【インタビュー】池内ヨシカツ、作曲家としての新しい可能性を感じる多彩な作品の数々
■基本的に自分の好きなもの
■自分が好きなことだけをやっていきたい
――今回の3曲の話に戻って、あらためて、「さあ」はどういうテーマで作っていった曲ですか。
池内:「さあ」に関しては、恋愛系の曲ではないなということを雄大くんとしゃべっていて、そっちとは違う世界観で、夢、希望とか、そういうものを作りたいというものがあったので、フルで曲と歌詞を作った状態でお送りして。“every day every night”という、一番音程の高いサビの後半のところがあるんですけど、最初は英語じゃなかったんですよ。日本語にしていたんですけど。それを急遽、雄大くんがレコーディングの日に「英語にしたい」と言って、ここはこういう感じの方がいいんじゃないか?って、録る5分前ぐらいに変えました。
――5分前! そんなことあるんですね。
池内:あります。いかついですよね(笑)。雄大くんは歌の録り方も面白くて、普通はAメロから録っていくと思うんですけど、全部録り終わったあとにもう1回Aメロの部分を録るんですよ。Aメロは最初に声を出しているので、喉が完成しきってない状態だから、全部歌って喉ができあがった状態でAメロをもう1回録って、どっちがいいか比べてみる、というスタイルでやっていました。
――面白いですね。たぶんボーカリストによって作法が違うと思うんですけど、「RENDEZVOUS」を歌った川畑さんはどんな感じですか。
池内:川畑さんは、なんて言ったらいいか、現場で一番ストイックでした。年齢はだいぶ離れてるんですけど、僕に気を使わせないというか、「これで大丈夫ですか」「こんな感じですかね」とか、すごく細かく気にしてくださって。僕からしたら、めちゃくちゃ歌も上手いですし、経験的な部分もキャリアもすごいので、基本はお任せで、ちょっとしたところだけディレクションしつ作っていった感じです。
――そしてもう一人が、「Lonely」を歌った竹中雄大(Nobelbright)さん。彼はこういうフィーチャリングはほかにほとんどしていないと思うんですが。
池内:そうですね。しかも自分で歌詞を書かないで歌うのは、やったことがないと思うんですよ。「Lonely」は完全にラブソングなんですけど、プリプロの段階で雄大がメロディをすごく気に入ってくれて、「この曲めちゃめちゃいいっすね」みたいな。もともと別の目的のために作っていて、ストックとして置いていた曲を彼に聴かせたら「この曲を歌いたいです」と言ってくれて、じゃあこれに歌詞をつけていこうということで、まず僕とチームが書いたものと、彼が書き換えたところを組み合わせてできたという感じです。
▲竹中雄大(Nobelbright)
――彼はどんなタイプですか。コラボ相手として。
池内:なんと言うか、アーティストだなと思いました。ミックスとかマスタリング作業のところでめちゃめちゃこだわりがあって、ロスのエンジニアの人にお願いしたんですけど、人によってどういうふうにボーカルを配置するかが違う中で、それに対して彼がめちゃくちゃこだわりが強くて、「ここはこういう方がいいと思うんですけどどうですか」みたいなことを、電話で何回もやり取りして、そういうところがすごくアーティストだなと。音楽が大好きで、洋楽もたくさん聴いているので、深い話ができるし、作っていて楽しかったです。
――そもそも竹中さんとは、どういう縁があったんですか。
池内:共通の友人がいて仲良くなった感じですね。今回の3人とはこの案件の前からコラボ曲を作りたいねと話していたのでそれが実現した感じです。
――そこ、大事なポイントですね。もっと大掛かりな案件みたいに思っていたんですが。
池内:全然そんな感じじゃないですね。今回のアーティスト全員LINEで誘っています。(各アーティストの)レーベルさんもすごく寛容で、曲に関してはすべてお任せしますという感じでした。
――3曲を3人のボーカリストと一緒に作って、配信して。今はどんな手ごたえがありますか。
