【ライブレポート】SUPER★DRAGON、持てる武器のすべてをさらけ出したメジャー1発目ツアー「俺らは止まること知らない」
SUPER★DRAGONのライブとは、これほどまでに熱く、そしてファンの愛にあふれた空間だっただろうか──。
今年3月にメジャーデビューを果たしてから、一発目となった全国ツアーのファイナル。その終盤、BLUEと呼ばれる彼らのファンの熱い声が会場に満ち、メンバーの笑顔とアットホームな空気が広がるのを目の当たりにして、真っ先に湧き上がったのはそんな驚きだった。
◆ライブ写真
“ミクスチャー”を主たるグループコンセプトとして掲げ、2015年に結成したSUPER★DRAGON(通称・スパドラ)。当時、小学5年生から高校2年生だったメンバーも、今や全員が20歳を超えたが、その間に彼らは歌、ラップ、ダンス、ヒューマンビートボックスと、それぞれのスキルを磨き続けてきた。年長組4人のファイヤードラゴンと年少組5人のサンダードラゴンという派生ユニットも存在し、時には単独でのリリースやライブを行うことも。また、古川毅や田中洸希らが俳優としても活躍する一方、ジャン海渡と松村和哉は共にラッパーとしてもソロプロジェクトを始動させ、伊藤壮吾は鉄道に対する膨大な愛と知識を活かし鉄道タレントしても各メディアに露出している。
それぞれの個性と才覚で“表現”の幅を広げ続けてきた彼らだけに、今回のホールツアーを<MIXTURE>と名付けた理由について、古川は「メジャーデビューを経て生まれ変わって、改めて自己紹介のツアーにしたい」とツアー2本目の東京公演で語っていたのも納得。事実、ツアー全公演がソールドアウトしたために追加公演として行われた最終日の神奈川県民ホール公演でも、個人にフォーカスし、持てる武器のすべてをさらけ出して、スパドラにしか生みだせない“MIXTURE”を体現してみせた。
スタイリッシュな現代と雑然としたレトロがミクスチャーしたオープニング映像に続き、ステージに現れた9人は、まずメジャーデビュー曲「New Rise」をお見舞い。ロイヤルブルーのシャツに黒のネクタイとパンツという、実にスタイリッシュな出で立ちで並び立つ姿はとにかく目を惹き、BLUEはグループカラーであるブルーに光るペンライトを振り上げて熱狂的に出迎える。メジャー進出にあたり改めてBLUEと共に進むという意志を表した1曲目から、新たなミクスチャーを目指した「X」にパワフルな「Tap tap tap!」と、メンバー自身が制作に深く携わったナンバーと迫力のフォーメーションダンスで序盤から圧倒。そのままMC代わりに1人ずつ客席に呼びかけた際にも、古川は「ついてこいよ、よろしく」とサングラスを外し、池田彪馬は「楽しませてやるよ」とBLUEを挑発して、パフォーマンスのみならずセクシーな表情で魅了できるのもスパドラのアドバンテージだ。ちなみに本公演の衣装はすべて古川のプロデュースによるもの。ヴィジュアル面でメンバー自身の思想をしっかり反映させられるのも、やはり強い。
そうしてBLUEをSUPER★DRAGONの世界へと誘い込んでのラブソング「Hey, girl」では、電飾のバーを自在に移動させながら甘い誘惑を光でも表し、続く「Remedy For Love」では古川&池田がステージ2階で朗々と歌い上げる下で、柴崎楽がコンテンポラリーダンスで舞うというドラマティックな光景を出現させる。「Remedy For Love」はメンバーそれぞれが楽曲をコンセプトプロデュースしたアルバム『3rd Identity』(2019年)の収録曲だが、重厚なピアノ音で始まる愛の歌はミステリアスな柴崎のイメージともピッタリで、薔薇に囲まれて1人眠るMVもリリース当時話題に。後のMCで古川が触れたように、もはや「(柴崎)楽の持ち曲」と言ってもいい楽曲である。
個人へのフォーカスはここから加速し、続いて松村和哉が4月に立ち上げたソロプロジェクト・Cuegeeが登場。ツアーファイナルということで、8月14日にリリースする1st EP『九似』から「Darkhero」をお披露目し“この歌は不退転”と歌えば、ジャン海渡も「最終公演、ライブ盛り上がる曲にしたかった」とソロアーティスト・jjean名義で作った未発表曲「Shooting star」で客席に飛び出し、まさかの新曲公開でBLUEを驚喜させる。その2人に田中が加わって、3人で怒りのラップ曲「Set It Off」をラウドにブチかますと、今度は田中が1人残って「悔いなく、いい思い出を作りましょう」と得意のヒューマンビートボックスを投下。黒いサングラスのワイルドな佇まいから放たれる低音ビートはツアーを経てスキルアップし、ラップ門外漢でもわかるほどのヤバさだ。
