【インタビュー】FANTASTIC◇CIRCUS、純度高めた至極のリテイクベスト盤「全て僕が恵まれていたらこういう曲は書いていない」
FANTASTIC◇CIRCUSの音楽はなぜ多くの人を魅了し続けるのか──。今回のインタビューを読むと、その理由が分かって頂けるだろう。
前向きでいつも私たちの背中を押してくれる楽曲たちが生まれた背景には、多くの挫折経験とそれを乗り越えようとする不屈の精神があった。決して順風満帆なバンド人生ではなかった。周りからは歌を「やめたら」と心無い非難の言葉も浴びた。それでも30年以上音楽活動を続けてこられたのは信頼できる仲間がいたから。いつも応援してくれるファンがいたから。
◆FANTASTIC◇CIRCUS 画像
2月28日にリテイクベスト盤『TENSEISM BEST SINGLES 【2001ー2004】』をリリースした。今作は2023年3月に発売した「FANATIC◇CRISIS」結成30周年を記念した『TENSEISM BEST SINGLES【1997-2000】』の続編で、2001年から2004年にかけてリリースしたシングル全14タイトルを収録している。前作同様、全楽曲を再レコーディング。石月努(Vo)、kazuya(G)、SHUN.(G)の“いま”が感じられる作品となっている。
本インタビューでは、新作であるリテイクベスト盤の聴きどころやリリースまでの経緯、栄光も挫折も味わい全員が青春を捧げてきた「FANATIC◇CRISIS」について、そして3月10日に東京・Zepp Shinjuku(TOKYO)で行うライブに向けての意気込みなどを、石月とkazuyaの二人に聞いた。
◆ ◆ ◆
■やれるうちにやっておきたいという気持ちが強くなった
■綺麗にまとめられたので納得感があります
──2023年5月までの全国ツアー<tour THE END OF 30th BOYS 2023>以降の活動継続については明言しておらず、今作リリースの発表に歓喜したファンは多いと思います。
石月努(Vo):5月に東京・昭和女子大学人見記念講堂で全国ツアーのファイナル公演をやらせて頂いて、その後の活動は白紙でした。 けれども全国ツアーで見えてきたものがあって。「面白かったね、良かったよね」という話をしました。ただ今後の活動については今年なのか、来年なのかみたいな所は僕らの感覚で決めようと最初に約束事をしていて。結果的に2024年になったというのが一連の流れです。
kazuya(G):とにかく全国ツアーをやったことが大きくて。自分たちが思っている以上に待っていてくれた人や泣いて喜んでくれる人がいて。ツアー中に努と、「僕らは何て幸せなんだろう」って話していました。
石月:新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着いてきて、ようやく声を出せるようになったという時期でもありましたしね。直接みんなの声を聞いて、僕らが感動させられたというのが正直な気持ちです。あと去年アーティストの方の訃報も多かったじゃないですか。やれるうちにやっておきたいという気持ちは強くなりましたね。
──ファンの方は嬉しいでしょうね。『TENSEISM BEST SINGLES 【2001ー2004】』のリリースが決まった経緯も教えて頂けないでしょうか。
石月:『TENSEISM BEST SINGLES』の第二弾をレコーディングしていこうかっていう話は2023年の秋ぐらいからですね。秋口に3人で話し合って、このタイミングでシングルスを出そうとなって。そこからは結構バタバタでしたね。
──リテイクベスト盤なので全曲再録ですよね。
kazuya:全部です。
石月:結構きつかったよね。
kazuya:笑っちゃうぐらい。
──どういったところが大変でしたか。
石月:時間的な問題と、当時の譜面みたいなものとかもないんで。もうそこから。
▲石月努(Vo)
──思い出すところから。
kazuya:そうですね。それはメンバーそれぞれで違うと思うんですけど、 僕の場合は大丈夫でした。けれどもSHUN.のギターのディレクションもしたので作業量が多くて。まずこの期間でやりましょうと決まってからすぐにスケジュールを組み立てました。レコーディングの順番もイレギュラーだったので。普通だったら多分、イライラしたりとかしたと思うんですよ。今回の環境下では。けれども、SHUN.が結構笑かしてくれたんですよね。ギター持って「音出ねえじゃん」って言ったらギターの線が刺さっていなかったりとか(笑)。そういうことが多々あって面白くて。こいつが相方で良かったなと思いました。
──忙しい中も相方に癒されていたんですね。
kazuya:癒しですね。僕にとっては。それがすごく良かった。
──石月さんから見たレコーディング時のSHUN.さんはどうでしたか。
石月:僕にとっても癒しですね。彼がいるだけで現場が明るくなるというか。あれはもう持って生まれたものですよ。努力してどうこうなるものではない。
