【インタビュー】deadman、“道徳の系譜”を意味する19年ぶりアルバムに混沌と美「矛盾や嘘はない。それこそ20年前から」

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■ビジュアル系のカテゴライズではないですよね
■このバンドって3/4人がBOØWY好きだから(笑)


──またアルバムのリードとして「静かなくちづけ」がシングルリリースとなりますが、この曲をチョイスしたのは?

aie:シングルとしてMVも作るということで、やっぱり初めましての方や多くの方々に聴いてもらう曲として入りやすいのかなと思って選びました。混沌とした音楽をやっているというdeadmanの側面と、美しい曲をやっているというdeadmanの側面。その両極端のうちの後者というか。ただ、これを聴いて、もっとdeadmanを聴いてみようと初めて手に取ると、最新アルバムの1曲目が「in the cabinet」という…そこに俺たちの性格の悪さが出てる(笑)。もう蟻地獄に近いですよね、「おいでおいで」と誘っておきながらも。

──終いには、抜け出せられなくしてしまうという(笑)。「静かなくちづけ」は非常に繊細な美しさがある曲ですが、特に眞呼さんの抑えたボーカルや歌声が印象的です。

眞呼:この歌い方って、実は以前ちょっと試したことがあるんです。しかも人の曲…MUCCのカバーで試したんです。思いのほか、それがよかったんですよね。

aie:「死の産声」というMUCCとのスプリットシングル収録曲です。YUKKEが書いた曲なんですけど、最初にこの曲を聴いたときの僕の印象が、安全地帯だったんですよ。「YUKKEの新曲いいじゃん。安全地帯みたいで」って眞呼さんとも話をしていた上で、歌録りのときに「じゃあ、ちょっと玉置(浩二)さん入れてみましょうか」みたいなディレクションを(笑)。

眞呼:玉置浩二も入っているけど、僕個人は中森明菜っぽくしようかなとかね。思いのほか、ばっちり楽曲にも合ったよね。もちろんよくしようとして、ああなっただけなんですけど。それを「静かなくちづけ」でもやっています。もちろんその歌い方が似合う、曲がよくなるという視点からです。


──19年ぶりのオリジナルアルバムが完成して、今、率直にはどう感じていますか。

aie:うまくいったなと思ってます。たまたまですけどね。並べてみたら、まとまってるなと思いました。

眞呼:ビジュアル系のカテゴライズではないですよね。そこは、聴いている人が理解してくれたらいいかなと。私がどぎついメイクをしているので、ビジュアル系バンドか?って思われるんですけど、音楽ってそこじゃないんですよ。だから、ジャケ買いはしなくてもいい。純粋に曲を聴いてもらえればいい。

──そうですね。どこまでもdeadmanでありながら、4人それぞれのバックボーンが出た曲にもアレンジもなっていると思います。なおかつ、この4人だからなのか、確実にポップ性が上がっているように感じてます。

aie:はい。何人か確実に、布袋寅泰がいる感じ。このバンドって3/4人がBOØWY好きだから(笑)。どうしてもアレンジに困ると、「布袋に聞いてみます」ってBOØWYの曲を聴いたりして。好きだからこそリスペクトを込めて「ここはBOØWYっぽくしてみよう」ってこともできる。それを理解した上でカッコよくアレンジするということを楽しみながらやってますね。

──キャッチーさの由来はBOØWYなんですね。世界観や歌の意味合いがすべてがわからなくても、確実に伝わる、刺さるものがある、それが今回のアルバムでより明確になっていると思います。

aie:僕の体感でしかないですけど、コンピュータで作った音楽も素晴らしいと思いつつ、細胞レベルで記憶に残るものって、やっぱり人間が出してる音だなと。特に居酒屋とかで流れているBGMで気になるのって、“あれ!? これの曲ってボーカル直してないよね?」みたいな曲のほうが耳を惹くんですよ。それは人間ぽさを感じるからかなと思ってて。だから、人間同士が互いに目の前で向き合って作った音楽だってことがわかるような作り方を心がけていますね。4人が顔を向き合わせて曲を作って、レコーディングをして、というのが聴いて感じ取れるように。

