【インタビュー前編】Maki、3rdミニアルバム『Toy box』は信念を貫いた意欲作「やさしさみたいなところがけっこう出てる」

■自分だったらどうするかって考えるきっかけをもらえるのが
■芸術作品だと思うんですよ

──まっちさんと佳大さんは今回の歌詞についてはいかがですか。今までと違うと感じるところもありますか？

まっち：ありますね。僕ら、歌詞はオケができて、ボーカル録り終わってから最後に知るんですけど、Makiの第2章の始まりって、『creep』の時に言ってからこの2年、バンドをやってきた中で、やっぱり山本響という人間が変わってきたんです。第1章の時は、ちょっとひねくれてて、ちょっと卑屈で、でも尖っててという歌詞だったんですけど、第2章以降、人として変わってきて……と言うか、僕ら全員がそうだと思うんですけど、それが今回、歌詞に出てきたということだと思います。『creep』の時はそれが出し切れてなかったんでしょうね。考えていることはあるのに、ちゃんと100％出し切れていないと感じてたんですけど、今回はそれが素直に100％出たのかなと聴きながら感じました。


──「揺れる」で、《僕の弱さすら 今は溢せ無い》と歌っていますもんね。溢さずに弱さも歌っていこうということですよね？

山本：まぁ、そうですね。歌詞を紐解いていくって照れ臭いですね（笑）。歌っている時は大丈夫なんですけどね。

まっち：ライブの打ち上げが終わってから帰るとき、「俺のほうがかっこよかった」「いやいや、俺のほうがかっこよかった」みたいな話を、他のバンドの人達が話していたんですけど、それを聞いた響君が、「なんで、俺もかっこよかったけど、おまえもかっこよかったじゃダメなの」ってぽろっと言ったんですよ。「別に順位をつけるんじゃなくて、全員が横並びでかっこよかったら、俺達、最強じゃん。なんでそれができないんだ」みたいな話を酔っぱらいながら喋った記憶があるんですけど、「揺れる」はそれがそのまま歌詞になっているんです。そういうのが今回、節々にあるんですよ。

山本：よく憶えてるね（笑）。

まっち：うん。歌詞を聴いて、はっきりと思い出した。

──佳大さんはいかがですか？

佳大：今までの歌詞よりも伝わりやすいと思います。曲を聴いた時にすっと入ってくる。この2年で、響はめっちゃ前向きになったんですよ。


山本：そうだね。

佳大：今はもう超ポジティブ人間で。

まっち：うん

佳大：そういう明るさ、やさしさみたいなところがけっこう出てるなと思います。

──照れ臭いとおっしゃっていたところ申し訳ないのですが（笑）、もうちょっと歌詞の話を聞かせてください。世界の終わりという意味のタイトルを持つ「world’s end」では、《最近、なんだか恐ろしくなる 暗いニュースや比べるだけの言葉に》と歌っていて、だからこそかけがえのないものを大事にしようという前向きな内容だと思うのですが、世界の終わりみたいな感覚になることもあったんですか？

山本：ありました。それこそコロナ禍の当初は、みんな必死になって、自分にやれることをやっていたのに、それに対して批判をする人がいたじゃないですか。この状況を良くしたいという気持ちはみんな一緒のはずなのに、なんでそこで争いが起きるんだろう。そんなことに割く時間があるなら、もっといろいろなことを考えることもできたのに。そういうことを考えたとき、ライブハウス業界をどうにかしないとヤバいかもって思ったことはありましたね。

──そんな危機感や弱さも歌いつつ、僕は今回の『Toy box』を聴いて、Makiはこれまでと変わらず情熱を持って、音楽を作り続けていく。外野の声には惑わされずに自分は自分だという自分達の信念を貫いていくというメッセージと言うか、ステートメントを聴き取ったのですが、Makiとしてはリスナーにはどんなふうに感じてほしいですか？

山本：聴く人それぞれの生活に当てはめて聴いてもらえたらうれしいです。もちろん、楽曲を聴いて、いいなって思ってもらうこともめっちゃ大事なんですけど、その上で、自分だったらどうするかって考えるきっかけをもらえるのがやっぱり芸術作品だと思うんですよ。だから、、聴きながら、「響はこんなことを考えてるのか。じゃあ、俺はこうしてみよう」とか、「俺もそうしてみるけど、もっとがんばってみよう」とか思ってもらえたらうれしいです。

取材・文◎山口智男



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