【インタビュー】Qaijff、森彩乃の乳がん手術を経てついに5年ぶりのツアー「僕たちはここからもう一度始めたい
◼︎僕たちはここからもう一度始めたい
──レコード会社と事務所から独立し、新体制になって約3年が経ちましたけど、サウンドの変化についてはどう感じていますか?
内田:できるだけシンプルにしたいというのは、最近はすごくありますね。歌詞もなるべく削ぎ落としたものにしたい。サウンドに関しては、ピアノにしろベースにしろ、一つひとつの存在感がしっかりあれば、そんなに楽器の数はいらないんだなって。「誇れ」もそうなんですけど、自分でミックスとマスタリングをしているといろいろ発見があって、その結果として最近はミニマルな思考になってきましたね。
森:できるだけシンプルにして、各楽器の密度を濃くしてる感じですね。
──2021年末にたくさんの楽器を従えてオーケストラコンサート(レポート)を行なったQaijffが、今はそういう方向性になってきていて。
内田:面白いですよね(笑)。きっと、また大編成でやりたくなる時期も来ると思うんですけど。
森:今のモードはミニマルってことだね。
──オーケストラコンサートで楽器の特性を理解したからこそ、現在のサウンドがあるのかもしれませんね。
内田:そうですね。より成熟されたアプローチになりつつあるというか。
森:それでいて初期衝動も歌っているんですよね、「誇れ」では。何かとバランスが面白くなってきた感じがします。
──楽器の存在感で言うと、サビでダイナミックにドーンと聴こえるティンパニが最高です。
森:インパクトありますよね。オーケストラコンサートの経験がなかったら、間違いなく生まれてないアレンジです。ティンパニの威力とか感動は、肌で味わったからこそ入れたくなったので。
内田:ティンパニの活かし方も、実際にやってみたから深く理解できたよね。
──2番の“絶対諦めてやんない”のあとに入っているパーカッションっぽい音も、すごく効果的だなと思いました。
内田:あれはティンバレスですね。軽いスネアみたいな感じの音。使う楽器は一つひとつ、必要か必要じゃないかを何度も検証して作っているので、そう言ってもらえるのが嬉しいです。
森:“カン、カン、カンッ”でちょっと意表を突くっていうか、いい脱力感だよね。(内田に向かって拍手しながら)あのタイミングでティンバレスを入れたのはさすが。
──必要最低限の楽器だけど、ハッとさせられるアレンジが多かったです。オーケストラコンサートの迫力満点な「Wonderful Life」を思い出す瞬間もあったりして。
森:わかります〜! やっぱり、あのときに開催できてよかったなとしみじみ感じるなあ。ちなみに「Wonderful Life」でコントラバスを弾いてくれた島田卓周くんは、「サニーサイド」のstudio anima sessionにも参加してくれました(※studio animaはQaijffのプライベートスタジオ)。
内田:いっしょに演奏した出演者との関係性は、今も続いているんですよ。まだリリースしてない新曲を手伝ってもらったりもしてるので、楽しみにしていてください。
──「誇れ」は、出だしのメロディが、後半の“歌え”以降にシンガロングパートとして使われているのもいいですね。
内田:その部分はグランパスの選手紹介映像の音楽ともリンクしていて、今まで以上にチームと連携できているところがすごく刺激的です。
森:選手紹介映像の音楽も内田が担当してるんですけど、また違ったアレンジがカッコいいので、ぜひチェックしてもらえたらと思います。
──チームとの信頼関係が窺えますね。コーラスもグランパスファミリーに歌ってもらっていて。
内田:そうです。選手紹介映像の制作スタッフ含めたみなさんに集まってもらって。この試みも初めてですね。
森:おかげで一体感のある曲ができました。
──今シーズンのグランパスは開幕3連敗からの厳しいスタートでしたけど、徐々に巻き返してきて、この曲がどんどんチームの力になってきているんじゃないかなと思います。
内田:僕らもそうなってくれてると信じたいです。選手やファミリー、スタジアム全体を盛り上げる曲としてはもちろん、純粋に毎日を戦っている人にも届いてほしいですね。
森:私の病気がまさにそうなんですけど、人生って良いときもあれば、悪いときもある。それはスポーツでも同じだから、結果が良いときだけ喜んだり、近寄ったりするのは本当の愛じゃないと思うんですよね。
──不調の選手に対するバッシングとか、目に入るだけで悲しいです。
森:そうなんですよ。苦しいときこそ、力になりたい。私は実際、苦しいときにパワーを与えてもらったので。負けてしまったとき、チームの調子が良くないときにも、支えになれるような曲でありたいんです。チームのことをいつでも信じて応援することが大事だよなと。
