【ライブレポート】エクリプス、4度目のジャパン・ツアー「1年半前の悔しさを晴らした大合唱」
2024年2月19日、スウェーデンのエクリプスによる4度目のジャパン・ツアーが東京・渋谷WWWで開幕。メロディックかつパワー感のあるハード・ロックで、この機会到来を待ち焦がれてきた満員の観衆を熱狂させた。
前回の来日公演が行なわれたのは2022年9月のこと。つい最近のことのようにも思えるが、今から約1年半前にあたるその時期は、まだ興行に伴う規制も完全には解けず、マスク着用やいわゆるソーシャル・ディスタンスの確保が求められ、大きな声をあげたり合唱したりする自由がオーディエンスから奪われていた頃にあたる。そもそも2020年の春に予定されていた公演がパンデミックのために延期措置となり、ようやく実現したのが同公演ではあったが、それはバンドにとってもファンにとってもある意味、不本意なものだったといえるだろう。その際の公演会場も同じ渋谷WWWだったのだが、そうした想いは、ライヴの半ばでフロントマンのエリック・モーテンソンが発した次のような言葉からも明らかだった。
「1年半前のこの場所でみんなはマスクをつけ、隣の人との間隔を保ち、一緒に歌うこともできず、手拍子しかできない状況だった。今夜はあの時の2倍、いや、5倍のスクリームを聞かせてくれ!」
彼がそうした言葉を発するまでもなく、フロアを埋め尽くしたオーディエンスは1曲目から合唱が止まらない状態だった。こんなことを言うと、彼らの楽曲を知り尽くしたコアなファン以外には楽しみにくいライヴなのではないかと誤解されてしまうかもしれない。だが現実はその逆で、このバンドは、聞いたその瞬間から声を合わせたくなるような親しみやすいキラー・チューンをたくさん持っている。しかも演奏内容は、日本のファンの嗜好を知り尽くしたかのような痒い所に手が届く選曲で、ドラム・ソロ、アコースティック演奏なども含まれた盛りだくさんなもの。アンコールも含めれば1時間50分を超えるボリュームたっぷりのライヴでありながら、次々と曲を繰り出してくるそのパフォーマンスは中だるみとは無縁だった。
2月20日には名古屋、21日には大阪での公演も控えているが、長年のファンはもちろんのこと、これまで彼らのライヴに触れたことのない人たちにも、ぜひ足を運んでみて欲しい。メロディックで自然に声を合わせたくなるような楽曲、見事なコーラスワーク、技術力の高さを感じさせつつも過不足のない演奏ぶり。こうした要素に惹かれるロック・ファンならば、そこで新たなフェイヴァリット・バンドを見つけることになるはずだ。そして誰もが「こんなにすごいバンドをライヴハウスで観られるなんて」という喜びを感じることになるに違いない。この機会を、お見逃しなく。
文◎増田勇一
写真◎Yuki Kuroyanagi