【インタビュー後編】Maki、新境地にアプローチした曲作り「1曲1曲の純度が上がった気がします」

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■今回はすごくいい録り方ができた
■1曲1曲の純度が上がった気がします


──その他、ルーツ的なところで言うと?

山本:「world’s end」はオアシスですね。

まっち:完全に。

──ちゃんとMakiらしい曲になっているから、聴いた時はそんなに感じませんでしたけど、言われてみると、確かに。

まっち:けっこうサウンドも寄せました。

山本:最初の歌が入るところのコード感はオアシスだけじゃなくて、ニルヴァーナも意識して、6度マイナーを入れてみたんですけど、サビの開ける感じは、完全にオアシスの「ワンダーウォール」とか、「スーパーソニック」とかを参考にしました。

──この曲は1番しかなくて、あとはサビのリフレインという構成になっているところがおもしろい。

山本:言いたいことがサビに凝縮されているから、それ以外に歌う必要がなかったんです。世界の終わりを食い止めようという気持ちにまではなれなかったので、自分の話したい人とずっと話していようというイメージを中心にしてと言うか、そこを一番大事にしたいと思って、リフレインさせまくりました。

▲山本響(Vo, B)

──壮大な曲をうまい具合に4分という尺にぎゅっとまとめたという印象もあります。

山本:壮大なんですけど、言ったらおもちゃ箱の中の話なので。『Toy box』っていう。

──あぁ、なるほど。

山本:子供の頃の俺だったら、世界が終わりそうなこともおもちゃ箱に詰めてたかな。無邪気にと思ったので、けっこうコンパクトにしてという感じでしたね。

──さて、ルーツを残すこととリフものの曲を作る以外に今回、曲を作る上で意識したことはありましたか?

山本:音にはこだわりました。全曲が同じ音だとおもしろみに欠けると思ったので、曲ごとにギターを変えたり、アンプを変えたり、ボーカルマイクを変えたり、いろいろ挑戦してみました。

──それは曲ごとにふさわしいサウンドを求めてということですよね?

山本:そうです。「No.11」は超チープで。

まっち:高校生みたいな感じのね。

山本:初めて楽器を手にしたけど、爆音を鳴らすの楽しい。バシャーンって。今回は曲ごとにそういうイメージがありました。

まっち:今回、さっき言ったみたいに1曲ずつ録っていったんですけど、日程も1週間缶詰めでというやり方ではなくて、1曲できたら1日掛けてレコーディングしてというやり方だったので、ギターとベースはもちろんですけど、ドラムも1曲1曲、チューニングを変えることができたんですよ。やっぱり1週間ぶっ通しで何曲も録ると、どれだけチューニングを変えてもどうしても似ちゃうと言うか、テンション的にも似ちゃいがちと言うか。だから今回はすごくいい録り方ができたと思います。「今日は、この曲」というふうに、その曲に完全に焦点を絞ってできたっていうのは、自分の中では大満足です。1曲1曲の純度が上がった気がします。

──「No.11」はチープな音を求めたそうですが、その対極もあるんですか?

山本:リッチな音と言ったら、「揺れる」ですね。

まっち:ぶっとい音を出しました。

山本:重厚感とか、地を這うような感じとかを出したかったんです。

──その意味ではドラムのタム回しの効果が大きいですね。

まっち:超低音が出るようにピッチをめちゃめちゃ下げたんですよ。それが曲に合っていると思います。

──ビートだけのドラムをソロと言えるかどうかはさておき、「揺れる」には3人それぞれのソロパートがありますね。

まっち:あれもソロという位置づけなんですよ。ドラムソロを入れてほしいと言われたんですけど、「ただドコドコやるソロじゃない。おまえの渋さを見せてほしい」って(笑)。僕はけっこうドコドコやるほうのドラマーなんですけど、ドラムを叩いている中で一番かっこいいのってやっぱりビートなんですよ。その1つのビートで、どれだけ人を乗せられるか。それに挑戦してみました。実は1回、いろいろドコドコ入れてみたんですけど、絶対違うと思って、引き算引き算で、結局、ビートが一番かっこいいということになりました。

──佳大さんのギターはどんなアプローチを?

佳大(G, Cho):めっちゃ弾くソロは「ホームタウン」ぐらいなんですけど、『creep』よりソロは入っていると思います。今までのソロはオクターブが多かったり、明るかったりしたんですけど、今回は、こっちじゃなくて、こっちみたいな。めっちゃわかりづらいですけど(笑)。

山本:明るいと渋いの間みたいな?

佳大:かなぁ。そういうソロがたくさんできたんで、そういうところを聴いてもらえたらうれしいですね。

──そういうソロを弾きたかったんですか?

佳大:響が持ってきた、こんな感じがいいみたいなやつがけっこう渋かったんですよ。

山本:ロックンロールみたいな感じになっちゃうんですよ。僕が考えると。

佳大:それだと響過ぎて、弾きづらいから、自分なりに直しながら弾いた結果ですね。

▲佳大(G, Cho)

──「world’s end」はギターソロで終わりますね。

佳大:ああいうの一番苦手です(笑)。

まっち:あれは響君から佳大に「むちゃくちゃやれ」ってオーダーが出てました。

山本:ギターヒーローになってほしかったんです。だから、「なんなら俺らがステージを降りた後も弾き続けるくらいのイメージで」って。どうしても一花咲かせてほしかったんです(笑)。

まっち:咲いてないみたいに聞こえるけど(笑)。

山本:いやいや、そういうわけじゃないけど。

まっち:「world’s end」のアウトロは佳大が主役っていう。ライブだと変わりますね。アドリブになるんじゃないですか?

佳大:たぶん(笑)。

山本:めちゃくちゃリバーブを踏んで、もうギターの音しか聴こえないくらいやっちゃってほしいです。

──山本さんの歌とベースは?

山本:ベースは、そうですね。「Opening」と「風」は繋がっているんですけど、所々に入るベースは、忍びないけど、目立ってみようかって気持ちはありました。ベースだけのドゥグダガ・ドゥグダガ・ドゥダーンみたいなのはそうですね。「揺れる」もベースがちょっとだけがんばりますみたいなところがあって。歌はもう歌詞に沿って、歌っていけたらという感じではあったんですけど、ベースは欲を出しちゃったなってところが何ヶ所かあります。

まっち:響君はベースソロを嫌うんですよ。

山本:俺はもうベースソロが全然好きじゃない派閥だったんで。ベースこそ縁の下の力持ちであれってタイプなんです。それが好きで、ベースを始めたんです。

まっち:ちら見せの美学があるよね。

──「Opening」のベースはけっこう歪んでいますね。

山本:歪ませるのは好きですね。

──「ホームタウン」もですね。

山本:大体の曲が歪んでますね。ただ、歪ませすぎると、耳につきすぎちゃうんで、ギターの歪みが入ってきて、ちょうど消えるぐらいの歪みにしたくて。それで、ベースだけ聴こえるところで、音色は変わってないのに歪んでいるってわかるぐらいの感じが好きで、そこを目指して歪ませています。




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