【インタビュー】プッシュプルポット、最新作『生き抜いたその先で』から見えるバンドの信念「“生きることを歌っていたんだ”と気づいた」

ポスト

◾️新しいタイプの曲が揃ったけど、今までのプッシュプルポットらしさもちゃんとある

──リリースから1ヵ月以上経ちましたけど、ミニアルバム『生き抜いたその先で』の手ごたえは改めていかがですか?

山口:新しいプッシュプルポットが出せた気がしますね。去年はフェスに出させてもらう機会もあって、先輩バンドの偉大さを実感することが多かった中、“ああいう盛り上げ方、俺たちもやりたいね”みたいな話をしつつ、現場で吸収したものを楽曲に反映させられたんじゃないかなと思います。たとえば「バカやろう」は、初めて僕がギターを持たないピンボーカルスタイルにして、ライブでもそうやってるんです。それがいい感じにできたから、過去曲の「ダイナマイトラヴソング」も最近はピンボで歌うようになって。

明神:俺らの中で意外と新鮮なんです、ぐっちがギターを弾かないのは。

山口:「君が好き」も新しいよね。アウトロの“ランランラララ♪”って歌うコーラスとかさ。

桑原:かわいいよね。このポップ感も今までになかったし、作っていて楽しかったな。

堀内:特に「君が好き」は、ツアーでのお客さんの反応もまだ初々しいんです。「バカやろう」みたいなアッパーな曲が今までは多かったので、こういうポップな曲もしっかり自分たちらしく伝えられたらなと。そんなことを思いながら、最近はライブをやってますね。




──「Dear My Friend」「緑色の自転車」などのノスタルジックな曲も新味ですよね。

山口:そうですね。「Dear My Friend」は前々から歌いたかったことがやっと曲にできた感じで、高校のときにいっしょにバンドを始めた、ギターを教えてくれた岩手の親友を想って書きました。静岡で働いてることしかわからないくらい遠くなってしまったそいつに、“俺はなんだかんだで音楽を続けてるよ”と伝えたくて。聴いているかどうかもわからないですけどね。



──プッシュプルポットのことは知ってくれているんですか?

山口:知ってます。5年くらい前に岩手で対バンしたこともあるので。

明神:懐かしいな。次もし会えるときがあったら「これ、お前の曲だよ」って言えば?

山口:それは恥ずかしい(笑)。自然に聴いてもらえるのがいちばんいいかな。連絡できないからこそ生まれた曲だし。

──「Dear My Friend」のライブでの感触は?

堀内:ゆったりでいてちょっとハネるリズムが新しいです。まだ自分たちもライブで身体に馴染ませている感じがありますね。

桑原:わかる。ツアーの序盤だし、思うことがたくさんあるよね。

明神:これまでにないノリだもんな。

堀内:「緑色の自転車」は、お客さんがしっとり聴いてくれるよね。

明神:うん。でも、俺たちはしっとり聴いてくれる時間になんかビビッちゃう癖があるというかさ。激しく盛り上がってもらわないと不安にならない?

山口:何を感じてるのか、言ってほしいくらいだもんな。「今、どんな気持ちなの?」って聞きたくなる。カンペみたいに出してもらいたいです。

明神:しっとりした曲なのに“最高です!”って? ワガママすぎだろ(笑)。

全員:あはははは!

明神:僕は「緑色の自転車」が今回いちばん好きな曲なんですよね。1人で自転車に乗れるようになったときの記憶がすごく残っていて、バイク屋の子が乗ってたお下がりの自転車を借りていたこと、おばあちゃんにスパルタで練習させられたこと、後ろを持ってくれている手がいつの間にか離れてたことを思い出しながら聴くと、たまらない気持ちになります。

堀内:俺、自転車に乗れなかった時期のことを覚えてないんだよね。5歳より前の段階で補助輪は取れてたと思う。

桑原:すげえな!

山口:早すぎじゃない!? 俺なんて1回諦めたくらいだよ、うまく乗れなくて。「走ったほうが速いわ!」とか言ってたことあったな。

明神:こうやって懐かしさに浸れるし、過去の風景がじんわり思い出せるから、すごくいい曲だなって。風呂でも聴きますもん(笑)。

山口:もともとバラードのほうが好みなんですよ、僕。意外かもしれないんですけど、激しい曲を作るのはそんなに得意じゃなかったりして。

明神:back numberが好きだもんな、ぐっちは。

山口:ガチャガチャした激しい曲も好きで、ライブではそっちのほうが楽しくてたくさんやりたくなっちゃうんだけど、きれいな声で歌うのが性には合ってると思う。「Dear My Friend」「緑色の自転車」は作りやすかったですね。




──「不安定少年」もこれまでになかったアプローチの曲です。

山口:ダークなギターロックもやってみたかったんですよね。サブスクには出してない「傷跡」(2019年8月発表のデモ音源集『13歳の夜』に収録)という曲でトライしたことがあるんですけど、そのときよりもだいぶ納得いく感じにできました。

明神:サビをポップにしたり、いいバランスになったと思う。

山口:自分たちっぽくない曲だけに、ミニアルバムの前に配信シングルでリリースするときは勇気が要りました。

明神:「不安定少年」には、ぐっちがたまにやる遊び心も入ってるんです。なんのことを歌っているかを、明確には言っていなくて。

山口:恋愛のことを直接的に歌ったわけでもないというかね。いろいろ想像を膨らませて聴いてほしい。

明神:さっき話に出た「ダイナマイトラヴソング」も、ちょっと下ネタが入ってたりしますから(笑)。

山口:新しいタイプの曲が揃ったけど、今までのプッシュプルポットらしさもちゃんとあるところが好きかな。

明神:背中を押してくれる曲もあれば、横並びで歩いてくれる曲、過去に浸れるノスタルジックな曲もあって、ひとつの人生が感じられるような一枚にもなったのかなと思います。

◆インタビュー(4)へ
この記事をポスト

この記事の関連情報