【ライブレポート】GLIM SPANKY、雨をぶっ飛ばす<The Goldmine Tour>日比谷野音セミファイナル「始まりの10年目にしたい」
GLIM SPANKYが3月24日、日比谷野外大音楽堂にて<7th Album『The Goldmine』Release Tour「The Goldmine Tour 2024」>の東京公演を開催した。全国23ヵ所を回る同ツアーのセミファイナルとなった日比谷野音公演のレポートをお届けしたい。
◆GLIM SPANKY 画像
そりゃあ雨は降らなかったほうがよかったに決まっている。しかし、デビューから10年を経てもなお、意欲的に取り組み続けているさまざまなチャレンジもしっかりとセットリストに組み込みながら、GLIM SPANKYの芯にはロックがあることをいつも以上にアピールしようとしていたように見えたことを考えると、雨の中の熱演はシチュエーションとしてはぴったりだったんじゃないか。
「自分達のワンマンでもやったし、友達のライブもいっぱい見にきたし、いろいろな思い出がある思い入れの深い会場」とこの日、曲間のMCで亀本寛貴(G)も語っていたが、今回の雨の野音は、GLIM SPANKYがこれまで幾度となく野音のステージに立ってきた中でも一際記憶に残るものになったはず。雨に濡れて、風邪をひいてしまったという人がいたら、ほんとごめんなんだけど、この日のライブを見られた人はある意味ラッキーだったかもしれない…と、ここでは言っておきたい。
「雨なんかぶっ飛ばして、最高の夜にしよう!」──松尾レミ(Vo, G)
その言葉に鼓舞されたのか、ドラムの力強いキックが脈打つように鳴るミッドテンポの「The Goldmine」をじっくりと聴かせてから、サポートメンバーも含め全員で「オー、オー、オー」と歌うアップテンポのロックナンバー「褒めろよ」、キックの4つ打ちが客席を揺らした「Odd Dancer」と繋げていった序盤の3曲から、バンドの演奏と、それに対する観客の盛り上がりは早くも熱度満点だ。
この日、GLIM SPANKYが演奏したのは、昨年2023年11月にリリースした7thアルバム『The Goldmine』の全曲を軸にした全20曲。
「「The Goldmine」の歌詞にもあるんだけど、GLIM SPANKYはいろいろなことをやりたいんです。(デビュー10周年を迎えても)まだまだこれからだと思っているし、これからもフレッシュな気持ちでやっていきたいと思っています」──松尾レミ
伸びやかなメロディーが聴く者の胸を弾ませた「光の車輪」、開放弦の響きがエキゾチックなアコースティックギター2本のアンサンブルを聴かせた「真昼の幽霊(Interlude)」と、その「真昼の幽霊(Interlude)」をイントロにしたトラッドフォーキーでサイケデリックなロックナンバー「Summer Letter」、そして往年のニューミュージックを連想させるポップナンバー「ラストシーン」──前述の松尾の言葉を裏付けていたのは、中盤に演奏した『The Goldmine』からの曲の数々だ。中でもモダンなR&BのエッセンスをGLIM SPANKYのバンドアンサンブルに落とし込んだ「愛の元へ」と「Glitter Illusion」が、思っていた以上にライブ映えする楽曲になっていたことは1つの発見だったと言えるだろう。
情感あふれる松尾の歌とデュエットするように亀本が奏でるギターも含め、「愛の元へ」のミッドテンポの演奏に込めた熱が観客に伝わったということだと思う。亀本がワウを踏みながらファンキーなカッティングを閃かせた「Glitter Illusion」では、「東京!イエー!」という松尾のコールに観客が「オー!!」とレスポンスを返して、ライブをぐっと盛り上げる。
そして、「雨なんか関係ない。ロックンロールで盛り上がっていこう!」と松尾が声を上げ、その勢いのままなだれこんだのが「NEXT ONE」。力強いドラムに合わせ、手拍子を打ち鳴らした観客が「東京!」という松尾のコールに応え、「オー!!」と再びレスポンスを返すと、その熱気に気持ちを煽られたのか、亀本がまるでジミ・ヘンドリックスが憑依したようにステージに跪き、ギターソロを雨空に放つ。すると、今度はそのガッツが客席に伝わったのだろう。観客が「イエー!イエー!イエー!イエー!」とシンガロングの声を上げ、そこに生まれたのはアンセミックな興奮だ。
その興奮をさらに大きなものにするため、ドラマーとフロアタムを連打するベーシストが繰り広げるビートの応酬から立て続けに演奏した「怒りをくれよ」「不幸アレ」のアップテンポの演奏が雨雲を吹き飛ばしたのだろうか⁉ 一瞬、雨が止んで、「やった!最高じゃん!」と松尾が快哉を叫んだ展開はなかなかにドラマチックだった。
「野音はもちろん、(日本)武道館でもやれたし、フジロック(・フェスティバル)の一番大きなステージにも立ったし、この10年でいろいろな経験をさせてもらったけど、僕らは贅沢なのか何なのか、まだまだ行ってやると思っています。もっと貪欲に、もっと多くの人に届けたい。自分達がカッコいいと思うロックを作るという意味でも、もっとたくさんの人に知ってもらって、楽しんでもらえる音楽を目指すという意味でも楽しみにしていてほしい」──亀本寛貴
