【インタビュー】ALデビュー15周年&現体制10周年“兀突骨”リーダー高畑治央が振り返る今までの歩み

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■ 何をやるかは内緒ですが楽しみに待っていてください

── 最初に海外に行ったのはいつ頃でしたか?

高畑:『魍魎』をリリース後にシンガポールに1日だけ呼ばれたのが最初でした。『影ノ伝説』リリース後に本格的に海外ツアーを始めて、シンガポール~マレーシアと初めて国をまたぐツアーをして、イギリス~ヨーロッパ・ツアーにも行きましたし、ベトナム・ツアーもありました。長期ツアーに出るようになったのは今のメンバーになってからです。

── 何が切っ掛けで海外から声が掛かるようになったのですか?

高畑:恐らく日本の音楽雑誌が海外に流通していて、それに兀突骨が掲載されたのを見て声を掛けてきたのが切っ掛けだと思います。当時はMyspaceが流行っていて、そこで音源を聴いて「フェスに出ませんか?」ってコンタクトもありました。

── 色々な国に行っていますが、一番印象に残った国ってありますか?

高畑:インド~ネパールに行っていますし、そのツアーが印象に残っています。本当に大変で「地獄の黙示録」って映画があるじゃないですか、あの世界でしたよ(笑)。ネパールのカトマンズ到着したのが夜中で、空港近くにホテルがあるからって行ったら小蠅とゴキブリだらけで(笑)。その日は夜中に到着したからこんな感じなんだなと思っていたら翌日のホテルも同じ感じで。ツアーが始まるまで数日あってカトマンズで過ごしたのですが、砂埃と排気ガスが酷くて舗装されていないから雨が降ったら道がグチャグチャになるしでヤバイとこに来ちゃったなって。とにかく早くライブをしたいなって思ってました。

── ライブハウス事情はどうでしたか?

高畑:機材はしっかりしていたのですが、お客さんは少し犯罪の香りしている人が多くて、トイレに行ったら何か吸っていたりであっちではロックはそういったポジションなんだなと思いました(苦笑)。現地のコーディネーターもしっかり同行してくれましたし、お店にはプロレスラーみたいな屈強な用心棒がしっかりガードしていましたから危ないことには巻き込まれませんでしたけど。ケータリングで「変な薬や葉っぱ」があったのもビックリしました。ダメですよ、兀突骨はクリーンなんですから(笑)。危ないなと思ったのは野良犬が本当に多くて、夜は怖くて出歩けませんでした。食べ物に関しては俺も秋田も胃腸が強いので大丈夫でしたが、円城寺は常にお腹を壊していました。ネパールと比べるとインドの方が都会でした。インドはバンガロールってところに行ったのですが、IT産業が盛んなところで都会でしたよ。でも路地裏一本入ると牛や裸足で歩いているおじいさんとかいましたけど。

── ネパールとインドのメタル・シーンの違いとかはありましたか?

高畑:ネパールはブルータルで激しいバンドが多くて激しければ激しいほどウケがよい感じで、インドはメタル全般あってメタル先進国なイメージで、どちらかと言えばインドのバンドの方が演奏が上手かったです。

── 2015年リリースの3rdアルバム『因果応報』から今のメンバーになったのですよね。それぞれのメンバーと知り合った切っ掛けは何だったのですか?



高畑:秋田の出身が福岡で、そこで彼はEMPTY BOXってスラッシュ・メタル・バンドをやっていました。将来は東京でやりたいって言っていて、ドラマーが辞めた時にコンタクトしたら丁度東京に出てくるというタイミングだったので誘ったんです。円城寺は川越出身で楽器屋とかで会って面識がありましたし、M.E.Sってバンドもやっていて何度かそのバンドと共演していました。ギタリストが辞めたタイミングで誘ったらやりたいってことだったので加入して直ぐにアルバムを作り始めました。

▲秋田 浩樹(Dr)


── 今回のインタビュー前にアルバムを全て時系列順で聴いてきたのですが、『因果応報』で音が変わった印象を受けました。振り返るとターニング・ポイントはこのアルバムだったのかなとも思いました。

高畑:1stと2ndはグチャっとしたアングラ感がありましたが、このアルバムからメジャー感が出たかなって思っています。新メンバーを紹介しなくちゃいけないなと思って、ドラムを目立たせる曲だったりギターをメインにした曲とか考えて作るようにもなっていきました。

▲円城寺 慶一(Gt)


