【インタビュー】Qaijff、乳がん宣告から闘病、事実婚発表。激動の1年から生まれた音楽への想い
■この経験をした自分から今後生まれる表現が楽しみ
──2本のライブを予定どおり終え、2023年4月19日には森さんの乳がんを公表。同時に、バンドの活動休止はしないという選択をされました。
内田:活動休止を考えなかったわけではないです。だけど、選択肢を並べてみて、2人で悩んだ結果、「すべてをストップさせるのは違うよね」と早い段階で意見がまとまりました。ライブができるかはわからないにしろ、楽曲制作はできるんじゃないかって。
森:命に関わる病気なので、怖さは当然あったんですけど、私たちの身近には20代で乳がんを経験した、今もタレント活動をしている(元SKE48の)矢方美紀ちゃんがいて、彼女の存在がすごく大きかったんですよ。
──矢方さんとは、これまで楽曲制作やライブを通して繋がりがあったんですよね。
森:そうです。美紀ちゃんが抗がん剤治療を受けながらも、変わらず仕事が続けられる姿を見せてくれていたから、私も活動休止をしないっていう判断がすぐにできたところはかなりあります。実際、病気のことも相談に乗ってもらったり。もし彼女がいなかったら、どうしたらいいかわからず、「まずは完全に休む」と言っちゃってたかもしれません。
内田:どんな選択も間違いじゃないですよね。人それぞれでいいと思います。Qaijffの場合は、治療をしながら続けることを選んだというだけで。
森:自分たちにとっては、近くに美紀ちゃんがいてくれたこと、乳がんの情報を以前から発信してくれていたこと、今も元気に続けてくれていることで、とても救われたというか、力になったんですよね。「私もやれる」「大丈夫だ」と思えた。バンドを止めたくない想いを後押ししてもらえました。
──当時は森さんの直筆コメントを見て、どこか明るく振る舞っているようにも感じられたんですけど、今の話を聞いたら、素直な気持ちだったんだなって。
森:特に強がっていたつもりはなくて、「絶対に治してやるぞ!」と思ってましたね。でも、怖さや不安ももちろんありました。「この経験をした自分から今後生まれる表現が楽しみだな」という気持ちもあったり。いろんな私がいることを正直に書いたら、あの文章になったんです。
内田:活動休止をしない、前へ進んでいくと明言したものの、森がここからちゃんと回復できるのかという不安はすごくありました。2023年に予定していたツアーを白紙にしなきゃいけないのも心苦しかったけど、Qaijffを続けられるかどうか以前に、何よりも生きていけるのかどうかですよね。
森:治る方もいれば、治らない方もいる病気だと思うので。絶対に治ると信じようとしても、死のことは頭によぎりますよね。漠然とした恐怖があった。
──そんな中で2023年4月23日、名古屋グランパスの選手とサポーターからホームゲーム後にエールをもらえたのも、2人にとって大きな出来事だったんじゃないかと思います。
森:びっくりでしたね。もう嬉しすぎて……大号泣。「こんなに応援してもらったら、がんばるしかないじゃん!」みたいな。一生忘れられない日です。
内田:試合の3日くらい前にチームスタッフの方から「観に来ませんか?」とお誘いをいただいたんですけど、まさかあそこまで大々的なサプライズを用意してくださってるとは思ってもみなかったです。抗がん剤治療が始まる前のいちばん不安だった時期に、あんなに素敵な場所を作ってもらえて、シンプルに勇気づけられました。みなさんが掲げてくれた横断幕“Qaijff彩乃さん 共に乗り越えよう”の言葉にもすごく感動して、歌詞で言葉を届けることの意味を改めて考えさせられたような日だったなと。
森:あとは、こうやって激励してくださるたくさんのサポーター=グランパスファミリーの中にも、乳がんの人や重い病を抱えてる人がいるんじゃないかと思ったんですよね。だとしたら、今回こんなにありがたいサプライズをしてもらって、音楽でチームに関わらせてもらってるからこそ、自分たちの表現を通して生き方を見せたい。そうすることによってパワーを届けたい、返したいという気持ちになったのを覚えてます。
──乳がんの公表によって、いろんな温かい声や同じ病気を抱える人からのメッセージももらったんですよね?
森:はい。いっぱい応援していただいて、純粋にパワーがもらえたし、同じ乳がんの方からは勇気をもらえました。
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