【インタビュー:後編】キズ、来夢が“白塗り”に乗せる未来「信じてくれる人には答えようと思ってる」

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◼︎ファンに「ありがとう」がようやく言えるようになった

──ファンとの関係も変わっていそうですね。

来夢:何かあるかな……。あ、ライブで「ありがとう」って言うようになったんですよ。

──「ライブでありがとうで終わらせたくない」と話していたあの来夢さんが。

来夢:ようやく言えるようになったんですよ。「ありがとう」がかっこよく言える人間になってきたのかな。これまでは「ありがとう」って言葉に違和感があって、「ありがとう」以外の言葉を探していたんですけど、すべきことは言葉探しじゃなかったんです。「ありがとう」という言葉が似合わなかった、ただそれだけです。私生活でも「ありがとう」って言うようになりましたね。僕は、生活がライブに直結してるんですよ。ファンも自然と反応してくれるし。最近のワンマンは急に温かい雰囲気になったりするんですよ。かと思えばバシってやって終わるライブもあるし。いまはライブによってキズの印象が違うかもしれないです。裏公演(<キズ BLOG MAGAZINE 限定「三大都市裏公演」>)なんか私服でやってますからね。

──来夢さんのいろいろな一面が出るようになりましたね。

来夢:余裕が見せられるようになったのかな。曲のこともあんまり話したくなかったけど、いまなら話せることも多いしな。例えば「Bee-autiful days」リリース時は、コロナでインタビューがなくてどこにも一回も話してないんですけど、あの時ってド鬱だったんですよ。いまだから言えますけど、飯も食えないし何も考えられない。朝も起きれず夕方に起きて、気づいたら寝る時間……なんていう生活。死にそうになりながらギリギリ保って書いた曲です。こんな日々に何の価値があるんだっていう皮肉を込めて「Bee-autiful days」です。



──ギリギリの状態で作った曲だったんですね。

来夢:今だから言える話ですね。たまたま調子が良かった日に近所の定食屋にいって。そこで聴こえてきた包丁で切る音のテンポが心地よくて、「これを曲のテンポにしよう」としたら「このテンポって「ピンクスパイダー」と一緒だ」って気づいたんですよ。ちょっと運命を感じるじゃないですか。「音楽に救われることってやっぱりあるんだな」って思いますね。最後の方の歌詞の《ちゃんと愛され》からの部分が象徴的かな。「Bee-autiful days」は表現するひとたちにとっての掟というか、ステージに立つ時の心得を生意気ながら残したつもりです。

──リリースされて数ヶ月経ってから曲を知るのも楽しいですね。

来夢:あの曲は、本当はしっかり解説したいんですよ。例えば歌詞にはメンバーの物語が書いてあります。《冷蔵庫の「DROP DEAD」》っていうのは、reikiが17か18の頃の話。彼の家のちっちゃい一人暮らし用の冷蔵庫にベタベタとステッカーが貼ってあって、そこにきったないマッキーで「DROP DEAD!!!」て書いてあったんですよ。

──念を感じます(笑)。

来夢:聞いたら「自分で書いた」って言うんですよ。「めちゃくちゃ怖いなこいつ」って思ったっていう(笑)。ほかにも、《チキンも吐きな》は僕がコンビニのチキンを吐きながらステージで歌っていた話とか。この曲は、キズのテーマソングですよ。

──背景がわかると曲の楽しみ方も増えますね。

来夢:おもしろい話たくさんあるんだけど、誰も聞いてくれないからここで初めて話しました(笑)。もう時期ハズレちゃったけど、それもいいなって許しちゃってる自分もいるんですよ。人に何も言わずに曲だけ楽しんでもらって、いま聞くと新曲のように聞けるかもですね。


◆インタビュー(2)
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