【インタビュー】イ・スンユン、日本初コンサート開催「我々は特別ではない。でも特別な瞬間を集めていきたい」

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イ・スンユンは、2021年11月に韓国で放送された復活オーディンション番組『シングアゲイン』を勝ち抜き、圧倒的な投票数で見事優勝してソロデビューを果たし、いま“次世代の韓国のライブの帝王”として注目を集めているシンガーシングライターだ。

◆ライブ映像

それを示すように、韓国で開催した全国ツアー<DOCKING>は追加公演まで全公演見事に完売。その勢いのまま、初の海外コンサートを台北で開催すると、こちらも大盛況。そんな彼が、いよいよ日本で初公演<2023 LEE SEUNG YOON CONCERT「DOCKING」IN TOKYO>を10月26日、東京・Zepp Hanedaで開催する。

英国のブリットポップをルーツに持つメロディーセンス、ロックバンドのヴォーカル&ギター出身ならではハスキーな声質をいかしたパワフルな歌唱パフォーマンスと卓越した楽曲のアレンジ能力。そんなイ・スンユンを地元・韓国とリモートでつないでBARKSが直撃。オーディション番組で栄光を手にしながらも、夢を一度諦め、音楽から離れた彼だからこそ語れるメッセージをたっぷり訊いた。

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■一番自分の心を素直にさらけ出して話せる場所が音楽だった

──日本初公演を直前に控えて、いまはどんなお気持ちですか?

スンユン:かなり胸がドキドキしていて、緊張もしていますが、その一方で楽しみでもあります。

──日本公演は韓国で開催した全国ツアーか使っている<DOCKING>がタイトルになっていました。このタイトルに込めた意味は?

スンユン:アルバム(『Even If Things Fall Apart』)の1曲目が「Docking」という曲で。そのなかに“歌のなかで会いましょう”という歌詞があるんですね。韓国でツアーを開催するにあたって、どんな形でやろうかと考えたとき、歌のなかでファンと交流したいなと思い、このタイトルを選びました。



──日本公演までに韓国で行なったツアーは全公演完売。台北公演も大盛況だったそうです。ここまでの<DOCKING>公演の手応え、どのように感じてらっしゃいますか?

スンユン:僕は楽曲を書くんですが。曲を作ってレコーディングをしてCDを作ったらその音楽が完成するのではなく。ライブをしながら、ファンのみなさんと楽しく交わっていって、初めてその楽曲が完成していく。それを、毎公演通して感じています。

──一度見ると何度も観たくなる中毒性の高いライブだということを表すように「イ・スンユンのコンサートを観てない人はいても、1回しか観てない人はいない」と、スンユンさんのライブは評されているそうですが。

スンユン:はははっ。

──ご本人はどう思ってらっしゃいますか?

スンユン:僕自身、自分のコンサートを観たことがないので分かりませんが(笑)。ファンのみなさんがそのようにいって下さるのは本当に嬉しいです。コンサートをやればやるほどファンのみなさんとの交流が強くなっていって、あうんの呼吸でコンサートも進んでいくので、より楽しくなっていくのは事実です。



──では、そんなスンユンさんが音楽にハマったきっかけは?

スンユン:学校で人気No.1になりたいというのがきっかけでした。

──はははっ。実際になれました?

スンユン:全然。人気はゼロ(苦笑)。

──ロックバンドをやりだしたきっかけは?

スンユン:幼い頃にビルボードのトップチャートに入っている音楽を聴く機会があって。そこでオアシスさんの「Don’t Look Back in Anger」という曲に衝撃を受けたんですね。その後、忘れていた時期もあったんですが、もう一度オアシスのあの曲の映像を見る機会があって。それで最初に受けた衝動を思い出して、どんどんバンドにハマっていった感じです。

──一番影響を受けたアーティストはオアシスですか?