── 1曲目の「狂気ノ戦野」は各メンバーのソロから始まっていますが、そのことを狙ってですよね。

高畑:勿論狙ってです。新ドラマーの挨拶代わりのソロから始まって、そこから各メンバーのソロへと繋がっていくのは決めていました。兀突骨のレコーディング作業自体は順調だったのですが、この時期は忙しくて大変でした。俺が他にHORRIFIC DISEASEというバンドもやっていて、アルバムのレコーディング時期が被って同時進行で作業が進んでいたので。それにDEFILEDのベーシストが怪我してしまって、CANNIBAL CORPSEのオープニング・アクトの時にサポートをしてくれないかと頼まれて、それが全部重なっていたんです。本当に大変で胃潰瘍になってしまいましたから(笑)。

── 「因果応報」のイントロで少し使っていますが、兀突骨ってブラストビートをあまり使ってないですよね。デス・メタルやエクストリームなメタルだとブラストビートを多用しているバンドも多いと思いますが。

▲アルバム『因果応報』


高畑:多用してしまうとスラッシュ・メタル感が希薄になってしまうので、兀突骨での使用は少ないです。俺の基本はスラッシュ・メタルだと捉えているので。全く使わないわけではありませんが、使い過ぎないようには気を付けています。良い曲を作る為に必要なら使いますが、デス・メタルだからブラストパートのある曲を作るんだって前提は違うかなと思います。海外のリスナーからはデス・メタルだからもっとブラストパートを増やして欲しいと言われることも多いですが、それは手段と目的が逆転してしまうので違うんです。秋田はそのバランスを考えるのが上手くてブラストパートを嫌味なくはめ込むので、このアルバムからドラムに関しては彼に任せっきりです。

── このアルバムから英語タイトルももっと凝っていきましたよね。

高畑:2ndアルバムをリリースしてから海外に呼ばれる機会も増えたので、戦略的にもそこは狙っていきました。英語をネイティブに話せる人にお願いしてタイトルだけでなく、歌詞の英訳もしてもらいました。

── 4thアルバム『兵ドモガ夢ノ跡』は翌2016年となりますね。

▲アルバム『兵ドモガ夢ノ跡』


高畑:このアルバムは自分の中でやりたいことが全て出し切れて区切りになったと感じました。それだけ満足した作品になって、全体の雰囲気も良かったです。

── オープニングを飾るインスト曲「戦雲ノ静寂」が壮大で映画のオープニング曲みたいですよね。それでアルバムの流れも良くてコンセプト・アルバム的なものも感じますが、そういった作品ではないのですよね?

高畑:コンセプト・アルバムではないのですが、流れはそういった雰囲気に偶然なりました。いつかコンセプト・アルバムは作ってみたいですが、まだ難しくて世界観が破綻してしまうんです。『兵ドモガ夢ノ跡』は本当に良い作品を作ったなって手応えもかなり感じました。

── ベースソロ曲「別レノ子守唄」も収録していますね。

高畑:目立ちたがりなのであれはずっとやりたかったんです(笑)。あの曲は『座頭市』での勝新太郎の演技を観て浮かんだフレーズに和音を取り入れてできたんですが、MANOWARみたいだってかなり評判は良かったです。

── この作品では円城寺さんが気持ちよい位に弾きまくっていますね。

高畑:彼のプレイがこの作品からハマっていって曲の幅も広がっていった気がします。アレコレ弾いてと言えば殆どやってくれるので。『因果応報』ではまだまだ身体が細かったですが、この頃からドンドンと筋肉が増えていって「筋肉ギタリスト」を打ち出していきましたしね。加入していた頃は筋トレをしているとは言っていましたが、まさかあそこまでになるとは(笑)。

── このアルバム・リリースの翌年にさっき話していただいたネパール~インド・ツアーになりますが、これが初めての長期海外ツアーだったのですか?

高畑:その少し前の中国ツアーが先ですね。どちらも2~3週間やりました。俺はDEFILEDで1カ月の海外ツアーをやっていましたが、他の2人は初めてのツアーだったので大変だったと思いますが、またやりたいって言ってくれて安心しました。

── 2018年リリースの5thアルバム『背水之陣』では伊東潤先生に帯コメントを書いてもらったんですよね。

▲アルバム『背水之陣』


高畑:ある意味で夢が叶いました。伊東潤先生にコメント下さいって連絡しようとしたのですがファン過ぎてできなくて。それで当時レーベルの担当の方を通してお願いしたら喜んでコメントを書いていただいて。

── このアルバムは秋田さんに焦点を当てたアルバムですよね。

高畑:秋田を前面に出すことをテーマにした作品で、これで秋田の株も上がった気がします。レコーディングでも一つ一つのプレイにかなり拘ってましたから。

── ドラムをフィーチャーするアルバムって少ないと思いますが、作曲面での苦労はありましたか?

