【トークイベント完全再現】SUGIZO × ESP、“音楽×ファッション”を語る「MADE IN JAPANを使いたい」
■やらなきゃって本気で思っている
■ニューノーマルになれば世の中が変わる
SUGIZO:ちょっと話を戻しましょうね。「欲しいものがないから作った」ということで言えば、高栁さんと立ち上げたTHE ONENESSがまさにそうですよ。
高栁:そうですね。「何かやりたいね」ってSUGIZOさんからおっしゃっていただいてたんですけど、普通のコラボじゃイヤだっていうことで。もっと密に取り組めたらいいなって、1年ぐらい考えてくださったんですよね。
SUGIZO:ただ単にミュージシャンとデザイナーのコラボじゃつまらないっていうことですね。どちらかというと、高栁さんが普通のコラボじゃイヤだって感じだったよ(笑)。やるなら特別なことをやりたいって。
高栁:ははは。SUGIZOさんがエシカル(倫理的=人や社会、地球環境、地域に配慮した考え方や行動)なブランドを作りたいっておっしゃったのがキッカケで、どんどん具体的に形にしていったらTHE ONENESSになったんですよね。
SUGIZO:環境にいいファッションを作りたかったんです。
──高栁さんと出会ったから、そういう気持ちになったんですか?
SUGIZO:そういう気持ちになったのは2005年ぐらいですね。『アースデイ』などの環境イベントに出たり、足しげくシンポジウムに参加したりしているうちに、僕らの好きな服がどれだけ環境に負荷をかけているか学んでいくわけですよ。そういうイベントに行くと当然ながら、環境にいいTシャツとか売ってるんですね。素材にオーガニックコットン(有機農法で生産された木綿)とかヘンプ(麻)を使っているんですけど、だいたいアーシーとかナチュラルカラーのふわっとしたもので、僕らが好きなロック的でヴィヴィッドなもの、タイトなシルエットの服はなかった。なので、その年に自分のグッズとして、ヘンプとオーガニックコットンをミックスしたTシャツを作ったんですよ。その組み合わせはまだ世の中に存在していなかったんです。普通のコットンは農薬を使うし、環境にはよくないので。でも、Tシャツの生地を作るのに200万ぐらいかかって、志はよかったんだけど、プロダクツとしては大失敗だったんです。
──ビジネスとしては、ということですね。
SUGIZO:そう。これは無理だなと諦めて、そのうちにセンスがよくて環境にいいブランドが出てくるだろうと思っていたんですが、15年待っても出てこなかった。「じゃあ、作るか」っていう相談を高栁さんにしたのが始まりですね。
高栁:「しょうがないからやろうか」ってSUGIZOさんが。
──エシカルなブランドということですね。
SUGIZO:今はけっこう知られていることですけど、アパレル業界は温暖化ガス排出産業のワースト2と言われているんです。水もすごく使うし、廃棄物も多い。車業界の次はアパレル業界が変わらないと、世の中が変わらない。そこはまだまだ大きくは着目されてないんです。
▲<ESP CRAFT HOUSE 40th Anniversary Exhibition『SUGIZO Museum -MUSIC×FASHION-』>
──そうなんですね。
SUGIZO:幾つかのブランドは動きをみせているんですけど、特に大手のブランドが早くその方向へシフトしなければ、気候変動や環境に影響を及ぼしてしまう。僕なんかがそれをやっても、焼け石に水かもしれないけれど、行動で示すことはできる。このギャラリーに展示されているTHE ONENESSの服は全てオーガニックコットンやヘンプ100%だったりします。レザーも使っているんですけど、エコレザーといって、食肉用動物の廃材を再利用しています。あと重要なのはエコレザーはなめし加工(皮の腐食を防ぐための処理)で発生する毒素を3%まで抑えているんです。
高栁:簡単に言うと、100%のクロムなめし製品を燃やしたり、捨てたり、埋めたりすると有害な毒素が排出されるんです。THE ONENESSのレザーは3%まで抜いて製品にしているので燃やしてもホルムアルデヒドは出ないです。
SUGIZO:なめし加工の工場がある地域は汚染されていたり、公害病があったりしますからね。
──普通のクロムなめしと違って、クロムの量が少ないということですか?
