【インタビュー】キャメロット「今でもちゃんと通用するバンドでありたい」

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アメリカのメロディックメタルバンド、キャメロットが新作『THE AWAKENING』 を引っ提げ、5年ぶりの来日公演を果たした。

今回のツアーには、トミー・カレヴィック (Vo)、トーマス・ヤングブラッド(G)、オリヴァー・パロタイ(Key)、ショーン・チベッツ(B)、アレックス・ランデンバーグ(Dr)のメンバーに加えて、スイスのアド・インフィニトゥムからシンガーのメリッサ・ボニーが帯同。プログレッシブでもあり、シンフォニックでもあり、ドラマティックで常に独特な世界観を見せてくれる彼らのステージに今回も期待が高まった。

メンバー全員がアグレッシブでエネルギッシュに動きながらもバンドサウンドは非常にタイトであり、スピードチューンからバラードまで、どの曲も情景が浮かぶような美しくも力強い表現力で見せていく。完成された舞台と終始妖艶な空気でもいざなうキャメロット・ワールドは、「過去にとらわれる事なく、現在と未来を見つめている」というバンドの姿勢を証明していた。

東京公演2日目のライブ前に、バンドの中心人物であるトーマス・ヤングブラッド(G)に話を聞いた。


──またお会い出来てとても嬉しいです。5年ぶりの日本はいかがですか?

トーマス:5年ぶりって感じがしないよね。コロナ禍で時が失われてしまっていたから、体感的には3年くらいに凝縮された感じだよ。いかに日本に来たかったかというのを飛行機を降りた瞬間から感じたんだ。本当に来れて嬉しいよ。


──昨日のショウは本当に素晴らしかったです。手応えを感じましたか?

トーマス:アリガトウ(日本語で)、僕らも凄く楽しかったよ。とにかくお客さんが素晴らしかったよね。反応も良かったし、ステージの音響も良くて、嬉しい驚きばかりだったよ。


──ステージへのモチベーションや原動力はどこから来ていますか?

トーマス:日本の前に北米と欧州でのツアーがあったからこなれたのもあるかもしれないけど、コロナの間に出来なかった分、みんな「やってやろう」と言う気持ちが出ているんじゃないかな。あと実は、2020年に自分自身もコロナにかかって、かなり重症化したんだ。2ヶ月以上も入院して、もしかしてもうダメなんじゃないかとも思ったしね。生きている事が嬉しいし、そういう喜びの気持ちからかもしれない。

──だからこそ、過去にとらわれず、常に進化を考えていらっしゃるのでしょうか?

トーマス:そうだね、キャメロットは常に現在と未来を見つめているよ。あまり過去にはこだわっていない。昔のヒット曲にだけ頼っているレガシーバンドもいるけど、俺たちはそうじゃない。新しいアルバムや新しいイメージにとてもこだわって、今回も新曲を多く披露しているしね。これがとても大事な事だと思っているよ。「今でもちゃんと通用するバンドでありたい」と、こちらが示していくのは大事だと思っているよ。

──ライブでもあの世界観を出す為に考えている事を教えて下さい。







トーマス:実は日本の場合は少し違うんだ。専属の照明エンジニアを連れて来れていないから、本国と同じにはなっていないんだよ。やっぱりライティングもシアトリカルな雰囲気を出すには重要な要素であるし、あとはセットリストも緩急のバランスが必要じゃない?ダークな面もあればライトな面もあって、ファンの為にもバランスの取れた内容にする必要があるとバンドはいつも考えてやっているんだ。

──キャリアが長くなるとセットリストも難しいですよね。

トーマス:あまり初期の曲は入っていないけど、ちなみに今夜は5曲入れ替えるよ。でもそれってどれか5曲を外さなきゃいけないよね、実はまだ決まっていないんだけど(笑)。

──本当ですか?バッキングトラックも使われているので、その都合でセットは固定なのかなとも思っていました。

トーマス:今日観ればわかるよ(笑)。特に問題ないから!

──それは楽しみです。また、ドラムソロでのRUSHや「Forever」でもQUEENを断片的に用いたのも珍しいアプローチでしたね?

トーマス:うん、あまりきっちりクソ真面目にならなくてもいいかなと思ってね。特にRUSHは、カナダのトロントでのショウで最初にやってみたら凄く反応が良かったんだ。そこから定着してしまった感じ。「We Will Rock You」の方はたまにトミー(Vo)の気まぐれでやっているけど、毎回なわけではないよ。

──トミーは5年前より表現力も増したステージングで、ライブバンドとしても完成されましたね。

トーマス:そうだね、ここのところずっとライブを演ってきて、どんどん良くなったのは間違いないね。アレックス(Dr)もメリッサ(Vo)も自然に溶け込んでいるし、特にメリッサの発するエネルギーがとても良いんだ。彼女は自信を持っているけど、それが鼻につかないんだ。でも凄く強くて、衣装もいかにもって感じでメタル界のビヨンセみたいでしょ?(笑)。

──たしかに(笑)。ではアルバムについても聞かせて下さい。タイトルはパンデミックを経ての目覚めかと思いましたが、先程のお話しにあったご自身の事も関係していますか?


