ドキュメンタリー『ボン・ジョヴィ:Thank You, Goodnight』は、あくまで真実を伝えるもの
Photo by David Roemer
2024年、ボン・ジョヴィはデビュー40周年を迎えているが、彼らにとって史上初となるドキュメンタリー『ボン・ジョヴィ:Thank You, Goodnight』が、いよいよこの4月26日よりディズニープラスの『スター』を通じて独占配信開始となる。全4話で構成されたこのシリーズでは、ジョン・ボン・ジョヴィ自身やメンバーたちをはじめとする当事者、関係者たちの赤裸々な発言や、貴重映像をふんだんに盛り込みながら、バンドの長い歴史を彩ってきたさまざまな出来事の真相が明かされており、まずその第1回では、ジョンの少年期の姿やデビューに至るまでの経緯などが浮き彫りにされている。
特徴的なのは、このドキュメンタリー作品が、バンドの成功劇の裏側を探ることや歴史の検証ばかりに終始するのではなく、現在のリアルな姿にもスポットを当てたものになっていることだろう。たとえば近年ではジョンの声帯の不調についてもたびたび報じられてきたが、その治療過程や、そこでのジョンの心情なども生々しく伝えられている。それだけに彼らの未来を占ううえでも必見の作品といえるだろう。
そしてジョン・ボン・ジョヴィ自身は、4月上旬のある日、このドキュメンタリー公開に際してのインタビューに応え、次のように語っている。
「監督と話している中でまず決めたのは、虚栄心の塊のような作品にはしたくないということ、あくまで真実を伝えるものにしなければならないということだった。僕個人にとっての真実だけではなく、関わってきた全員にとっての真実という意味だよ。そこで仮に誰かと誰かの記憶が食い違うところがあったとしても、それぞれにとっての真実というものがあるわけだからね。だから、綺麗ごとばかりが描かれているわけじゃない。これまで40年間続き、さらにこの先も続いていくキャリアについて、きわめて正直かつ誠実に描いたものにしたいと考えたんだ」
この作品の監督を務めたゴッサム・チョプラは、過去にNBAのスーパースター、コービー・ブライアント(2020年、ヘリコプター墜落事故により41歳の若さで他界)をはじめ、スポーツの領域で数々のドキュメンタリーを手掛けてきた人物だ。今回、ジョンと同席する形で取材に応じてくれた監督は、ジョンの発言を受けながら次のように発言している。
「早い段階のうちから、このストーリーはジョン個人についてのものではない、ということが僕にはわかっていた。これは彼自身ではなくバンドについての物語であり、それを描いていくうえでは、創設メンバーや現メンバー、そしてボン・ジョヴィを作りあげるために貢献してきた多くの人たちに話を聞く必要があった。しかも実際、40年分の逸話やライヴ映像などが記録として残されていたわけだよ。メンバー自身の手で記録されてきたものもあれば、当時のMTVなどの映像も残っていたからね。ただ、ジョン自身の現実やそうした素材を観察していく中で、僕には歴史ばかりではなく現在進行形のストーリーが見えてきて、それを含めたものにしたいと考えるようになった。同時にジョンは、先ほど彼自身も言っていたように、彼自身が実際に歩んできた道程を正直に、ありのままに描きたいと望んでいた。ジョンは今現在も変わらず、彼自身の治療と回復に向けてとても集中しているんだ。そういった現実もあるだけに、単なる40周年の回顧的な作品にせずにおくことが、僕にとっても彼にとっても重要だった」
実際、チョプラ監督は過去にジョンをはじめとするボン・ジョヴィの面々と直接的な繋がりを持っていたわけではない。しかし今回の制作を通じ、自身がこれまでに関わってきたアスリートたちに通ずるものをジョンに対して感じていたのだという。
「僕はこれまでアスリートたちと仕事をしてきた。ただ、ジョンのことを知れば知るほど、彼の仕事への取り組み方、リハーサルなど作業全般と向き合う姿勢などに、僕がこれまで観察してきたアスリートたちの姿と重なるものがあることに気付かされた。リーダーという立場にある優れたアスリートもたくさん見てきたけれど、そうした人たちには才能だけではなくストイックさ、何があっても負けないという気概、責任感といったものが備わっている。チーム・スポーツの偉大なリーダーたちが持っているそうした特質のすべてを、ジョンは持ち合わせているんだ。しかも彼は40年も音楽活動をやってきているけど、そんなにも長きにわたり活躍を続けてきたアスリートというのは思いつかないよ(笑)」
そしてジョンの側も、チョプラ監督との仕事には新鮮さを感じていたようだ。彼は次のように語っている。
「正直、ゴッサム以外に候補は考えていなかったし、彼のスポーツ・チームに対する理解度や仕事に対する姿勢、スピリチュアルな両親のもとで育った精神性、そしてこの40周年記念作品を通して僕が何を伝えようとしていることに対する解釈といったものすべてを踏まえたうえで『彼しかいない!』と思ったんだ。ただ、さっきも言ったように、自分たちの虚栄心を満たすための作品には絶対したくなかったから、制作していくうえでの手綱は彼に渡さなければならなかった。だから僕自身はこの企画のプロデューサーではないし、編集作業などに加わることも一切していない。一方で僕は、自分自身の治療と回復に努め、ニュー・アルバムの制作に集中してきた。そして結果、こういう形に落ち着いたことについては、とても嬉しく思っているんだ。リスクの伴う制作だとも感じていたけど、この出来栄えには満足しているよ。これを観てくれる人たちが作品を気に入ってくれるかどうかは僕らにコントロール可能なことではないけど、ボン・ジョヴィにとっての最初の40年間をこんなふうに表現できたことに、とても喜びを感じているんだ」
さらにジョンは、すでに配信リリースされている最新シングル「レジェンダリー」に対する世の反響、そして6月に発売を控えている4年ぶりの新作アルバム『フォーエヴァー』の完成度についても満足を口にしている。
「「レジェンダリー」は新曲というより、もはやヒット曲だよ(笑)。正直、音楽業界歴40年を経てきた自分たちに「レジェンダリー」のようなラジオ・ヒットを生み出せるなんて思ってもみなかったことだ。この曲は今後の僕の人生においても、きっと大きな存在になっていく。それが今、自分でもわかっているんだ。しかもあれ以上にすごいと思える曲がアルバムには入っている。僕たちがこの20年間で制作してきた中でもベストな1枚になっていると疑わずにいるよ。バンドも僕自身もすごく満足しているし、6月7日に発売を迎えることになる。みんなが慣れ親しんできたボン・ジョヴィ・サウンドであると同時に、2024年ならではの現代的なボン・ジョヴィ作品でもある」
日本のファンにはすでに知られているはずだが、ここ日本において「レジェンダリー」は、フジテレビ系にて4月24日より放映中のドラマ『ブルーモーメント』の主題歌としても世間を賑わせつつある。このきわめてポジティヴなシングルに牽引される形で登場する最新アルバム『フォーエヴァー』の発売を心待ちにしながら、まずは『ボン・ジョヴィ:Thank You, Goodnight』で彼、らがこれまで歩んできた歴史と向き合ってみてはどうだろう?
取材・文◎増田勇一
『ボン・ジョヴィ:Thank You, Goodnight』
ディズニープラス「スター」で4月26日より独占配信
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◆「レジェンダリー」レーベルサイト
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