BLUEも沸きまくったところに今度はダンサーの志村玲於が現れ、田中のビートに合わせて即興で踊るが、延々終わらぬビートに喰らいつき踊り続ける志村には大喝采が。彼自身、後のMCで「いっこうに終わらなくて、(田中)洸希の顔見たら満面の笑みで!」と呆れていたが、田中は「遊びたかったんで、今日は申し訳ないけど倒れてもらおうって」と悪びれず答えていた。そんな無茶ぶりに耐えた志村に「玲於の怒涛のステップすごかった」「これ対応できるの玲於くんしかいない」とメンバーからは称賛の声があがり、古川は「BLUEの歓声があって成立してる。マジで!」と歓声の力に感謝する。
BLUEの声の力は、志村&田中のコラボに続く「SAWAGE!!!!」でも発揮。ステージに乱入した飯島颯、伊藤、柴崎が志村と共にパフォーマンスするダンサー4人曲は、昨年発表されるや即座にファンに愛され、BLUEの凄まじいコールが湧いて一気に体感温度が上昇する。伊藤の“君の瞳に乾杯♪”に、柴崎の“子猫ちゃん♪”とキメ台詞も手慣れたもので、黄色い悲鳴をあげるBLUEを翻弄しまくりだ。さらにボーカル&ラッパー組の5人が合流しての「Breakdown Anthem」でも、英詞曲が醸す洒落たムードのなか、カメラに向かい田中がサングラスを外して舌をペロリと出したりとセクシーに挑発。そうかと思えば「Reach the sky」でタオルを振りながら笑顔で客席に飛び出して、近寄りがたいクールと朗らかなフレンドリーの両極で魅せていく。
後者の一端であるトークも近年エンタメ性がグッと増しており、MCで「Remedy For Love」の感想を問われた柴崎が「回転するところで靴が床に引っかかって脱げて悔しいです!」と言えば、古川は「お姫様は靴、脱げるから。そういうことです」と、最年少としてメンバー内でも愛されてきた柴崎をサポート。さらに「新曲歌うぞ!って意気込んで、緊張して神妙な面持ちで出て行ったら、そこに靴あるの。めちゃ蹴飛ばした!」と言い放った松村に、古川は「王子様、ダークヒーローなんだ」と曲名をもじって「そういう歌ではない」と返されていたのも楽しい。
さらにライブ後半戦は「どっちがガラスの靴を拾うか?」(古川)と、派生ユニットの対決で幕開け。ファイヤードラゴンの「Drive Me Crazy」ではスタンドマイクを使ってジャンが抑えた声音で切なげに歌い、古川が男の色気を纏って“I Love You”と放つ周りで、志村と飯島が踊るというスパドラとはまた違う表情を提示。サンダードラゴンも同じくラブソングの「真冬の熱帯夜」で大人びた顔を見せ、アンニュイな空気を漂わせながら、ラストでカメラに抜かれた田中がシーッと指を立て、ニヤリと笑って舌を出すのがなんともあざとい。そのまま続いた「相合傘」では今度はボーカル&ラッパー組が客席に、ダンサー組がステージに分かれて登場し、ピンク色の傘を差して恋のときめきを歌う。飯島と柴崎が文字通り相合傘で揺れるのも微笑ましさ抜群だ。
そして「-Tweedia-」では、なんと伊藤がピアノ演奏! その美しい音色に合わせ、ボーカル陣が想いを込めて切ない別れを歌い上げると、ミラーボールと客席の青い光が美しく視覚を彩り、池田が歌い終えるや満場の拍手が湧いた。伊藤がライブでピアノ演奏をするのは昨年3月のパシフィコ横浜ワンマン以来だが、回を重ねるごとにその音は情感豊かなものに。古川も「今日のピアノ、メチャクチャ最高だった」と賞賛し、伊藤自身も「いや、ライブだね!って感じ。緊張感も違うし、魂込めて……千秋楽、悔いなくすべて届けきれたので良かったです」と満足げに応えていた。
繊細な感情を描く叙情的なシーンは、だが、雑踏の音を挟んでのスリリングなダンストラックで鮮烈な変貌を遂げる。鮮やかなイエローの衣装に着替えてソロもしくはペアでダンスを決めながら、踊り終えた田中が伊藤に覆いかぶさってキスの仕草を見せたり、古川と柴崎は首に手をかけて見つめ合ったりと、メンバー同士で濃厚に絡んで場内を黄色い悲鳴の渦に。そこから続いた「Sweets」は田中が主演するTVドラマ『シュガードッグライフ』の主題歌で、田中がニッコリと頬と指でハートを作ったのを手始めに、濃密なキュートにひと匙のセクシーを悪魔合体させたようなナンバーでBLUEをときめかせていく。スパドラ史上最高に愛らしいこの楽曲もメンバーのプロデュースによるもので、曲中、その1人である池田に田中が後ろから抱きついて頬をつまむ場面も。そんな究極のキュートを見せた直後、しかしステージに広がったのは絵画のように芸術的な光景だった。花々で飾り付けられた長テーブルに一列で座った9人は「Gotta Keep It Going On」を歌いながら時に肘をつき、時に隣のメンバーと耳打ちをし、時に食器をもてあそび、時に立ち上がって静止画の美で魅了する。まるでダヴィンチの名画『最後の晩餐』を思わせる画は、曲後半で一気に動画に。松村が食卓の上に立ち上がったのを皮切りに次々とテーブルを乗り越えて、躍動的なダンスパフォーマンスを繰り広げて観る者の目を奪っていく。