高畑:ドラムを出し過ぎると曲が難解になってしまうので、それを避けてストレートにしてポイントでドラムを目立たたせようと神経を使いました。ブルデスとかだとドラムを引っ張って凄いなと思わせるものはあるのですが曲のインパクトが薄くなってしまうイメージがあって、そんな感じにもしたくなかったです。でも作曲作業は実はスムーズで、週一ペースで曲が完成して二カ月でマテリアルが揃ったのでレコーディングに入りました。作曲面で言ったらもう一つ、『兵ドモガ夢ノ跡』でプログレ感を出したくてもハマらなかったですが、この作品で特に「反撃ノ時」に上手くできてプログレ好きからのウケも良かったです。

── オリコン・チャートでは兀突骨作品中、この『背水之陣』が今のところ最高位をマークしていますね。

高畑:それは知らなかったです。AMAZONではJ-POPに分類されているのですが、ランクインしてデス・メタルがJ-POPを制してるって嬉しかったです(笑)。

── そして最新作となる6thアルバム『黄泉ガヘリ』ですが、振り返ってレコーディングはいかがでしたか?

▲アルバム『黄泉ガヘリ』


高畑:作曲面ではスムーズでしたが、個人的には大変なことが重なっていたので音楽に割く時間が少なくなったのが苦労になりました。そういった個人的問題を一つ一つと解決してリリースできた作品という意味では感慨深いです。

── ジャケットのアートワークは高畑さんをモデルにしているのですか?

高畑:そう見えますよね? でもこちらからは何も言っていなくてタイトルだけ伝えて描いてもらったんです。『背水之陣』は海外の方に描いてもらったのですが、タイトルの「黄泉ガヘリ」を伝えてもイメージがピンとこなかったみたいだったんです。黄泉の国はギリシャ神話にはあるみたいですが日本とは違った感じで、他の国ではその概念もなかったので想像できなかったんです。なので円城寺の知り合いに「黄泉ガヘリ」ってタイトルを伝えたらあのアートワークになったんです。

── バンドのリーダーでもありますから「高畑さんの甦り」もかけているのかと思いました。

高畑:それは良いですね、いただきます(笑)。でも、あれはこっちから指定してもいないので偶然なんです。だから運命かもしれませんし、その運命を皆さんには見守って欲しいですね。

── 今年で今のメンバーになって10周年になるのですよね。2人に何かメッセージありますか?

高畑:円城寺は最近食欲旺盛なのでイングヴェイ・マルムスティーンやマイケル・ロメロにみたいになってしまうから気をつけろよって(笑)。秋田はドラムのパワーは上がっているし、新しいバンドを組んだり色々やっていますが、逆に痩せていっているのが心配です。大変だろうけど身体壊して痩せ過ぎないように注意しろよって(笑)。2024年は今のメンバーになって10年というだけでなく、兀突骨がアルバム・デビューから15周年にもなります。二つ重なっているので色々と考えてレーベルの方とも相談しています。何をやるかは内緒ですが楽しみに待っていてください。



▲円城寺 慶一(Gt)




▲秋田 浩樹(Dr)






取材・文◎別府“Veppy”伸朗

  ◆  ◆  ◆

アルバム『黄泉ガヘリ』

2023年12月20日(水)発売
レーベル: B.T.H. RECORDS (ビーティーエイチ・レコード)
フォーマット:CD
POS:4988044095021 品番:BTH-101
税込価格 2,970円

<収録曲>
01.百戦錬磨 -Battle-hardened-
02.乱逆ノ燈 -Signal Of The Counterattack-
03.積年ノ闘イ -Long-standing Warfare-
04.血気ハヤラバ -When My Blood Boils-
05.悪ノ霊魂 -Malevolent Souls-
06.彷徨ウ首 -Severed Head On The Prowl-
07.埋伏ノ毒 -Sleeper Cell-
08.破邪ノ眼光 -Glares To Crush Evil-
09.疫神 -God Of Plagues-
10.黄泉ガヘリ -Back From The Underworld-

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