【インタビュー】EOW、ニューヨーク修行17日間のバンド成長記録「想像以上のことしか起きてない」

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ポップバンドEOWのLaco(Vo)とTomoaki(G)が、自身のルーツであるゴスペル音楽を体感するため、アメリカ・ニューヨークを訪れた。日本のインディーバンドが本場で自らの音楽性を高めるべく、修行と挑戦に明け暮れた音楽旅行だ。

◆EOW (エオ) 動画 / 画像

ゴスペル音楽の聖地ニューヨーク・ハーレムで90年続く、アポロシアターのオーディション企画『アマチュア・ナイト』をはじめ、ライブハウスのステージへの飛び込み参加、地元の音楽業界人たちとの接触、そして現地での新曲「balloon」初披露など、この旅行計画前には思ってもみなかった奇跡が続いて起こったのだという。しかし、それら全てを引き起こしたのは2人の音楽に対する情熱に他ならない。

ニューヨークで過ごす最後の夜に、17日間の修行期間を振り返りながら、感じたこと学んだことについて訊いたロングインタビューをお届けしたい。


   ◆   ◆   ◆

■アポロシアターのステージに
■いつか立ちたいとずっと思ってた


──まず、ニューヨークを訪れたきっかけは?

Laco:私たちEOWがインスパイアされている音楽がゴスペルミュージックで。小さい頃から地元のゴスペル教室に通ったりしていたこともあって、ルーツにゴスペルがありました。でも本場で見たことがなく、「ゴスペルをルーツに音楽をやってます」って自分が日本で公言していることにずっと違和感を感じていたんです。

──そもそもLacoさんとゴスペルの出会いは?

Laco:小さい頃に映画『天使にラブソングを2』を観て、「Oh Happy Day」を歌ってる男の子が覚醒する瞬間だったり、みんなで声を合わせた時の音に乗ったエネルギーみたいなものを感じて、それが人を感動させるんだってことに驚いたんです。音楽の力ってすごいんだって。人の声や音楽は、こんなにいっぱいの人を元気に、笑顔にさせることができるんだって映画を観て思ったことがきっかけです。「“ゴスペルのことが好きだ”ってこれからも自信を持って言えるようになりたい」ということをマネージャーのケンさんに相談した時に、「だったら行っておいでよ」と言ってくれて、今回のニューヨーク行きが実現しました。


▲Laco(Vo)、Tomoaki(G)

──Tomoakiさんとゴスペルとの出会いは?

Tomoaki:メンバー5人の中で唯一、ちゃんとゴスペル見たことないのが、自分とLacoだったんです。ケンさんから電話で「Lacoちゃんがニューヨークでトライするから、一緒に行く気ある?」って訊かれて。最初はピンとこなかったんですけど、“これ、自分の人生においてひとつの分岐点になりそうだな”と感じて、「行きます」って。

──そこからはどんな準備を?

Laco:ずっと憧れだったアポロシアターのオーディション『アマチュア・ナイト』が、年に2回しか開催されないことは知ってたんです。それが、私たちの旅行期間に開催されることに気づいて、「出るしかないじゃん」って鳥肌が立ちました。私の好きなローリン・ヒルやステーヴィー・ワンダー、ディアンジェロが立ったステージに、私もいつか立ってみたいとずっと思っていたので。

──まず、ニューヨークに到着した時の印象は?

Laco:“USJやん!”って思いました(笑)。私、関西出身なんですけど、年間パス持ってるくらいUSJに通ってたんですよ。なんかニューヨークの街並みがもう、そのままテーマパークみたいで。


▲アポロシアター

──ゴスペルの聖地ハーレムの名所アポロシアターで開催されるオーディション『アマチュア・ナイト』に参加したときのことを教えてください。

Laco:参加できるは先着200人で、早く会場に並べば誰でも受けられます。制限時間は90秒間なんですけど、最後まで聴いてくれないこともあって。ただ、歌がうまい人ばかりが来るオーディションなんだろうなって想像してたんですけど、上手い下手で言うと…びっくりするくらい下手な人もいて(笑)。ホントに聴くに堪えないくらい下手なんですけど、でもサビが来たらなんかジーンとするみたいな。それって、その人が持ってるエネルギーだよなって感じました。だから、上手い下手にこだわっていた自分を一旦捨てようって、その時に決めたんです。

──オーディションでLacoさんは何を歌ったんですか?

