを観察しようとしている、個人的には神の実験みたいな感覚なんですね。バビロンって神話の中では、神に到達していない下界の人々が反骨心を持って、神ではなく自分たちで統治しようと集まった町なんですよ。だから主人公も罪を認めたふりをしているだけなのかもしれないし、人生をやり直した後に神への反抗を始めるかもしれない。そのへんの見方はみんなに委ねたいな。
──聖書の中でも神に反抗して、バベルの塔を建てようとしますからね。
jjean:そうです。でも、MVをリリースして次の日くらいには、個人ファンクラブのほうに何十人も考察を寄せてくれて、中には怖いくらい当ててきた人もいたんですよ。逆に“そういう発想か!”って驚かせてくれるようのものもあったので、まるで謎解きゲームみたいでメチャメチャいいなと思いました。
──今後ジャンさんの作品では“考察”の楽しみも味わえそうです。そういった、まさしく映画のように奥深いストーリーって、どこから生まれてくるんでしょう? 生み出すために何か特別なことってします?
jjean:特には。山に籠って……とかってことはない(笑)。自然が大好きだから自然に触れているときに浮かぶこともありますし、友達といるときに浮かんだものをコッソリ1人でメモることもありますし。いろんな場面から生まれますけど、基本的にはトラックを聞いて、そこに命を吹き込むというやり方ですね。今回も音を聞きながら目をつぶっているうちに浮かんできた感じです。
──トラックという面で言うと、このソロプロジェクトはハイパーポップというジャンルがメインになっていますが、そこにはどんな意図があるんでしょう?
jjean:ソロをやるにあたって考えたのが……今の時代の音楽やアーティストって、どうしても似たり寄ったりになってしまいがちじゃないですか。それこそデジタルの無かった時代は音楽をやっているだけで目立つし、斬新なアイディアがなくても注目される世界だったと思うんですけど、今は視聴者に強い刺激とか新しい感覚みたいなものを与えられなければ、TikTokで流れてきても簡単にスワイプされてしまう。だったら日本にないものをやっていきたいと考えたときに、浮かんだのがハイパーポップだったんです。僕の大好きなBrakenceというアーティストがいて、彼はハイパーポップやオルタナをベースに置きつつ、作る楽曲にはギターやドラムの音も取り込まれてロックな空気感もあるんですね。対して今の日本のハイパーポップって、割とキラキラガヤガヤした感じが強いから、じゃあ、僕の好きなハイパーポップを提示できたら新しいんじゃないかと。
──なるほど。それは最初におっしゃっていた“自分にしかできないもの”にも通じますね。
jjean:このソロプロジェクトで僕が掲げてる目標が2つあって、1つがjojiも所属している88risingという海外レーベルと一緒に何かすること。アジアを中心に発信しているチームなのに、今のところ日本人で絡んでいるのは新しい学校のリーダーズくらいなんですよね。もう1つがアニメのオープニング/エンディングテーマを獲ること。僕、アニメからメチャメチャ影響受けてるんですけど、音楽性はアニソンらしいアニソンとは真逆なので、そこが逆に面白い気がするんです。今の時代、アーティスト自身の音楽性の強いものがアニソンに採用されることも増えてきていますし、その2つの目標にBrakence寄りのロックなハイパーポップがすごく通じるんですよ。アニメの映像と一緒に流れているのも想像しやすいし、88risingから出てそうなサウンドでもある。何より日本でまだやっている人がいないということで、Brakenceに続く日本で最初の1人に僕がなりたいなと。そこでSoundCloudの時代から一緒にやってるGeek Kids Clubに、ギターが主体となるトラックでハイパーポップ感のあるものというオーダーをして、スタジオで一緒にセッションしながら作っていったんです。結果、儚さもありつつ攻撃的でリアルなサウンドにもなったので、そこから“夢と現実の狭間”というテーマが浮かんだんですね。その上で、昔から花言葉をテーマにすることが多かったから、ラフレシアってそんな感じじゃなかったかな?と調べ、そこから着想を得てストーリーを作っていきました。
