【インタビュー】ONCE、自然体で多彩な活動を続ける杉本雄治の今と未来
■闇にある感情を解き放ってくれるのが音楽だと思っているので
■「夢でもし逢えたら」はその差が如実に出ている楽曲になった
――聴く音楽とか、変わってきました? この1、2年で。
杉本:そんな変わらないかな。昔から幅広く、という感じだったので、そんなに変わっていないかもしれないです。でもONCEの方向性というか、目指すものとしては、自由に音楽を楽しんでいる部分をより伝えたい場所だなと思っているので、海外だったらジェイコブ・コリアーとか、ああいうアーティストがすごく憧れなので、そこはすごく聴いていたりしますね。
――やはり洋楽メインですか?
杉本:そうですね。日本の音楽も聴くようにはしているんですけど、やっぱ今の日本は音数が多いというか、情報量の多い音楽が多数派だと思っていて、僕はそことは違う方向でやりたいというか、ブームに乗りたい感じは別にないので。あまりそこは意識せずやりたいなと思っています。
――機材の進化とかは?
杉本:サポートのお仕事もすごく増えているので、先月、鍵盤を買いました。今まではピアノがほとんどだったので、音色の良いステージピアノとシンセぐらいだったんですけど、いろんな音を求められるようになってきて、初めてワークステーション系のシンセを買いました。基本はPCで、プラグインで作った音をライブではシーケンスで出して、みたいな。
――マニピュレーターの役割もやるわけですね。なるほど。
杉本:あと、最近、森 大翔くんのサポートをやらせてもらっているんですけど、彼の中でギターでハモるのが流行りらしく、「1曲の中にギター何本入ってんねん」っていうぐらいなので。ありがたいことに、ギターも弾かせてもらっています。
――大変だけど楽しそう。ちなみに森 大翔さんって、10歳以上年下ですよね。どういう感じなんですか、一緒にやっていて。
杉本:保護者ですね(笑)。でもめちゃめちゃ刺激をもらっています。サポートは、もちろんどんな現場でも刺激をもらえるんですけど、森くんみたいに若いアーティストは特に、感性も全然違いますし、吸収力も違うし、言ったこともどんどん吸収して、それをやってのけてみせちゃうので、一緒にいて楽しいですね。キラキラしてるし、自分もこうだったのかな?とか思ったり(笑)。
――デビューの時にお会いした印象は、まさにそんな感じでしたよ。今もそうですけど。でも音楽って、それがあるからいいですよね。年齢を飛び越えられるから。
杉本:やっぱりそういう瞬間を見れてるのがすごい幸せだなと思うし、これからもしっかりやらせていただきたいです。
――ONCEの話に戻って、ニューシングル「夢でもし逢えたら」の話をしましょう。この曲は、さっきお話したビルボードライブで初披露した曲で、曲調は明るくアップテンポで、でも歌詞のテーマとしてはかなりシリアスな思いも込めているとう話を聞いています。もともと、どんな感じで作っていった曲ですか。
杉本:曲自体は、2023年に初めて一人のツアーをやった上で、ライブで熱量を持てる曲だったり、バンド感を出せる曲が欲しいなという部分で、素材というか元ネタみたいなものは以前からあったものだったんですけど、「この曲、ONCEでやりたいな」と思って引っ張ってきた感じですね。歌詞は、今言ってもらった通り、根源にあるのはすごく暗いところというか、喪失感みたいなものから生まれているんですけど、基本的に僕の曲は、わりとそういう曲が多いというのは自分でも思っているんですよ。光の当たらない闇にある感情を、外に解き放ってくれるようなものが音楽だなと僕は思っているので。特に今回は、その差が如実に出ている楽曲になったので、根源にあるものは今までとそんなに変わらないのかな?とは、自分の中では思っています。
▲「夢でもし逢えたら」
――喪失感、ですか。
杉本:そうですね。この曲の元ネタができたタイミングが、3年ぐらい前になるのかな。コロナ禍のタイミングで、みなさんの生活も大変な時代でもありましたし、自分自身も大切な人を失ったりだとか、バンドも止まってという、いろいろなことがありました。自分の中で色々考える中で…もちろんそこと向き合って、悲しい思いをちゃんと引きずって生きていくことも大切だと思いつつ、でもその人だったり、ものだったりと、過ごした時間の中で間違いなく自分を明るくしてくれた、前向きにしてくれたものはたくさんあって。それさえも思い出させてくれるような音楽が、自分の中で欲しいなという気持ちがあったので、それをこの曲に乗せたらいいなと思って作りました。
――この歌詞をマイナー調のバラードに乗せたら、全然違う感触になるだろうし、この明るくリズミックな曲調と歌詞の組み合わせに意味があるんだと思います。
杉本:ライブの中でも、その痛みだったり喪失感だったり、持っているものはそれぞれ違っていても、それを共有して、最終的には笑顔になって明日に向かえるような、そういう曲になればいいなという思いがありました。
――歌詞の中の「君」というのは、いろんなものを指している言葉ですか。