高栁:なめす段階では最低限は必要なんですけど、裁断する前、レザーの状態で出荷する段階でクロムを減らすんです。
SUGIZO:ベジタブルタンニンではないんですか?
高栁:フィッシュレザーはそうですね。
SUGIZO:ベジタブルタンニンは加工を植物由来でやっているんです。僕の衣装もそうですけど、ジャケットのラペル(襟)のスネークスキン的な素材は、実は魚の革なんです。僕のスマホケースもそうで、鯛の革ですね。
──鯛なんですか? ちょっと衝撃的なんですけど。
高栁:というと、焼き魚の皮を連想してしまいがちですけど、ちゃんとレザーとしてなめすと使えるようになるんです。もちろん蛇革もそうですね。
SUGIZO:そういう風な考え方をもとにTHE ONENESSは製品を作っているんです。この件に関しては高栁さんも相当学んでくれましたよね。
高栁:はい。SUGIZOさんの「ああしたい、こうしたい」というところから外れないようにやらせていただいて、相当勉強しています。
SUGIZO:今、みんなが着てくれているESPとのコラボTシャツもそうです。素材はもともと存在しているオーガニックコットン。高栁さん独自のデザインをプリントしたTHE ONENESS製です。
▲<ESP CRAFT HOUSE 40th Anniversary Exhibition『SUGIZO Museum -MUSIC×FASHION-』>
──デザインも実際にギターを抱えた写真を撮影して、それを元に作っているんですよね。首元からかかっているようにデザインされたクリスタルもSUGIZOさんのクリスタルを写真に撮ってデザインされたそうですね。
高栁:クリスタルの形は1つ1つ微妙に違いますから。
SUGIZO:GODSIZEのクリスタルですね。僕がGODSIZE のHIROSHIくんに「ちょっとこれで作っておいてくれる?」って20年前に依頼していたのが製品化されちゃったんだよね。ずっと愛用していて、もう3代目ですね。また、THE ONENESSのピースペンダントは僕のギターのピースマークのデザインのまんまだったりします。そう考えるとギターと服ってマッチングがいいと思いませんか? ファッションとしてカッコいいよね。このギャラリーにもギターと衣装が並んでいて、全然違和感ないもんね。カッコよさの方向性が同じというか。今回のトークのコンセプトは、<MUSIC×FASHION>ですけど、いい観点でイベントを開催しましたよね。ESPさん、さすがです。
──それはSUGIZOさんが音楽とファッション、どちらの立場にも立ったニュートラルなアーティストが真ん中にいるからですよ。
高栁:そうですね。生き様を見ているような気がします。このギャラリーを見ると。
SUGIZO:嬉しいのは、Tシャツの背中に、関わっている仲間のブランド名が全部入ってるんだよね。
高栁:感慨深いですよね。一緒にやりたいっていう人が、もっとたくさんいると思いますよ。
SUGIZO:だとしたらいいですよね。ドクターマーチンともコラボしたいですけどね。ドクターマーチンがTHE ONENESSのコンセプトで作ってくれたらカッコいい。最初に、高栁さんにお願いしたのは動物のレザーじゃなくてビーガンレザーでやりたいってことで。植物由来とか果物由来のレザーがいいんですよ。バナナの皮とかリンゴの皮でできるんですけど、まだ服としてはカッコいいのが作れないんです。
──そういえば、高栁さんのTHE ONENESSの名刺って、紙じゃなくてバナナの皮でできているんですよね。そういうところでも実行している。
SUGIZO:いわゆるエシカルファッションやサスティナブルファッションというカテゴリーは前から存在していて、僕は去年も勉強と研究のために<サステナブル ファッションEXPO>に行ってきたんです。素材もアイデアもたくさんあるんだよね。果物の皮もそう、植物もそう、投網やペットボトルを再利用して服を作ったり。THE ONENESSの商品の多くもペットボトル由来か、リサイクルか、端切れを繋ぎ合わせたりしてるんです。素材はたくさんある、再利用もできる。ただ、致命的なのはそのEXPOにカッコいいと思う服がひとつもなかった。