──今、儚さと攻撃的という言葉が出ましたが、SUPER★DRAGONでのジャンさんってラップ担当ということもあり、役回り的に攻撃的な部分を担うことが多いじゃないですか。ただ、その中で垣間見せる繊細な部分が素敵だなといつも感じていたので、そういった面が今回前面に出ているのは1リスナーとして嬉しいです。
jjean:ありがとうございます。最初の作品なので、シンプルに自分のすべてを詰め込みたいという気持ちが、やっぱりあったんですね。それで3ヶ国語を使ってみたり、もちろんラップも入れて。ラップパートのトラックが8分の7という特殊な構成なので、メッチャリズムが取りにくいんですけど、それでも乗りこなすよ?っていうところを見せたかったんです。逆に「Babylon」ではすごくメロウになったりと、自分ができることをすべて詰め込んで、攻撃的な自分と儚い自分っていう表と裏、2人のジャンを表現したかったというのはあります。
──今、3ヶ国語という話が出ましたが、日本語と英語のみならずトルコ語で歌われたのは今回が初めてですよね。しかも、実はトルコ語で書かれている部分が一番ジャンさんの音楽活動の核となる部分を表しているようでニクいなと。
jjean:パッと見わかんないですもんね(笑)。
──そもそもジャンさんって、トルコ語も話せるんですか?
jjean:……話せないです! ただ、父親からトルコの音楽事情を聞くと、周りの国が進みすぎていて追いつけていないところがあるみたいんですね。トルコの人からすると、こういう音楽をやっている人間自体がメチャメチャ新鮮だろうし、すぐには無理でも時間をかけて広がっていけば大きな成果を出せると親的にも僕的にも感じていたので、今回ラップパートにトルコ語を入れてみました。一応日本と行き来しつつ4年間トルコにも住んでいたので、発音は大丈夫みたいなんですよ。なので、自分で書いた日本語詞を父親にトルコ語に翻訳してもらいつつ、細かい踏韻なんかは僕が最後に修正してます。サビのメロディも最初はまったく違ってたんですけど、親的には“もっとあるんじゃないか”という感じだったらしく、自分的にもパッとしなかったので、レコーディング前日の夜中2時とかに書き直したんですよ。それで今のサビが出来上がったので、その都度親にも聞いてもらってました。
──記念すべきソロの1発目なのもあり、やはり絶対に妥協したくない!という気持ちが強かったんでしょうか?
jjean:そうですね。正直、普段は曲作りで悩むことってほとんどないんですよ。SUPER★DRAGONの曲も30分とかでできることもあるのに、今回に関しては逆に力が入りすぎていたのかもしれない。何より難しかったのが、SoundCloudでやっていた時代はキャッチーさだったり、要は大衆に届くこととかを無視していたので、本当に無心で作れたんですね。それが今回は……もちろんソレに左右されすぎるのも良くないけれど、多少なりとも癖になるメロディとか、サビのキャッチーさみたいなものを意識したので、どうしても“これ、違うな”ってなることが多かったんです。レコーディングもいつもはサッと終わるのに、今回は昼から終電間際ぐらいまでかかって! 一音一音のニュアンスが大事になってくるから、全部録り終わったあとにもう一度録り直したり、一応2曲だったのもあって今までで1番苦戦しました。
──その甲斐あってか非常に耳に残るメロディに仕上がって、YouTubeのメイキング映像でGeekの2人もおっしゃっていた通り、とりわけファルセットが素晴らしい! 切なくて胸がギュッとなる感覚は、あのサビのラインがもたらしているんじゃないかと思います。
jjean:友達や音楽関係者からの反響もすごく良くて、リリース日に“メッチャいいね”って電話をかけてくれたメンバーもいましたね。何より嬉しいのが、リリースにあたりポニーキャニオンさんが会議とかで僕の楽曲を流してくれるじゃないですか。そのあと、いろんなプロデューサーの方が“ヤバいね”ってわざわざLINEをくれたんです。そうやって、いろんなところで評価してもらえたのが本当に嬉しいですね。表に立つアーティストは誰より自信を持ってやっていないと、逆に失礼になると思っているタイプなので、もちろんBLUE(SUPER★DRAGONファンの呼称)以外に届くまでには少し時間がかかるだろうけど、届き始めれば一気に広がっていくという自信が持てました。なので今後、よりヤバいものを作っていきたいなと。
── 実際、次作の制作は始まっているんですか?