池内:僕は海外生活が長かったんですけど、文化的なところで言うと、向こうのアーティストは密に連絡を取り合って、スタジオに集まって、その場でパッパッと作るという人たちが多かったので、それが基本のスタイルかなと思っていたら、日本の現場はそういうことじゃなかったので。でも今回は、密に連絡を取り合って作れた楽曲で、個人的にはこういう作り方の方が楽しかったなと思うので、僕が作る楽曲はそういう感じで作っていきたいなというのが今後もあります。
――そこも大事なポイントですね。これからまた楽曲依頼とかもばんばん増えてくると思うんですけども、どんなふうに活動していきますか。
池内:こんなこと言うと怒られるかもしれないですけど、基本的に自分の好きなもの、自分が好きなことだけをやっていきたいなというのはすごくあります。それは歌ものであり、映画音楽であり、そのあたりを今はやっていきたいなと思います。そして自分の、歌もの以外の新しい形で、インストゥルメンタルの曲も出していきたいなと思っています。それはあまり派手すぎない感じになると思うんですけど、しっとりした感じのものも、そろそろやりたいなと思っています。
――今後について、どのへんまでプランニングしてますか。5年後、10年後?
池内:僕の作りたいようなインストゥルメンタルって、そんなにポピュラーなジャンルではなくて、聴いてくださいと言ってすぐに聴いてもらえるような環境でもないと思うので、みんなが聴きやすい歌ものの曲をコラボ曲として出しながら、それを導入として、インストにも興味を持ってもらえるような、そういう設計ができたらいいなと思っています。結局やっているのが音楽ということは変わりないですけど、歌があるかないかもそうですし、全体を通して「池内が作る曲はいいな」と思ってもらえたら嬉しいなと思います。
――その道筋で言うと、その先にたとえば坂本龍一さんのような大きな存在もいると思っていて、実は池内さんの「Valence」という曲を聴いた時に、坂本さんっぽいなと思ったことがあるんですよ。
池内:えー、マジですか。ちょっとそれは申し訳なさすぎる気がしますけど、『怒り』という映画の劇中歌を僕がやらせてもらった時に、主題歌が坂本龍一さんでした。坂本さんはすべての作曲家としてジャンルを超越しているというか、神的存在で、そこに対するリスペクトはあるんですけど、あの道は誰もたどれないというか、素晴らしすぎて、あそこをなぞっててもたぶん一生たどりつけないので、違う角度から、僕なりの作曲家としての角度で、インストを聴いてもらえるような道筋を作りたいなと思っています。坂本さんが作られた曲って、ピアノのソロとかでも浸透していて、「あ、知ってる」という感じになっていると思うんですけど、インストをそういう状況まで持って行くのは超ムズいというか。たとえばジブリ映画とか、作品ありきなら入りやすいと思うんですけど、そうじゃない形で広めようとすると、とてつもなく難しい領域かなと思うので、なんとか成し遂げたらと思いますね。そのあたりを試行錯誤して、誰もやってこなかった道を見つけれたらいいなと思っています。
――楽しみにしています。あと、ライブとかって興味ありますか。
池内:そうですね。自分の音楽イベントもそうですが、地元の京都でフェスみたいなものを主催してみたいなという気持ちはあります。「してほしい」という意見も周りからいただくので、いつかそういうものができたらいいなと思っています。京都府文化観光大使にも就任させていただいたので。
――素敵な夢です。そして今後も続々リリースがありますと。
池内:そうですね。曲はたくさんできているので、どういうふうに出していくか?を考えているところです。その時にはまた、よろしくお願いします。
取材・文:宮本英夫
池内ヨシカツ 写真 : 横山歳貴
リリース情報
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「Lonely」池内ヨシカツ&竹中雄大(Novelbright)
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「Rendezvous」池内ヨシカツ&川畑要(CHEMISTRY)
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