「もう次の作品に向けて、めちゃめちゃ動いているので、近々、発表があると思います!」──松尾レミ
再び降り出した雨の中、亀本がディレイを使ってギターの音色をきらきらと鳴らしながら披露した「Innocent Eyes」は、亀本曰く「みんなと今までどおり(コロナ禍以前)のライブができるんじゃないかという希望のもと、作れたおかげで開放感や爽やかな気持ちが感じられるアルバムになった」という『The Goldmine』を象徴する楽曲だ。
「みんなの声が聴きたい。よかったら歌って! こういうメロディーです」──松尾レミ
松尾が観客を導くように冒頭のシンガロングをまず歌ってみせたことからも、ステージを見つめる観客の瞳を意味するタイトルを持つこの曲を、2人がライブで観客と1つになるために作ったことは明らかだ。その包容力は今後、GLIM SPANKYの大きな魅力になっていくに違いない。
「歌いながら、みんなを見ていると、その曲の思い出がそれぞれにあることがわかるんです。GLIM SPANKYの、いろいろな時代の曲がみんなのものになっていることがうれしいし、それが直接見られるからツアーがとても好きなんです。GLIM SPANKYの音楽仲間達はロックにまつわるいろいろなものを大事にしている人が多い。それを見るのが好きなんです。こういう人達が私達の友達になってくれているんだって思うと、とても勇気をもらえるし、それが曲を作る時のパワーになるんです。最高の音楽友達になってくれてありがとう!」──松尾レミ
「10周年なんですけど、新しいGLIM SPANKYを見せて、始まりの10年目にしたい」──亀本寛貴
それぞれに感謝と新たな決意を語ってから演奏したのは、「大人になったら」。今回のツアー中、地方遠征から新宿駅に帰ってきたとき、名もなきシンガーが路上で歌っていたこの曲を聴いたことが今回、セトリに入れるきっかけになったと松尾が語ったエピソードもさることながら、それ以上におもしろかったのが、こういうフォーキーなバラードを演奏しても、曲のニュアンスとしてはロック以外の何物でもないと言えるものになってしまうところがGLIM SPANKYの真骨頂なのだと改めて感じられたことだった。大人になって、世の中のことがわかったとしても好きなものは好きと言いたいという持ち前の反骨精神を歌っているのだから当たり前と言えば、当たり前だが、亀本がアウトロに加えたギターソロが荒々しいプレイになったのは、松尾の歌の調子と言葉に共鳴したからこそと、これもまた改めて思ったりも。
反骨精神と言えば、この日、ライブの冒頭で「たぶんライブ中に雨は止む!」と言って、松尾は負けん気の強さを窺わせたが、アンコールに応え、ステージに戻ってきた時には雨が上がっていたことも忘れずに書いておこう。
タイトルコールに客席が沸いたアンコール1曲目の「サンライズジャーニー」は、ローリング・ストーンズ風のリフが鳴るロックンロールだが、さらに2曲、ともにロックンロールの「愚か者たち」と「ワイルド・サイドを行け」と繋げたところに現在のGLIM SPANKYの心意気が表れているのだろう。
「始まりの10年目」にしたいと語ったライブの最後を、“ワイルド・サイドを行け ヤバい場所で今夜会おうぜ”と歌いながら締めくくるなんて、とってもイカしているじゃないか。
取材・文◎山口智男
撮影◎上飯坂一
■<7th Album『The Goldmine』Release Tour「The Goldmine Tour 2024」>3月24日(日)@東京・日比谷野外大音楽堂 SETLIST
02. 褒めろよ
03. Odd Dancer
04. 光の車輪
05. 話をしよう
06. 真昼の幽霊(Interlude)
07. Summer Letter
08. ラストシーン
09. 愛の元へ
10. Glitter Illusion
11. NEXT ONE
12. 怒りをくれよ
13. 不幸アレ
14. 美しい棘
15. Innocent Eyes
16. 大人になったら
17. リアル鬼ごっこ
encore
en1.サンライズジャーニー
en2.愚か者たち
en3.ワイルド・サイドを行け
https://glimspanky.lnk.to/the_goldmine_tourTP
■NHK BS番組『ワースポ×MLB』
放送時間:
月曜日~金曜日 22:45~23:24 ※39分 (3月の平日は 22:40~23:19)
土曜日 22:30~23:09 ※39分
日曜日 21:00~21:44 ※44分
▼出演者/解説者
MC 平日:三宅絹紗(セントフォース)
MC 土日:菊池柚花(スターダストプロモーション)
解説者:井口資仁 小早川毅彦 斎藤 隆 岡島秀樹 福留孝介 岩村明憲 五十嵐亮太 岩隈久志 川﨑宗則 ほか
https://www.nhk.jp/p/wsmlb/ts/Y1JX4RN5N2/
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