内田:悪いときには気持ちを鼓舞できるような、良いときにはさらに盛り上がれるような曲でありたいですね。
──そして、約5年ぶりとなるワンマンライブツアー<誇れ2024>が、7月から8月にかけて名古屋、東京、京都で開催されます。
内田:コロナ禍でどのバンドもライブができなくなりましたけど、僕らの場合はそれに加えて、ドラムの(三輪)幸宏が無期限活動休止になったり、所属していたレコード会社と事務所から独立したりと、いろんなことがあったので、ここ数年なかなかツアーをやれる状況ではなかったんですよね。
森:2023年が結成11周年で、(サッカーのイレブンにちなんで)ツアーをやるはずだったんだけどね。ご承知のとおり、私が突然の乳がんになってしまい……。
──だから、まさに待望のツアーなんですよね。
内田:自分たちとしては、コロナ禍でもオーケストラコンサートに挑戦したりとか、決して止まっていたわけではなく、ずっと活動していたから、5年も空いた感覚が正直ないんですけど、きっと離れてしまったファンもいると思うんですよね。でも、僕たちはここからもう一度始めたい。このタイミングで、ひさしぶりの方もぜひ観に来てほしいんです。
森:去年できなかったぶんも取り返すくらい気合入ってるので、遊びに来てほしいです。よろしくお願いします!
──独立して以降のバンド活動は、改めてどう感じていますか?
内田:今は何があっても自分たちの責任だし、わかりやすくていいですね。コロナ禍にプライベートスタジオの環境を整えて、2022年には自分たちの会社(con anima Inc.)も作って。
森:スタジオは徐々に機材を増やしていった感じだよね。最近はだいぶレコーディングがしやすくなりました。
内田:他のスタジオを使うことも当然これからもあると思うんですけど、自分たちの軸をひとつ作っておきたかったんです。
森:結果、今回の治療期間中に大活躍したもんね。プライベートスタジオじゃなかったら、おそらく新曲のリリースもできてないと思います。他の場所やエンジニアさんを前もって押さえるスタイルだと、その日に私の体調が悪かったらバラさなきゃいけないし、ちゃんと録り終えられるかどうかも不安だったはずなので。ゆっくりレコーディングできる感じで本当によかったです。
──やるべきことをちゃんとやられている印象です。
内田:意外とそうだったみたいです(笑)。
森:あははは(笑)。
──いろんなことを乗り越えてきた中、バンドを続ける理由も自然と見えてきましたか?
森:ポジティブに考えれば、音楽で生きていきたい、ステージに立って歌いたいみたいな、根底にある初期衝動を再確認できたような期間でしたね。私、まだまだこのピュアな気持ちが消えてないんだなって。だから、今も続けてるんだなと思いました。
内田:これまでも覚悟はできていたつもりだったけど、病気があっても活動休止せずに続けてきて、ますます肝が据わった状態になったかな。今は何もかもがシンプルに見えるんですよね。
──困難な状況を切り開いてきた今のQaijff、元気になった森さんの姿を観てもらいたいですね。
内田:セットリストはこれから考える感じですけど、「バンドっていいな」「ライブっていいな」と思ってもらえるようなツアーにしたいです。ライブがあまりできてなかった悔しさもあるので、ライブがやれることの喜びが自然と出るのは間違いないんじゃないかと。この一年で知ってくださった初めての方もお待ちしてます。
森:私の感受性も大爆発するはずです(笑)。5年ぶりのツアーとなると、期待と不安が入り混じった心境ですが、それがライブの醍醐味でもあるし、ヒリヒリした空気も合わせてめいっぱい楽しみたいですね。表現の変化も出てくるはずなので、復活したQaijffを観てください。2024年は全力でやるぞ。思いっきり生きます!
取材・文◎田山雄士
撮影◎潮谷領二
<Qaijff単独公演 「誇れ2024」>
開場17:30 開演18:30
前売 ¥5,500 (座席指定)
2024.07.27(土) 東京 晴れたら空に豆まいて
開場11:30 開演12:00
前売 ¥4,900 (1Drink別 ¥600)
2024.08.10(土) 京都府庁旧本館・正庁
開場13:00 開演13:30
前売 ¥4,900
■チケット情報
プレオーダー(一般先行) 5/1〜5/7
一般発売 5/18〜
[URL]https://eplus.jp/sf/search?block=true&keyword=Qaijff
◆Qaijff オフィシャルサイト
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