【レポート+インタビュー】ACIDMAN、<“SAI”2022>映像上映会で「感動のひと言に尽きる」
ACIDMANの映像作品『ACIDMAN presents「SAITAMA ROCK FESTIVAL“SAI”2022」Live & Documentary FILM』が11月26日にリリースされた。このリリース直前となる11月24日および25日、日本のロック史に残るであろう出演者がリスペクトとプライドをぶつけ合ったスーパーフェスの映像先行上映会が東京・ユナイテッドシネマ豊洲で開催された。同映像上映会のレポートと、ACIDMANメンバーも登壇した舞台挨拶のインタビュー再現をお届けしたい。
◆ACIDMAN 画像 / 動画
2022年11月26日および27日にさいたまスーパーアリーナで開催された<ACIDMAN presents「SAITAMA ROCK FESTIVAL“SAI”2022」>は、ACIDMANの歴史だけではなく、日本のロック史に残るだろうスーパーフェスだった。音楽性や世代を超えた出演者の豪華さに驚かされ、それぞれがリスペクトとプライドをぶつけあいながら、全力でステージに臨む姿に心揺さぶられた。
その映像作品のリリースを記念して、映画館を借り切っておこなわれたリリース先行上映会。DVD2枚組の内容を2日間に分けて爆音で上映し、上映後にはACIDMANのメンバーが登壇してトークショーもある。会場のユナイテッド・シネマ豊洲は映像も音響も最上級、永久保存版のライブ映像を味わうには最高の環境だ。前日の<DAY-1>(DVDのDISC1)に続き、フェス2日目の<DAY-2>(DVDのDISC2)が上映された、11月25日の先行上映会の模様をレポートしよう。
およそ2時間15分の本編映像のうち、前半はフェスの舞台裏に密着したドキュメンタリー。演奏シーンは収録されないが、ACIDMANのメンバーと出演バンドとの普段着の会話、本番直前の表情など、見逃せないシーンが続々と登場する。中でもACIDMANに向けた各バンドのMCは必見で、特にBRAHMANのTOSHI-LOWの言葉は、ステージ横で見ていた大木伸夫が号泣するほどの愛溢れるもの。<DAY-2>の出演バンドは、THE BACK HORN、sumika、the band apart、マキシマム ザ ホルモン、BRAHMAN、ASIAN KUNG-FU GENERATION、ELLEGARDEN、10-FEET、そしてMr.Children。さらにステージMCをつとめたBoo、ダイノジ、大抜卓人、斎藤工。それぞれの立場から結成25周年を迎えたACIDMANに贈られる、感謝の言葉の一つ一つが胸に沁みる。
観客へのインタビューが多いのも、このドキュメンタリーの特長だ。カップル、家族連れ、学生の友人同士など、様々な年齢層の観客が「人生に大きな影響を与えたACIDMAN」について熱く語る。「僕たちだけではできない。来てくれるみなさんがいるからできる」と大木は言った。その理由はこの映像を見ればわかるだろう。ACIDMANのドキュメンタリーは、熱狂的な観客の存在なくして語れない。
この後のトークショーで大木の口からも語られたが、監督をつとめた小田切明広氏の編集が秀逸だ。長年ACIDMANのライブやドキュメンタリー映像、ミュージックビデオを手掛けてきた旧知の間柄。ACIDMAN以上にACIDMANを理解し、ACIDMANファンを見てきた彼だからこそ「俺を泣かそうとしてる」(大木)と言わしめるほど、胸が熱くなる映像が完成した。
映像作品後半はACIDMANのライブをおよそ60分超、MCも含めて完全収録。カメラは2日間で約4万人を動員した観客の盛り上がりを鮮明にとらえ、全身全霊を音楽に捧げるバンドに最短距離で迫る。それは「world symphony」の熱狂で幕を開け、「赤橙」の叙情、「廻る、巡る、その核へ」の膨大な熱量、「ALMA」の壮大さを経て「Your Song」の親密なメッセージに至るまで、鬼気迫ると表現したいほどにハイテンションのベストライブ。全編通して迫力満点、生々しい音像も特筆ものだ。
上映会が終わると、ACIDMANのメンバー3人が登壇してトークショーが始まった。<DAY-1>にも出演したMC・藤田琢己のリードで当日の思い出を語り、映像作品になった喜びを笑顔で語る。その口調はバンドの手柄を誇るものではなく、多くの人に支えられたフェスの成功を一人の音楽ファンとして振り返るような、謙虚で誠実なものだった。
「感動に尽きるというか、素晴らしいアーティストが出てくれたことと、お客さん一人一人のコメントにも泣けてきたし、ACIDMANの音楽がそれぞれの人生の一部になっていることが一番のハイライトです」──大木伸夫
「昨日と今日、ここで見させてもらって、あらためて素晴らしいフェスだなと思ったし、奇跡のような2日間だったなと思って感動しました」──佐藤雅俊
「本当に最高でした。こんな思いをさせていただいて、ありがとうございました」──浦山一悟
当日は主催者として多忙になるため、演奏をおろそかにしないために1か月以上前からリハーサルを重ねて勝手に体が動くまでに仕上げて本番に臨んだというエピソードも、実にACIDMANらしい。コロナ禍でなかったら逆に開催を決断できなかったかもしれないと語り、「いろんなエンタテインメントがつぶれていく中で、“このままじゃダメだ”と思ったんです」(大木)という動機もまた、逆境に強いACIDMANらしい。
トークは堅い話ばかりではなく、時々ジョークを交えつつ、3人が足並み揃えてバンドを続ける難しさを語りながら、同時にバンドの美しさを生真面目に語り、日本のロックシーンの素晴らしさを語る。巨大フェスのプロデューサーを務めあげた大木伸夫だからこそ、その言葉には強い説得力が宿る。
「フェスができたのは、僕たちだけじゃなくて、本当にたくさんの方達が関わってくれたおかげです。でも結局、一番大事なのはみなさんに来ていただいたことで、それが僕たちの宝物になりました。次に開催できるとしたら、これを超える景色を描きたいと思うので、これからももっともっと頑張ろうと思います」──大木伸夫
およそ30分のトークと記念撮影を終え、手を振りながらステージを下りる3人に送られるあたたかい拍手。これまで5年おきに開催されてきた“SAI”が、もし次に実現するならACIDMANが結成30周年&メジャーデビュー25周年を迎える2027年か。『ACIDMAN presents「SAITAMA ROCK FESTIVAL“SAI”2022」Live & Documentary FILM』は、その時はまたこの場所で会おうと願う者たちに、きっと見てほしい作品だ。DVDを手に入れたら、できるだけ大きな画面で、できるだけ大きな音で体感してほしい。
次のページでは、舞台挨拶時のMC 藤田琢己によるインタビューを再現したい。
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