想定外の表現に息を呑んだオーディエンスをさらに驚かせたのが、事前情報の一切ないままサプライズ披露された完全未発表の新曲「Legend」だ。9人という人数を活かし、ステージに大きく広がって展開するダンスフォーメーションの緻密な躍動感に客席はどよめいて、この曲のプロデュースを担当した池田は自分のパートを歌い終えるとウインク。曲が終わると大歓声が湧き、新たなキラーチューンの誕生を確信させる。そこから飯島がアグレッシブなソロダンスでBLUEを沸かせ、シーッと指を立ててさらに熱狂させた後は「Monster!」から怒涛のメドレーに突入。「Mada’ Mada’」では田中と松村、古川とジャンが互いに掴みかかるような勢いで対峙して激情を溢れさせ、セルフタイトルの痛快な「SUPER★DRAGON」に、ロックな「Untouchable MAX」ではBLUEの大合唱にジャンが「みんな最高だ!」と称える。曲終わりを喉が千切れんばかりに叫び上げた古川は「後先考えなさすぎ!」と自嘲したが、飯島は「最後ですから出し切るしかない!」とフォロー。そしてツアーの終わりを惜しみながら、古川はこう告げた。
「もうすぐ我々10年目でして……10年くらいやってれば、正直ポジティブでいられないタイミングもあったんですけど、今、そういうのを越えて、今までの歴史の中で9人が一番前を向けて仲いいんです! そのタイミングで自己紹介的なツアーができて、この曲が生まれたのも運命、必然のように思っています。手の届く範囲の人、みんなまとめて幸せになってほしいし、みんなが自分に優しく、周りに優しく、少しでも優しい世界になればいいなと思って作った曲です」
そして歌われたのは、初日に初披露された「Younger Forevermore」。“子供心を忘れずに楽しめる大人でありたい”という想いのもと、古川、ジャン、松村で楽曲制作にあたり、振り付けを志村と飯島で行ったミドルチューンは、地を踏みしめるような力強さを備えつつ、モニターに映し出された歌詞には“俺らは最低なヒーロー”などというドキリとする文言も。だが、そこには人間である以上避けることのできない過ちを乗り越えて“愛を歌っていこう”という尊い想いが込められている。そんなリリックを古川、池田は振り絞るように歌い、田中はメンバーの輪の中からビートボックスで想いを響かせて「俺らは止まること知らないんで、これからも期待して待っててください」と本編を締めくくった。
アンコールでは「ワチャ-ガチャ!」でいきなり客席に飛び出し、1階のみならず2階、3階と駆け回って、かなりの長時間BLUEの間近にステイ。MCで明かされたところによると、ここでメンバーが着ていたTシャツは柴崎がリメイクしたもので、飯島の袖が手縫いだったり、伊藤の肩のデザインは線路をイメージしたものだったりと、それぞれの個性に合わせた緻密な手仕事に高いアートセンスが光っていた。また「Sweets」のイントロで田中が担当している決めポーズを、MCで他メンバーも披露するのが今ツアーでは恒例となっており、ここまでの公演で指名されてこなかった古川と松村、さらにジャン、飯島、柴崎と全員がチャレンジさせられるハメに。不測の事態にジャンは「このあと緊急発表あるけど不機嫌なのでやりません!」とぼやきつつ、最終的にはメジャー2ndシングル「Downforce」を9月11日にリリースすることと、「Sweets」が7月30日に配信リリースされることを発表してBLUEを歓喜させた。
最後に「一緒に楽しんでいけますか? これからも俺らがポップスターになるの、見届けますか?」と始まった「Popstar」では、歌う池田に田中が背中を合わせたり、その2人を真似した古川とジャンが尻相撲のような体勢ではしゃぎ合う場面も。何を気負うことも、カッコよさだけを追求することもなく、素をさらけ出し、自然体でステージに立つ9人を見ながら、今のスパドラは本当の強さを手に入れたのだなと実感することができた。だからこそ場内に広がる空気は温かく、アットホームでありながら、BLUEが贈る歓声と拍手はこれまでになく熱いのだろう。