眞呼:歌も上手さだけじゃない…まぁ上手さはなきゃいけないですけど、きれいにはしたくないんですよ。美しい歌声を聴いている、というのではなくて、言葉の感情を聴いている、となったらいいですね。

aie:アルバムを聴いて“ライブに行ってみよう”と思って観に来てくれたら、音に矛盾はないと思うんです。そういう嘘はない。そうしていきたいとずっと思ってますね、それこそ20年前から。


▲リテイクアルバム『living hell』

──この後、全国ツアー<deadman TOUR 2024「道徳の系譜」>もスタートしますが、ツアー会場限定(通販限定)でリテイク作品『living hell』もリリースされます。「blood:2.0」にMUCCのミヤさん、「follow the night light:2.0」にシドの明希さんがゲストとしてレコーディング参加していますが、これはどういう経緯からですか?

aie:明希は以前から、酒飲みながらですけど冗談半分で「今度やらせてくださいよ」と言ってくれてたりしてたんです。オリジナルアルバムを作るにあたってツアーも回るし、kazu君からも「最近ライブの定番になっているけど、まだ録ってない曲は録っちゃおうよ」っていう提案もあったので。

──そもそも、リテイクアルバムリリースの意図はそういうところにあったんですね。

aie:そうですね。「じゃあ、今回もリテイクを出しましょうか」という話が上がって。収録曲を決めたとき、「「follow the night light」を入れるなら、明希に弾いてくれるか一度確認しよう」という感じで。それも流れでそうなったのに近いですね。「じゃあ、ミヤ君にもギターソロを弾いてもらったら面白いかもね」っていう話から、本人に連絡してとか。楽しみながら作ってる過程のなかで、そこにふたりの友だちがいたっていう感じですかね。

──それにしてもこの短期間でよくオリジナルアルバムとリテイクアルバムを完成させたな、という感じですけど(笑)。

aie:ボロボロですよ、ツアー前にして(笑)。

──ここから新しいオリジナルアルバムを引っ提げて、ということでは久々のツアーになると思いますが、また新たな感触や思いも芽生えそうですね。

aie:緊張というか、初めて演奏する曲が多いので。全会場もちろんちゃんとやりますけど、もしかしたらツアーファイナルには曲のアレンジが変わっている可能性もあるし。

眞呼:確かに。

aie:テンポが変わってるとかね。それに一回もやらなかった曲が存在する可能性もあり得るなと思ってて。やっぱりステージに立って、お客さんの前でやると、“あれ、こっちのほうがいいかもな”っていうのは結構昔からあるんですよね。変わる可能性は大いにありそうです。それと、「2025年、deadmanは25周年らしいんです」って話をkazuくんから聞いたんですね。kazu君の中にはプランがあるみたいなので、それをツアー中に話し合って、ぼんやりとしたものでもなにかが見えればなと思ってますけどね。


──また忙しくなりそうな…。

aie:ただ今回、いいアルバム作ったなというのは自覚もあって。今、評価されなくてもいいけど、10年後くらいに評価されてもいいなと思えるくらい、いいものができたと思っているんです。まだレコーディングが終わったばかりですけど、燃え尽きたとか、また新しいものへ向かっているというよりは、まずは作ったものを表現していきたいのが大きい。ツアーが終わるまでは、2025年のことはぼんやりしてたいですけどね(笑)。もうちょっと余韻に浸りたいというか。

──2019年の復活から、deadmanとして、ずっと濃密な時間を過ごしていますしね。

aie:2019年に活動を再開したものの、コロナ禍のせいで活動ができなくなって。(視野に入れていた)解散というものがなくなって、deadmanを続けようとなったくらいから思ったことがあって。世の中、どうなるかわからないから、今決定できることをやっていこうと。そういう判断でしかできない。本当に流動的というか、フットワークの軽さ、瞬発力だけで物事を決めていく3年間だったんです。うまくいってるとしたら偶然だし、頭からこうなることを考えて動いてないんですよね。

