【インタビュー】HALLEY、<SXSW>で確かな収穫を持ち帰った気鋭バンドの展望を聞く

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■<SXSW>の手応え

──遅ればせながら、<SXSW>への出演、お疲れ様でした。オーディエンスの反応はいかがでしたか?

太賢:熱かった……。

直人:本当になんか……気持ちよかった。

太賢:なんだろう、家みたいでしたね。まったくアウェイ感がなかったです。

直人:僕たちは好きな音楽がUSやUKのものばかりですけど、自分たちの音楽が向こうでどう聴かれるのかってのはやっぱり不安で。

太賢:他の日本からの出演者は、パフォーマンスに独特な持ち味のあるバンドが多かったんです。そういうバンドのほうが受け入れられるのかなというのは思っていたんですけど、僕らのときはただ音楽に湧いてくれた、ちゃんと伝わった感じがして。



直人:成功体験だったのは、僕らのやるR&Bが向こうの人たちの耳にもR&Bとして伝わっているんだってことです。自分たちの聴いてきたものがちゃんと言語化できてるんだなって。

太賢:僕らは英詞ばかりなので日本語の物珍しさもなく、普段と変わらない格好でステージに上がったので見た目の鮮やかさもなく、音楽性としても目新しいものではない。彼らの聴いてきたR&Bと似ているけど絶妙に違う、というところが、不気味の谷みたいな感じで嫌がられたりするのかなと思ってたんですが、そんなことはなくて。

継:人もパンパンに入ってて。「本当にいいときの反応」ってわかるじゃないですか? 「マジでやばい!」みたいなことを言ってるんだろうなってのが目に見えて。

太賢:他のオースティンのバンドを観て回っても、ちゃんと同じラインで戦えてるんだなって実感を持って帰れた。

直人:Instagramで現地の人が投稿してるのを見たんです。オースティンで観たいいバンドが羅列してあって、他の現地のバンドと横並びでHALELEYの名前があったんですよ。それがうれしかったですね。

■『From Dusk Till Dawn』について

──1stアルバム『From Dusk Till Dawn』がリリースされましたが、こちらはどのようにして制作が進んでいったのでしょうか。

▲アルバム『From Dusk Till Dawn』


太賢:アルバムの構想前からあった先行曲を回収する形で「From Dusk Till Dawn」という曲を作りました。映画からタイトルだけ借用して、僕らなりに構想を膨らませて。

直人:一番軸になっているテーマは時間。中でも特に曖昧な時間です。Dusk(夕暮れ時)とかDawn(明け方)とか。


──「朝」「夜」とわかりやすい時点ではなく、グラデーションの時間帯というか。

直人:そうですそうです。夕暮れ時と明け方って似たような空模様だったりしますよね。そういうどっちとも取れるような曖昧さを大事にしたくて。

高橋:太賢が白昼夢っていうコンセプトで作った曲があって、それを活かす形でアルバムの1曲目の「Daydream」ができました。

太賢:「Daydream」は夕日が語りかけてくるという曲、対して11曲目の「From Dusk Till Dawn」はSunshine(陽だまり)に語りかける曲で、対を成しています。曖昧な時間の中で生きている僕たちをありのままに、音楽を通して語っている。そういうアルバムです。


──通して聴かせていただきましたが、朝の情景を歌った曲の後に昼、夜と続く構成ではないですよね? 曲順は時間の経過とリンクしないんだなと。

直人:そうですね。それこそ曖昧な時間の流れを表現したかったので、朝、昼、夜という順番にはしたくなかったんです。それと、音楽的な繋がりもいいものにしたかったので、両面ですり合わせていった感じです。

太賢:いろいろ考えて最適解がこれって感じですね。

直人:今回のアルバムの前に出したEPは『Daze』。目の眩む光というニュアンスから、聖書の「光あれ」という一節にも繋がる。そういう部分は大事にしたくて。

継:まず光があったから、同音異義語のDays=日々が始まる。そこからより時間というものにフォーカスしていったのが今回のアルバムですね。

太賢:今回は曖昧な時間というものをテーマにしましたけど、曖昧なものって、ディテールが込んでいるから曖昧なんだと思うんです。

──ぼんやりと作ったから曖昧なんじゃなく、きめ細かく情報量が詰まっているから曖昧なんだと。

太賢:そうです。だから、1曲1曲を見ると細部がすごく作り込まれたものになっているはずです。

──サブスクリプションの時代になって、アルバムという単位が有効でない場面が増えているかと思いますが、今後もこういったコンセプトに則った作り込みをしていく?