トーマス:そうだね、両方だよ。コロナ禍でみんなが何も出来なかったけど、逆に自分自身を見つめ直す時間でもあったよね。それまでは馬車馬のように働いていたけど、無理矢理プライベートだけになったのも良かったんだ。今、自分が持っている全ての事が当たり前だと思わずに生きていくべきかな。色々と考えさせられたよね。

──バンドの持ち味はそのままに、新たにチャレンジした部分は?

トーマス:いつも通りキャメロットのDNAはある程度残しつつも、違うものも取り入れてチャレンジしたよ。最初に出した「One More Flag in the Ground」を聞いたファンからは、「ラジオ向き過ぎるんじゃないか」って声もあったけど、いつも同じものばかり作るよりも新しい事にチャレンジしないとね。あとはヤコブ・ハンセンがミックスを担当した事や、女性のチェリストが参加してくれた事も大きいね。


──チェリストもそうですし、特にオーケストレーションが素晴らしいですね。

トーマス:特に意識したわけではなかったけど、これまでのプログレッシブな部分やシンフォニックな部分もより顕著に出たよね。あと今回はメロディやコーラスがキャッチーになっている。色々な時代のキャメロットの要素を少しずつ持ってきて集めた感じもあるね。その要因のひとつは、トミーが曲作りに多く関わった事もあるんだ。彼は加入前のキャメロットの音楽を聴いて、凄く勉強しているんだよ。そういったところで昔の要素も入ったかもしれない。

──トミーは別バンドを脱退しましたが、それがキャメロットの曲作りに関係していますか?

トーマス:いや、彼がセヴンス・ワンダーを脱退したのはこのアルバムのレコーディングが終わってからなんだよね。僕は何も強要していないし、スケジュールさえバッティングしなければ何も問題なかったよ。でも実際、キャメロットだけに注力する時間が増えたのは事実だね。

──歌詞も人生においてのあらゆる側面のように感じましたが、いかがですか?


トーマス:これまでもそういう部分はあったけど、今回は特に自分を見つめ直す事で、人生において重要なもの、例えば恋愛や家族や叶えたい夢とかね。悔いのない人生を歩みたいと強く思ったよ、やり残す事のないようにさ。

──本当にそう思います。まだキャメロットでやってみたいことはあるのですか?

トーマス:まずオーケストラのコンサートをやりたいな。メタリカとかもみんなやっていたけど、あの頃はトレンドに乗ったみたいで嫌だったんだよ。だから今ならいいかな(笑)。あとは日本でのコンサートをDVDにしたいんだ。それは今回ではないんだけど、欧州でやっているような大きなプロダクションでやったものをね。これ、日本というのが肝なんだよ。アメリカ人って、自分の住んでいる州から一生出ない人って結構いるんだよ。そういう人たちにDVDを通して日本の文化も知って貰いたいんだ。あとはアコースティックアルバムなんかも出してみたいけど、どれをやるにも相当な労力が必要だよね。いま息子が13歳でホッケーの選手なんだよ。ツアーに出ていない時は息子のサポートをしなければいけないから色々と忙しいんだ(笑)。

──叶えてくれるのを待っています。では、今夜のショウも楽しみにしていますね。

トーマス:ありがとう。日本のファンと文化が大好きだし、自分たちにとっていかに大切かを再認識したよ。初めて日本に来てからもう20年くらい経つかな?それでも毎回エキサイトするし、もう30歳若ければ日本に住みたいくらいだ。


取材・文◎ Sweeet Rock / Aki
写真◎ Yuki Kuroyanagi

<KAMELOT ~"AWAKEN THE WORLD” JAPAN TOUR 2023 ~>

2023.11.3&4 Club Citta' Kawasaki
<Day1-11.3>
1.Veil of Elysium
2.Rule the World
3.Opus of the Night(Ghost Requiem)
4.Insomnia
5.When the Lights are Down
6.Vespertine(My Crimson Bride)
7.New Babylon
8.Karma
9.Sacrimony(Angel of Afterlife)
10.Song of Jolee
11.NightSky
~Drum Solo~("Tom Sawyer" snippet)
12.March of Mephisto
13.Forever("We Will Rock You" snippet)
~Encore~
14.Phantom Divine(Shadow Empire)
15.One More Flag in the Ground
16.Liar Liar(Wasteland Monarchy)
<Day2-11.4>
1. Phantom Divine(Shadow Empire)
2. Rule the World
3. Opus of the Night(Ghost Requiem)
4.The Great Pandemonium
5.The Human Stain
6.Center of the Universe
7. New Babylon
8.Karma
9.End of Innocence
10.NightSky
~Drum Solo~
11. Sacrimony(Angel of Afterlife)
12.Here's to the Fall
13.Forever ("We Will Rock You" snippet)
14.March of Mephisto
~Encore~
15.Ghost Opera
16.One More Flag in the Ground
17.Liar Liar(Wasteland Monarchy)
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