「楽しくできることが一番だなって9人全員思ってることなんで、みんなで手を取り合って一緒に駆け上がっていきたいなと思ってます」と最後に池田が挨拶し、SUPER★DRAGONのメジャー一発目となるツアーは終了。メンバーそれぞれに見せ場がある見ごたえ満点のパフォーマンスは見ごたえ満点で、彼らの高いスキルと表現力、そして、ひたすらに前を向いて進んでいくという決意を受け取ることができた。
早くも8月11日からは、2ndシングル「Downforce」のリリースイベントもスタート。結成9周年記念日の翌日となる9月28日には恒例のイベント『DRA FES』も大宮ソニックシティ 大ホールで開催され、ついに10周年イヤーに突入することとなる。若き龍は成熟の時を迎え、より自由に天を翔け上がっていく──。そんな予感に満ちた夜だった。
取材・文◎清水素子
写真◎笹森健一
リリース情報
Download / Streaming:https://lnk.to/SD_sweets
▼SUPER★DRAGON Major 2nd Single「Downforce」
発売日:2024年9月11日(水)
予約:https://lnk.to/Downforce_CD
■通常盤(CD ONLY)
品番:PCCA-06333 / 価格:¥1,500(税込)
M1 Downforce
M2 Sweets
M3 Younger Forevermore
封入特典:トレカ1枚封入(集合1種、メンバーソロ9種 合計全10種)
■初回限定盤A(CD+Blu-ray)
品番:PCCA-06331 / 価格:¥3,630(税込)
M1 Downforce
M2 Sweets
Blu-ray収録内容:
SUPER★DRAGON DRA FES 2023【2部】8th Anniversary LIVE
・BIG DIPPER / feat.UDANJI ICHIKAWA
・ZEN-SHIN-ZEN-REI
・Ooh! Ooh!
・Honey Baby
・SAWAGE!!!!
・Bad Day
封入特典:トレカ1枚封入(集合1種、メンバーソロ9種 合計全10種)
■初回限定盤B(CD+Blu-ray)
品番:PCCA-06332 / 価格:¥3,630(税込)
M1 Downforce
M2 Sweets
初回B
Blu-ray収録内容:
SUPER★DRAGON DRA FES 2023【2部】8th Anniversary LIVE
・WILD BEAT
・HACK MY CHOICE
・Aim So High
・GETSUYOUBI
・ARIGATO
・Bad Bitter Honey
封入特典:トレカ1枚封入(集合1種、メンバーソロ9種 合計全10種)
■ショップ別先着予約特典
Amazon.co.jp:メガジャケ
タワーレコードおよびTOWER mini全店、タワーレコードオンライン:トレカ(タワレコver / メンバーソロ9種 集合1種)
全国HMV/HMV&BOOKS online:トレカ(HMVver / メンバーソロ9種 集合1種)
セブンネットショッピング:アクリルチャームミニキーホルダー メンバーソロランダム全9種
楽天ブックス:クリアトレカ メンバーソロランダム全9種
この記事の関連情報
【ライブレポート】SUPER★DRAGON、やりたいこと全部盛りの<DRA FES 2024>「これからもこの手を離さないでくれると嬉しいです」
【インタビュー】SUPER★DRAGON、2ndシングルで魅せる「僕たちにしか出せないミクスチャーという無限の側面」
SUPER★DRAGON、最新曲「リトル・ラヴァーズ」がTVアニメ『殿と犬』テーマソングに
SUPER★DRAGON、メジャー2ndシングルリリース決定
SUPER★DRAGON、新曲「Sweets」が田中洸希主演ドラマ『シュガードッグライフ』主題歌に
【速レポ】<LuckyFes'24>SUPER★DRAGONの多彩な魅力を伝えた30分「僕たちと遊んでくれる皆さんに思いを込めて」
【インタビュー】SUPER★DRAGONジャン海渡ソロプロジェクト・jjeanが掲げる2つの目標「自分だから作れている音楽を今後も曲げずに」
【インタビュー】SUPER★DRAGON松村和哉のソロプロジェクト・Cuegeeとは何か。「自分 1人でどこまでできるのかを試してみたかった」
SUPER★DRAGONのジャン海渡、ソロプロジェクト始動