杉本:そうです。聴いてくださる方の、それぞれの「君」に当てはめてもらえたらいいなと思いますね。
――希望の歌ですよね。振り返った過去は悲しいかもしれないけど、目線は明らかに明日へ向いている。
杉本:そうですね。だから(歌詞の)一番、二番では、まだどこか自分の中で葛藤はありつつ、でも曲の中で前に向かって進んでもらえたらなという思いです。
――杉本さんらしい良い歌詞だと思います。ONCEになってから、積極的に歌詞を書くようになりましたけど、その点はどうですか。「もう全然書ける!」という感じですか。
杉本:いや、まだ苦手ですよ(笑)。苦手ですけど、やっぱり書くことによって気付かされるものは間違いなくあるし、自分の中にある思いを整理してくれる部分があるので、今は歌詞を書く時間が、苦しいっちゃあ苦しいですけど、それを書いたからこそ進めた部分もあったし、「次はもうちょっとこうしたいな」というものが見えてくるので。これからも自分で書いていきたいと思いつつ、でもさっきお話しした通り、やっぱ自分一人では生まれないものが、人との繋がりの中で生まれるということを再確認できたので、曲を作ることだったり、歌詞を書くこともそうなんですけど、今は別に自分一人でやることにこだわっていなくて。今後のONCEのスタンスとして、いろいろな人と創作して、そこで生まれる科学反応を楽しんでいきたいという部分があります。本当にいかようにもなれる場所だなと思っています。
――あらためて、この「夢でもし逢えたら」。どんな人たちに、どんなふうに届くといいと思っていますか。
杉本:ビルボードでもやったんですけど、やっぱりライブでやれるのが今は一番の楽しみなので。今月も対バンイベントがあるので(5月24日@下北沢シャングリラ<MEME SOUNDS vol.1>。対バンはFIVE NEW OLD)、ライブでぜひ聴いてほしいです。
――楽しみです。そのあと、今年の後半は、どんなふうに活動していく予定がありますか。
杉本:早く曲を書いて、アルバムを出して、ツアーをするのが目標です。頑張ります。
――次の作品はこうなりそうとか、なんとなく方向性は見えていますか。
杉本:最初のアルバムの時よりは、自由度が増してるというか。イメージしているものはあるので、できるんじゃないかと思います。
――サポートもたくさんやりつつ、ONCEとしての活動もしっかりやっていく。今、間違いなく、バンド時代よりも忙しいですよね。
杉本:忙しいです(笑)。でも結局、一つのことをガーッとやっていると周りが見えなくなって、行き詰まっちゃったりするんですけど。そこは良い意味で、気分転換と言ったら失礼ですけど、気持ちを切り替えてやれる場所がほかにあるので、それはすごくありがたいなと思います。
――ONCEとして、杉本雄治として、今後の多彩な活動に期待しています。
杉本:ありがとうございます。ミュージカル(*音楽を担当するミュージカル『無伴奏ソナタ-The Musical』/7・8月に東京と大阪で公演)もあるので、そちらもぜひチェックしてください。
取材・文:宮本英夫
ヘアメイク:Kaco(ADDICT_CASE)
リリース情報
2024.5.15 Digital Release
ST/DL:https://a-sketch-inc.lnk.to/ONCE_yumedemoshiaetara
ライブ・イベント情報
2024年5月24日(金)
下北沢シャングリラ
open 18:15 / start 19:00
\5,500(税込) / スタンディング
w/ FIVE NEW OLD
<-VARIT. 20th Anniversary->
KOBE Goodies Collection
Birthday Special
2024年7月23日(火)
神戸VARIT.
open 18:30 / start 19:00
\4,400(税込) (+1drink \600)
w/ The Songbards
リリース情報
1. Stay With Me(at Billboard Live TOKYO 2024)
2. ツキニウタウ(at Billboard Live TOKYO 2024)
3. Woman "Wの悲劇"より(at Billboard Live TOKYO 2024)
4. Squall(at Billboard Live TOKYO 2024)
5. Amazing Grace(at Billboard Live TOKYO 2024)
6. Dusk(at Billboard Live TOKYO 2024)
7. 愛とか恋とか(at Billboard Live TOKYO 2024)
8. 記憶(at Billboard Live TOKYO 2024)
『ONLY LIVE ONCE』
1. Crossroad
2. Stay With Me
3. 愛とか恋とか
4. Squall
5. Amazing Grace
6. Dusk
7. 記憶
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