──やはり、「世の中にないものが欲しい」ですね。
SUGIZO:カッコいい服ってサスティナブルファッションの中でポカッて空いている市場なんですよ。これはやらなきゃって本気で思っているので成功させたいですね。これが世の中のニューノーマルになれば大きく変わりますよ。
──SUGIZOさんにはまだまだやりたいことがたくさんあって、それを一緒に作る仲間がいる。なによりそれを支えてくれているのは、ここに集まっている方々ですからね。
SUGIZO:みなさんのおかげですね。
▲<ESP CRAFT HOUSE 40th Anniversary Exhibition『SUGIZO Museum -MUSIC×FASHION-』>
◆ ◆ ◆
濃密なトークセッションは1時間強にわたり、終盤には参加者の質問にSUGIZO自ら答える質疑応答コーナーも設けられた。
「THE ONENESSから石鹸が出てますし、コスメも作ってほしい」という要望には、「将来的には“THE ONENESS LIFE”をコンセプトにしたブランドにしたい」というSUGIZOの夢が語られ、「日々のギター練習メニューを教えてください」という質問には「何気にスケールを練習したりしますし、運指の練習もします」という回答も。また、「ECLIPSE E-Vを一般発売する予定はありますか?」というリクエストには「僕はそうしたいんですけど、開発途中です。これを新しいスタンダードにしたいから」などなど、ギターに関する質問にはマニアにはたまらないエピソードも混じえて真摯に答えていた。
トークイベントの最後はSUGIZOからの提案で、参加した40名と一緒に記念撮影。これは台本にないサプライズだったということだが、多忙を極めるハードスケジュールの中にあってもギターの練習を欠かさず(この日も移動時の車中で弾いていたとのこと)、同時に、世界の状況に常に目を向けて各国を飛び回っているSUGIZOの変わらぬ熱量と追求心に圧倒された1日だった。
取材・文◎山本弘子
撮影◎大谷十夢治
■<LUNA SEA DUAL ARENA TOUR 2023>
【神奈川】
10月07日(土) Kアリーナ横浜
<MOTHER OF LOVE, MOTHER OF HATE>
open16:30 / start18:00
10月08日(日) Kアリーナ横浜
<UN ENDING STYLE>
open15:30 / start17:00
【福岡】
11月04日(土) マリンメッセ福岡B館
<MOTHER OF LOVE, MOTHER OF HATE>
open17:00 / start18:00
11月05日(日) マリンメッセ福岡B館
<UN ENDING STYLE>
open16:00 / start17:00
【宮城】
12月02日(土) ゼビオアリーナ仙台
<MOTHER OF LOVE, MOTHER OF HATE>
open17:00 / start18:00
12月03日(日) ゼビオアリーナ仙台
<UN ENDING STYLE>
open16:00 / start17:00
【愛知】
12月16日(土) 日本ガイシホール
<MOTHER OF LOVE, MOTHER OF HATE>
open17:00 / start18:00
12月17日(日) 日本ガイシホール
<UN ENDING STYLE>
open16:00 / start17:00
【大阪】
12月30日(土) 大阪城ホール
<MOTHER OF LOVE, MOTHER OF HATE>
open18:00 / start19:00
12月31日(日) 大阪城ホール
<UN ENDING STYLE -COUNTDOWN SPECIAL->
open21:00 / start22:00
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