直人:したいですね。

太賢:今思ったけど、直人ってかなりアルバム単位で音楽を聴いてるよね。1人のミュージシャンの作品すべてをひとまとめに語るんじゃなく、「このアルバムが好き」っていうのをしっかり持ってるというか。僕らもその影響を受けてると思う。

継:確かに。

直人:そうかもしれない。なんというか、僕らは全員考えるのが好きなんですよね。正しいことを考えているかは別として、考えること自体が好きで、やめられないというか。だからアルバムを作るってなったときにコンセプトを考えないわけにはいかない、みたいなところがあると思います。


──では、最後に今後の展望を聞かせていただきたいです。

直人:世界中で聴かれたいですね。あと、「Isn't She Lovely」や「The Chicken」みたいに、自分たちの作った曲がセッションの定番曲になってほしい。

──それこそ、数十年後のTHE NALEIOで演奏されているかもしれませんね。

直人:そうですね、まずはコピバンやってほしいですね。

継:僕は、アジアのいろんな国でライブがしたい。あとは自分の好きな人たちと対バンしたい。ブルーノートで来日公演ってなったときに「一緒にやろう」って声かけてもらえるような。

──具体名、言っておきましょう。

継:そうですね、スノー・アレグラ、UMI、フォニー・ピープルとか、一緒にやれたらうれしいです。

太賢:僕個人的には、今以上にヴォーカリストとして対話できる人になりたい。もっと繋がれる歌を歌いたいです。今はどうしてもマスクをしてる人が多くて、表情が見えないことが多いですよね。それでも歌を通してあの人の心が見えるなって思えるところに行きたい。あとは継の言ったこととかぶりますけど、韓国と台湾でやりたい。

直人:僕らは「アジアンソウル」っていうのをテーマにしてるんです。アジアを代表できる、ソウルを表現するバンドになりたいと思っていて、中でもまずは韓国や台湾で演奏してみたい。「ジャパニーズソウル」ではないんです。HALLEYは日本人っていうアイデンティティのある人だけじゃないので。太賢は韓国、晴は香港にルーツがあって。

太賢:だからfrom Japanじゃなくfrom Tokyoと名乗ってます。全員のルーツが日本だけにあるわけではない、あくまで今東京を中心に活動している、というところで。バンドとしての最終目標はアジアのソウルというものを確立すること。それも従来的なアジアっぽいものじゃなく。

──オリエンタルな節回しとか、ヨナ抜きとかじゃなくて。

直人:そうですね。スタイルとして具体的にどういうものなのかっていうのは模索中だと思います。

太賢:ただ、僕たちがやっている限りすでにアジアのソウルではある。

──実存としてアジアの人間たちがやっているわけですもんね。

直人:やっていく中で濾し出された音楽がそのままアジアのソウルと思ってもらえる日が来るかもしれないし、もっと構築的に考えて打ち出していく時期もあるかもしれない。

──なんにしてもオリエンタリズム的なおもしろがられ方じゃないところを目指すわけですね。

太賢:生半可な気持ちではできない。人生かけてやるものですね。

取材・文◎ヒラギノ游ゴ(ヒラノ遊)

  ◆  ◆  ◆

1stアルバム『From Dusk Till Dawn』

2024年3月8日発売
CD・¥2,750税込 YLLH-1001(PPTF-8160)
配信:https://TF.lnk.to/fdtd


収録曲順:
1. Daydream
2. Breeze
3. 'Cause It's Too Cold To Walk Alone
4. Comfy
5. Sugary
6. Who Is He? (Interlude)
7. Whim
8. Set Free
9. Clear Mind
10. Lemonade
11. From Dusk Till Dawn
12. Write Me a Love Song

CD取扱店舗:
TOWER RECORDS:渋谷/新宿/梅田 NU 茶屋町/なんばパークス/名古屋パルコ/名古屋近鉄パッセ/オンライン

<HALLEY 1st One-Man Tour “Daydreaming”>

3月28日(木)東京 @代官山SPACE ODD
OPEN18:30/START19:00

3月30日(土)大阪 @心斎橋CONPASS
OPEN17:30/START18:00

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