kazuya:しかも本人は意図していないんですね。面白いことをしようとしなくても勝手に面白いことが起きるという。
石月:FANTASTIC◇CIRCUSに関しては、この3人でもう30年来の付き合いだし、酸いも甘いも色々な経験を共にしてきてますからね。
──SHUN.さんのおかげでレコーディングも乗り越えられた。
石月:そうですね。レコーディングはもちろん大変ではあったんですけどね。ただ気づきもあって。例えばちょっとディレクターさんが遅れて歌詞が用意されていなかったりした場合も、ほとんど暗記してるなと。そこは凄いなと思いましたね。
──約20年前の曲でそれは凄いですね。
石月:体で覚えているというのは、このことかと思いました。
──kazuyaさんはレコーディングいかがでしたか。
kazuya:前作でもそうなんですけど、まず仕込みとして何か機材を買おうと。僕はテンション上げるところからスタートなので。前回は椅子を買って、今回はオーディオインターフェースをRMEのBabyface Proに新調して臨みました。そしてSHUN.が笑わせてくれたので比較的楽しくやれましたね。
▲kazuya(G)
──『TENSEISM BEST SINGLES 【2001-2004】』が完成して、改めていかがですか。
石月:今作はもちろん、以前の楽曲と聞き比べると全く違うんですけど、けれども当時を思い起こさせるというか、それは目指しましたよね。なんとかバージョンみたいな感じじゃなく。埃を取ってあげてピカピカに磨いて、ちょっとパーツが壊れたところは直してという感じです。
kazuya:僕の言い方でいうと、ちょっと濁ってた水をすくってあげて綺麗にしてあげたイメージ。今の方が純度というか綺麗さがあると思います。
──今作について深掘りしていきたいと思います。アレンジを変えた楽曲やその理由について伺ってもよろしかったでしょうか。
kazuya:当時は知識量がなく、「BLUE ROSE」と「everlove」は表現の仕方が甘かったなとずっと思っていました。でもあの頃はあれが全てであって。ただ今回録り直すにあたり、綺麗にまとめられたので納得感があります。
──具体的にどの部分を変えたのでしょうか。
kazuya:ギターのテンションコードの音の羅列にアボイド(避けるべき音)が入っている部分を直しました。あとは9thを入れるとか。テンションコードの数字の話なんですけどそこをきちんと計算通りに仕上げました。
石月:それでいうとリズムもそうです。16分なのか 8分なのかね。若さゆえに曖昧だったというか、それが却って良さになっている部分もあったと思うんですけど、「本当はこれがやりたかった」というところはきっちりとその形にしました。
──アレンジで一番苦労した楽曲というと。
kazuya:「BLUE ROSE」ですね。一番時間がかかりました。
石月:リズムも一番難しい。
kazuya:「答えこれでしょ」という形にようやくできました。
──石月さんが歌い方を大きく変えた楽曲はありますか。
石月:そうですね。この楽曲というのはないんですけど、曲ごとにそれぞれ変えてはいます。細かいところで言うと、昔は意図せずにビブラートが掛かっていた所をビブラート無しにしたりとかね。あえてニュアンスをつけてみようとか。 全曲どこかしらにそれはあります。「ゆらぎ」はあえて最後にブレスを残したりしていますし。
──「ダウンコード」の歌い出しが優しくなっている部分が印象的でした。
石月:感情の込め方は変わりましたね、やっぱり当時は必死だったので。あとはライブと同じように歌ってみたり。「追憶をこえるスピードで」は、イントロ とかで「ウォウウォウ」と言っているんですけど、原曲では入っていないと思うんですよね。
──変化を聴き比べるのも楽しいです。
石月:あとはそのときの予算の関係で、やりたくてもやれなかったことが今回できたものもあります。例えば「ダウンコード」には生ストリングスが入っていたりだとか、ピアニストの方に弾いて頂いたりとか。
──「ダウンコード」は音が豪華になっていると思いました。ちなみに生ストリングスの提案は?
石月:私が「入れたいです」と申告しました。
──それを聞いてkazuyaさんはどう思いましたか。
kazuya:僕は予算の心配をしました。
石月:ははは(笑)
kazuya:でも、めちゃくちゃいいなと思っています。今回の「ダウンコード」は、自分が携わった作品の中でも、トップレベルにクオリティが高い作品になりました。別にバイオリンを自分が弾いたわけではないですけど(笑)。早く多くの方に聴いてほしいなと思います。
石月:あと先着購入者特典で「ファントム」という曲がありまして。この曲はライブの DVDには収録されていますが、音源にはなっていないんですよ 。
──全員が初レコーディング。
kazuya:そうです。新曲ですよ。もう(笑)
石月:ほぼ新曲です。新鮮でした。特典ですけど「ファントム」もぜひ聴いて頂きたいですね。
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