眞呼:もし頭からなにか考えているんだったら、復活の最初の瞬間にオリジナルアルバムを引っ提げてやっていたと思うんです。でも、そうじゃない。最初は、“終わらせよう”というところからなので。で、今がこういう状況だということこそ、本当に生き物というか。“こうなりました”というのを私たちdeadmanも再確認している状態ですね。

aie:kazu君と晁直を入れて4人になって、一緒にいる時間がすごく長いんですね。晁直もkazu君もdeadmanをやりたいというモチベーションがあるから。「新しいもの作りましょうよ」というのがあって、それでできたのが今回の作品。全員が「やりたいね」と思っているから続けていられるのかな。楽しいですからね、一緒にいて。楽しくライブをやっていて、終わっても朝まで一緒にいたりするから。そういう仲の良さもすごく大きいかも。

取材・文◎吉羽さおり

■オリジナルアルバム『Genealogie der Moral』

2024年3月30日(土) CD発売
2024年6月03日(月) 配信開始
【CD】DCCA-127/3,850円(税込)
▼収録曲
01. in the cabinet
02. 真夜中の白鳥
03. rabid dog
04. 静かなくちづけ
05. ミツバチ
06. the dead come walking
07. 猫とブランケット、寄り添い巡り逢う産声
08. 零
09. 宿主
10. dawn of the dead




■ライブ会場/通販限定リテイクアルバム『living hell』

2024年3月30日(土) CD発売
【CD】DCCA-126/3,000円(税込)
※ライブ会場&通販限定販売
通販:MAVERICK STORE:https://www.maverick-stores.com/deadman/
▼収録曲
01. dlof facs:2.0
02. please god:2.0
03. blood:2.0
04. follow the night light:2.0
05. additional cause for sorrow:2.0
06. please god:2.0 (ORIGINAL KARAOKE)
07. blood:2.0 (ORIGINAL KARAOKE)
08. follow the night light:2.0 (ORIGINAL KARAOKE)
09. additional cause for sorrow:2.0 (ORIGINAL KARAOKE)
▼Guest Artist
ミヤ(MUCC):M3「blood:2.0」
明希(シド):M4「follow the night light:2.0」


■アルバムリリース記念インストアイベント

3年31日(日) TOWER RECORDS 新宿店
4月21日(日) TOWER RECORDS 名古屋パルコ店
4月28日(日) TOWER RECORDS 福岡パルコ店
5月12日(日) TOWER RECORDS 札幌パルコ店
5月19日(日) TOWER RECORDS 梅田NU茶屋町店
※詳細は各店舗にて

■全国ツアー<deadman TOUR 2024「道徳の系譜」>

▼2024年
4月06日(土) 金沢・金沢vanvan V4
4月07日(日) 長野・長野ライブハウスJ
4月13日(土) 京都・京都MOJO
4月14日(日) 岡山・岡山IMAGE
4月20日(土) 愛知・名古屋E.L.L
4月21日(日) 愛知・名古屋E.L.L
4月27日(土) 福岡・福岡INSA
4月28日(日) 福岡・福岡INSA
5月04日(土) 埼玉・HEAVEN'S ROCK さいたま新都心 VJ-3
5月05日(日) 宮城・LIVE HOUSE enn 2nd
5月11日(土) 北海道・札幌Crazy Monkey
5月12日(日) 北海道・札幌Crazy Monkey
5月18日(土) 大阪・アメリカ村 DROP
5月19日(日) 大阪・アメリカ村 DROP
6月01日(土) 東京・新宿BLAZE
▼チケット
前売6,500円(税込)
※スタンディング
※入場時ドリンク代別途必要
https://eplus.jp/deadman24-official/


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