jjean:まだトラックのイメージくらいですけど、今回よりは聞きやすくて、世界観も難しすぎないものになる予定です。僕の場合、音楽性のベースにR&Bとクラシックがあるので、いつかはSoundCloud時代に投稿していたような普通のR&Bとかローファイヒップホップをリリースしていきたい気持ちもあるんですよ。でも、あくまでそれはギャップの1つにしたいので、ハイパーポップという軸は変わらず……って感じですね。
──夢が広がりますね。それこそ昨今のアニソンってアーティストがキチンと作品の世界観を咀嚼した上で作ることが増えていますから、ジャンさんの物語性豊かな楽曲はかなり相性がいい予感がします。
jjean:もしアニソンが獲れたら、もっとサビでアクションが始まるような疾走感を待たせたいですし、今以上に自分の音楽性を保ちつつ、しっかりアニメの物語を想像しながら作りたいですね。 あと、昔は俳優業をやっていた時期もありましたけど、今、自分からやりたい!と言えるのは声優なんですよ。趣味で小説も書いてますから、将来の夢は自分が脚本を書いたアニメで、自分がオープ二ングを歌いつつ、自分で声優もやることですね。
──ちなみに、何系のアニメを担当してみたいですか? バトルものとか、恋愛ものとか、いろいろあるじゃないですか。
jjean:ローファイとかR&Bも作っているので、恋愛系でもやれる気がしますね。ソッチ系なら本当にゆったりとした楽曲でいくだろうし、あと、ほのぼの系とかもイケる気がする。ただ、一番やりたいのは『呪術廻戦』とか『HUNTER×HUNTER』とか『怪獣8号』とか、そういうオシャレなアクション系。『FAIRY TALE』とか『トリコ』みたいなファンタジー系アクションもいいんですけど、最近『呪術廻戦』とか『怪獣8号』とかって、すごくグラフィックがオシャレなんですよ。あと『ペルソナ』とかも。そのへんが自分の曲にはより合うんじゃないかと思うので、狙っていきたいですね。
──今の話を聞いて、本当にジャンさんがアニメ好きなんだということが伝わりました(笑)。
jjean:Filmarksっていう見た映画やアニメを記録するアプリには、今、アニメだけで380とかありますからね(笑)。
──ラップ担当としてのイメージだったりヴィジュアルからすると意外に感じられそうなパーソナリティですが、そのへんのギャップも今回のソロプロジェクトで埋めていけるかもしれませんね。
jjean:確かにそうですね。パッと見だと、どうしてもワイワイ系とか怖い系に見られてしまうことから逃れられない……って、まぁ、僕が僕を見てもそう感じますから、わかるんですよ! 人と話すことは好きで明るい性格ではあるから、別に家に籠っていたいわけではないんですけど、私生活では電車に乗って飲みに行くのも年に1、2回みたいなレベルなんですね。大人しいといえば大人しいほうで、そんなパーソナリティを持つ自分だから作れている音楽というものを、今後も曲げずに出していきたいです。もう、止まらずにブチかまし続けるんで、チェックしていてください。
取材・文◎清水素子
リリース情報
jjean「Rafflesia」「Babylon」
https://lnk.to/jjean_rafflesia
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