スンユン:ビートルズとオアシスです。

──なぜUKシーンだったんですかね。

スンユン:意識してそっちにいった訳ではなく、初めて聴いたときに一番衝撃を受けたのがそっちだったというだけです。

──バンドサウンドよりもダンスミュージックが音楽シーンをリードしている韓国で、スンユンさんがそういう音楽に惹かれたというところが面白いですね。

スンユン:まず僕にとっては、オアシスをはじめとしたブリットポップ系のバンドはギターサウンドが素晴らしかったんです。韓国のロックバンドは、一般的にはハイトーンボイスでシャウトする激しいものが多いんですね。でもオアシスの場合は叫んだりして歌わないところも魅力だったんです。


──そうしてロックバンドとして音楽活動を続けていくなかで、一度スンユンさんは音楽を辞めてらっしゃいますよね? 

スンユン:えっ! そんなことまで知ってるんですか?

──はい、調べました(笑)。音楽を辞めたのはなぜだったのか。辞めたあと、再び音楽をやろうと思った理由を教えてもらえますか?

スンユン:辞めた理由は、いまやってる音楽活動は果たして世の中にどう貢献しているのか、自分はこれをやり続けてどんな意味があるのかという理由が見つけられない時期があって。その葛藤から一度音楽から離れたんです。でも、離れてしばらくたったら「やっぱり音楽が大好きだ」と思って。その気持ちがどんどん強くなって、込み上げてきたのでもう1回好きな音楽を演ろうと。



──一度辞めたものを再度やるという決断は、相当大きなものだったと思うのですが。なにが自分を動かしたんだと思いますか?

スンユン:結局、生きていくにあたって一番自分の心を素直にさらけ出して話せる場所が音楽だったんですよ。普段人にはいえないようなこともいえる場所。自分が一番素直な気持ちで、心の中で思ってることすべてを話せる友達みたいな関係。それが音楽だったからこそ、突き動かされたんだと思います。

──若い世代の中にはスンユンさんのように夢を途中で諦めて、仕方なく他の仕事に就く人たちもたくさんいます。それでも、スンユンさんのように諦めた夢に再度挑む。そのために必要なものは何だと思いますか?

スンユン:これはあくまでも個人的な意見ですけど、僕は最善を尽くしてから大人になりたいと思ったんですよ。自分が若い頃に成し遂げたちっぽけなことを「俺は若い頃こうだったんだ」と偉そうにいう大人がいるじゃないですか。僕はやれることは全部やって最善をすべて尽くして、それで成功をつかむ人もいればつかめない人もいるかもしれないけど。結果はどうであれ、最善を尽くしてから大人になりたかったんですよね。

──おぉーなるほど! その最善を尽くそうと決めたその先に、あの復活オーディション番組『シングアゲイン』があったというのは、なんか物語ができすぎているくらいですよね(笑)。

スンユン:おっしゃるとおりです(笑)。韓国ではオーディションがメインで、それ以外の道ではなかなか表舞台には出られないというのが現状なんですね。でも僕は人と競いあったりするのは好きじゃないので、それまでオーディションは最後の最後の手段としてずっと避けてきてたんです。でも、最善を尽くすと決めた以上はこれまでやったことがなかったオーディションもやってみようと覚悟を決めて、試してみることにしたんです。

──大きな挑戦だった訳ですね?

スンユン:はい。そうです。


──そうしたら、あれよあれよという間に優勝という栄光を手に。そのときの感想は?

スンユン:まさか自分が優勝するなんて、という感じだったので、正直嬉しいというよりも心配事のほうが大きかったです。オーディションの最中も何度も途中で辞めようと思いましたからね(笑)。でも、優勝までいっちゃったので。これで自分も構築された表舞台の音楽システムの中に入った。じゃあここで自分はなにを表現していくのかということを考えるようになりました。

──なるほど。もしかして、スンユンさんは本来、メインストリームよりもオルタナティブのほうが居心地がいいタイプ?

スンユン:メインストリームのここら辺、下の方にいるのが好き(笑)。端にいるのが好きなタイプなんです。

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