Laco:ビヨンセの「Listen」です。私にとってすごく大切な曲で。バンドを始める前、シンガーソングライターとして、アコギを持って一人で歌ってたんですけど、その時に受けたオーディションで、参加者20,000人中ファイナルの8人くらいにまで残ったんです。でも、その後あまり良い結果にはつながらなくて。それまでは、“自分が歌手になれないわけがない”と思ってたんですけど、“私が歌手になれない未来もあるのかもしれない”ってことを初めて考えたんです。

──挫折ですね。

Laco:歌うことが好き過ぎて毎日歌ってたのに、2ヵ月間くらい歌えなくなって。もう諦めるなら諦めるで、最後に好きなだけ歌って音楽人生を終わりにしようと思ってカラオケに行ったんです。めちゃくちゃ歌ったその最後に「Listen」を歌ったんですけど、“♪私のことを聞いて”という歌詞だから、歌っていて涙が止まらなくなって。“やっぱり自分の歌を聴いてもらえる人生が良い。私には歌しかないわ!”って改めて決意したという。「Listen」は音楽の道に私を引き戻してくれた曲なんです。


──そこから時を経て、憧れのアポロシアターで「Listen」を歌ったというのは感慨深いですね。Tomoakiさん、今回のオーディションから、初めて見えたLacoさんの一面などはありましたか?

Tomoaki:実はオーディションのパフォーマンスは見られなくて、僕は別室で待機していたんですけど、Lacoさんのこういうトライはこれまで見てこなかった気がします。受付開始は朝9時からなんですけど、参加できるのは先着200人なので、早朝6時くらいから一緒に並んで応援しましたよ。チームでサポートすべきイベントだと思ったので。

──そのオーディションの結果は?

Laco:まだ分かりません。パフォーマンスがめちゃくちゃ良かったら、その場で「YES」が出ることもあるらしいんですけど、半年くらい結果報告を待った人もいるみたいで。

──歌い切った後の気持ちはいかがでした?

Laco:実は私、最後まで歌わせてもらえなかったんですよ…途中で「Thank you」って言われたんです。本当に歌いたかったパートが歌えなかったから、めちゃくちゃショックで。でも、日本を飛び出して、こういう舞台にチャレンジすることって、もし売れてるアーティストだったら怖くてできなかったなと思って。「あなたは世界では通用しませんよ」ってわざわざ言われに行くようなものだから。最後まで歌わせてもらえなかったというこの悔しい気持ちも、日本に全然持って帰っていいものだって思えています。

──では、本場のゴスペルに触れたそうですが、その体験談をお聞かせください。

Laco:アポロシアターでのオーディション前に、ボイストレーニングを受けました。アポロシアターのことを調べている時に、Kimikoさんというニューヨーク在住の日本人ゴスペルディレクターさんのウェブサイトを見つけて。ゴスペルに関して深い知識をお持ちだということだったので、コンタクトを取ったら、ものすごく丁寧なお返事をくださって。『アマチュア・ナイト』に挑戦することをお伝えしたら、黒人シンガーのレッスンを受けさせてくれました。


▲ボイストレーニング


▲with Kimiko

──どんなレッスンでしたか?

Laco:本当にびっくりしたんですけど、教えるとかじゃなくて、もう「真似しろ」って感じで。最初のウォーミングアップの発声練習もピアノも全く使わないんですよ。「はい、私が歌ってみるから、やってみて!」の連続で。“真似するってすごい力だな”と思いました。Kimikoさんからは、「あいだに通訳が入ると壁ができて伝わるものも伝わらないから、マンツーマンで頑張って」という助言をもらって。声の出し方や体の感覚などを直接教わることができました。

──Kimikoさんとはどんな話をしましたか?

Laco:「EOWはゴスペルミュージックを取り入れている」という話をしたら、「ゴスペルがいろんなところに伝わるのはすごく嬉しいことだ」と言ってくださって。私はライブ空間を“最多幸感空間”と名付けてるんですけど、人の魂が音楽を通して、エネルギーとして解放する瞬間みたいなものを作りたくて。それが教会でいう礼拝(ミサ)と似てるなと思っているんです。Kimikoさんも「通じる部分があるね」って喜んでくださって、自信になりました。

◆インタビュー【2】へ
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